『RE−BOP』(以下『リバップ』)の聴き所は,渡辺貞夫とブライアン・ブレイドの共演にある。
これって則ち,ブライアン・ブレイドの躍動するドラミングが,あの渡辺貞夫と音を交えてどう反応するかを楽しむアルバムである。
そう。『リバップ』の主役は渡辺貞夫のアルト・サックスではなくブライアン・ブレイドのドラム。
『リバップ』のアルバム・コンセプトである「現代のビバップ」なる息吹きは特に感じられない。ナベサダに負担のかからないミディアム・テンポの王道ソング集である。
要は渡辺貞夫が“ニュアンス勝負”に持ち込んだ上で,テクニカルでリズミカルなコード進行をサイラス・チェスナットに託し,躍動感とコード・チェンジをクリス・トーマスに託し,生き物のようなバケモノのドラミングでブライアン・ブレイドにメロディックな山場を作らせていく。
ブライアン・ブレイドからすると『リバップ』における渡辺貞夫のオーダーなんてお手の物。ウェイン・ショーターとの共演を通じて“御大”を輝かせるドラミングは何百通りと習得済。
仮に『リバップ』を高く評価するナベサダ・ファンがいるとすれば,それは天下のブライアン・ブレイドをナベサダがリードしているように聞こえての事? いやいや,わざとそのように聞かせているブライアン・ブレイドの凄さなんだってばぁ。
個人的に『リバップ』というアルバムは「渡辺貞夫愛の本気度」が試される1枚だと思う。
ピアノのサイラス・チェスナットとベースのクリス・トーマスはブライアン・ブレイドの“歌うリズム”を掴んでいる。そんな中,渡辺貞夫だけは本気でブライアン・ブレイドの“大波”にチャレンジしている。全力で“最新”のリズムと格闘している。
思えば「世界のナベサダ」と呼ばれるようになってからも,渡辺貞夫は共演者に対して「自分についてこい」的な扱いをしたことはない。渡辺貞夫の音楽に対する真摯な姿勢が共演者に伝わって,自然とリスペクトを受けていたと思う。
その意味では『リバップ』も同じである。ブライアン・ブレイドが渡辺貞夫の新しい魅力を上手に引き出してくれたと思うし,サイラス・チェスナットとクリス・トーマスにしても同じである。
ただし,ブライアン・ブレイドが渡辺貞夫の本質に光を当てれば当てるほど(4Kや8Kテレビがそうであるように)渡辺貞夫の老いの部分もクッキリと目立ってしまう。
正直,寄る年波からは逃れられない。管理人は『リバップ』を聴いて初めて,渡辺貞夫の老いを感じてしまった。これはアルト・サックスのミストーンのことではない。そうではなく音楽家としての感性,音楽全体を1つの方向にまとめ上げる能力が衰えてきたと書かざるを得ない。
今後のアルバム制作については,ちゃちゃっと音を合わせただけの外国のビッグネームではいけない。毎月音を合わせているレギュラー・バンドのサポートが必要である。オール日本人でのスタジオ・アルバムが必要な時期に差し掛かっているように思う。
『リバップ』を聴き終えて,次のように自問した。管理人は渡辺貞夫が好きなのだろうか? それともジャズが好きなのだろうか?
管理人の答えはこうである。渡辺貞夫のアルト・サックスが鳴っていれば,それがジャズだろうとブラジルだろうとアフリカだろうと関係ない。全部が好き。だから渡辺貞夫の老いの部分もひっくるめて『リバップ』もまた最高のアルバムの1枚だと思う。
管理人はこれからも,未来永劫,渡辺貞夫の新作に耳を傾けていく所存である。共演者の力を借りるのはカッコ悪いことではない。渡辺貞夫はそうする権利を持っている数少ないマイスターの1人なのである。
渡辺貞夫には1枚でも多く良質のアルバムを作り続けてほしいと心から願っている。
【花は咲く】。いつ聴いても感動します。この曲は渡辺貞夫でないとダメなんです。絶対に渡辺貞夫でないと…。
01. Re-Bop
02. Look Ahead
03. I Miss You When I Think of You
04. Little Wind
05. Not Before Long
06. 8.15/2015
07. While You're Away
08. Call to Mind
09. Monica
10. Give Me a Que
11. Hanawa Saku
SADAO WATANABE : Alto Saxophone
CYRUS CHESTNUT : Piano
CHRIS THOMAS : Bass
BRIAN BLADE : Drums
これって則ち,ブライアン・ブレイドの躍動するドラミングが,あの渡辺貞夫と音を交えてどう反応するかを楽しむアルバムである。
そう。『リバップ』の主役は渡辺貞夫のアルト・サックスではなくブライアン・ブレイドのドラム。
『リバップ』のアルバム・コンセプトである「現代のビバップ」なる息吹きは特に感じられない。ナベサダに負担のかからないミディアム・テンポの王道ソング集である。
要は渡辺貞夫が“ニュアンス勝負”に持ち込んだ上で,テクニカルでリズミカルなコード進行をサイラス・チェスナットに託し,躍動感とコード・チェンジをクリス・トーマスに託し,生き物のようなバケモノのドラミングでブライアン・ブレイドにメロディックな山場を作らせていく。
ブライアン・ブレイドからすると『リバップ』における渡辺貞夫のオーダーなんてお手の物。ウェイン・ショーターとの共演を通じて“御大”を輝かせるドラミングは何百通りと習得済。
仮に『リバップ』を高く評価するナベサダ・ファンがいるとすれば,それは天下のブライアン・ブレイドをナベサダがリードしているように聞こえての事? いやいや,わざとそのように聞かせているブライアン・ブレイドの凄さなんだってばぁ。
個人的に『リバップ』というアルバムは「渡辺貞夫愛の本気度」が試される1枚だと思う。
ピアノのサイラス・チェスナットとベースのクリス・トーマスはブライアン・ブレイドの“歌うリズム”を掴んでいる。そんな中,渡辺貞夫だけは本気でブライアン・ブレイドの“大波”にチャレンジしている。全力で“最新”のリズムと格闘している。
思えば「世界のナベサダ」と呼ばれるようになってからも,渡辺貞夫は共演者に対して「自分についてこい」的な扱いをしたことはない。渡辺貞夫の音楽に対する真摯な姿勢が共演者に伝わって,自然とリスペクトを受けていたと思う。
その意味では『リバップ』も同じである。ブライアン・ブレイドが渡辺貞夫の新しい魅力を上手に引き出してくれたと思うし,サイラス・チェスナットとクリス・トーマスにしても同じである。
ただし,ブライアン・ブレイドが渡辺貞夫の本質に光を当てれば当てるほど(4Kや8Kテレビがそうであるように)渡辺貞夫の老いの部分もクッキリと目立ってしまう。
正直,寄る年波からは逃れられない。管理人は『リバップ』を聴いて初めて,渡辺貞夫の老いを感じてしまった。これはアルト・サックスのミストーンのことではない。そうではなく音楽家としての感性,音楽全体を1つの方向にまとめ上げる能力が衰えてきたと書かざるを得ない。
今後のアルバム制作については,ちゃちゃっと音を合わせただけの外国のビッグネームではいけない。毎月音を合わせているレギュラー・バンドのサポートが必要である。オール日本人でのスタジオ・アルバムが必要な時期に差し掛かっているように思う。
『リバップ』を聴き終えて,次のように自問した。管理人は渡辺貞夫が好きなのだろうか? それともジャズが好きなのだろうか?
管理人の答えはこうである。渡辺貞夫のアルト・サックスが鳴っていれば,それがジャズだろうとブラジルだろうとアフリカだろうと関係ない。全部が好き。だから渡辺貞夫の老いの部分もひっくるめて『リバップ』もまた最高のアルバムの1枚だと思う。
管理人はこれからも,未来永劫,渡辺貞夫の新作に耳を傾けていく所存である。共演者の力を借りるのはカッコ悪いことではない。渡辺貞夫はそうする権利を持っている数少ないマイスターの1人なのである。
渡辺貞夫には1枚でも多く良質のアルバムを作り続けてほしいと心から願っている。
【花は咲く】。いつ聴いても感動します。この曲は渡辺貞夫でないとダメなんです。絶対に渡辺貞夫でないと…。
01. Re-Bop
02. Look Ahead
03. I Miss You When I Think of You
04. Little Wind
05. Not Before Long
06. 8.15/2015
07. While You're Away
08. Call to Mind
09. Monica
10. Give Me a Que
11. Hanawa Saku
SADAO WATANABE : Alto Saxophone
CYRUS CHESTNUT : Piano
CHRIS THOMAS : Bass
BRIAN BLADE : Drums
(ビクター/JVC 2017年発売/VICJ-61765)