
『スガダイローの肖像・弐』の斬新な音楽性は,フリー・ジャズからはみ出ただけでなく,ジャズというカテゴリーをも超えてしまっている。
『スガダイローの肖像・弐』がジャズというカテゴリーを超えてしまった最大要因は,スガダイローの全く個人的な「好き」という感情が「これでもか!」と詰め込まれているがゆえであろう。
【山下洋輔】の名前を筆頭に,スガダイローの好きなものの名前がズラリとメニュー表に並べられた感じ? ゆえに『スガダイローの肖像・弐』は「スガダイローの音楽」としか呼びようのないアルバムに仕上げられている。
『スガダイローの肖像・弐』での演奏は相当に激しい。スガダイローの“伝えたい”が伝わってくる。
その伝え方がいいんだよなぁ,これが。強引に「耳の穴をかっぽじって聞け」と圧をかけるスタイルではない。そうではなく,スガダイローの主張を分かってもらいたいという気持ちはあるんだけど,分かってもらえない人が大勢いることを前提に“分かりやすい”演奏に徹している。激しいけども厳しくない。初心者でも“ついていける”渾身のメロディー集だと思う。
『スガダイローの肖像・弐』の印象は,フリー・ジャズではなくピアノ・トリオを聴いていることを強く意識してしまう。ピアノ・トリオって,こんな音楽が作れるんだ,という印象である。
う〜ん。ちょっと違うな。ピアノ・トリオではなくピアノなのだ。「ピアノを超えたピアノ」。これである。
ピアノの鍵盤の数は88と決まっている。ビル・エヴァンスもキース・ジャレットも,他のどんなピアニストであっても88の鍵盤の中で勝負している。
しかし,この『スガダイローの肖像・弐』の中で,スガダイローは「88の鍵盤の呪縛」を超える音楽を創造している。
そう。東保光のベースを89番目の鍵盤として,服部正嗣のドラムを90番目の鍵盤として扱っている。ねっ「ピアノを超えたピアノ」でしょ? ねっ「新しい音楽の発明家」でしょ?

つまりスガダイローは「王様」などではない。そうではなく東保光のベースの特徴をピアノ・トリオに取り入れる術を知っている。服部正嗣のドラムの特徴をピアノ・トリオに取り入れる術を心得ている。
そう。一心同体=スガダイロー隊! ← このクダリ,分かりますかぁ?
88の鍵盤の表現を超えた90の鍵盤だからできる表現が『スガダイローの肖像・弐』の中にある。新しいメロディーが鳴っている。こんな凄い音楽そう滅多に聴けるものではありませんよっ!
01. 乱
02. 蒸気機関の発明
03. 山下洋輔
04. BLUE SKIES
05. さやか雨
06. 春風
07. 無宿鉄蔵毒団子で死なず
08. 寿限無
09. 戦国
10. 時計遊戯
11. 最後のニュース
12. ALL THE THINGS YOU ARE
DAIRO SUGA : Piano
HIKARU TOHO : Bass
MASATSUGU HATTORI : Drums
TONY CHANTY : Vocal
CHIZURU ISHI : Hand Drums
(ポニーキャニオン/PONY CANYON 2011年発売/PCCY-30194)