
アーニー・ワッツのソロ・アルバムはそのほとんどがジャズ・アルバムである。
管理人がアーニー・ワッツを“ジャズ・サックスの人”として捉えるようになったのは,チャーリー・ヘイデンの「カルテット・ウエスト」から。
「カルテット・ウエスト」でのアーニー・ワッツの演奏は,フリー・ジャズ以前のジョン・コルトレーンっぽさが感じられるいい演奏で,チャーリー・ヘイデンが自分のバンドのフロントマンとして,よくぞ指名してくれた,と感心したものだった。
それでアーニー・ワッツのジャズ・サックスを求めて,ジョン・コルトレーン所縁のストレートなジャズ・アルバム『REACHING UP』(以下『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』)を買ってみた。
『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』のアーニー・ワッツに驚いた。やっぱりコルトレーン・チルドレン!
この時受けた衝撃は「ジェントル・ソウツ」から「カルテット・ウエスト」への隔たり以上! ゲ・ゲ・ゲ!
その最大の理由は,ピアノのマルグリュー・ミラー,ベースのチャールス・ファンブロー,ドラムのジャック・デジョネットとのセッションなのに「アーニー・ワッツの音」が鳴っているからであり,アーニー・ワッツのリーダー・バンドのようなまとまりを感じたからである。
アーニー・ワッツにとって『アイ・ヒア・ア・ラプソディ』は,一介のレコーディング・セッションなどではなかった。
もう何年もジャズ・サックスに専念してきたかのようなグループ・サウンドが展開されている。頭の中は「ジャズ,ジャズ,ジャズ」であってフュージョンなんかは片隅にもない感じ。アーニー・ワッツが,どっぷりと“ジャズに浸かっている”様子に心底驚いてしまった。

ピアノのマルグリュー・ミラー,ベースのチャールス・ファンブロー,ドラムのジャック・デジョネットのリズム隊はしなやかで重い。だから余計にアーニー・ワッツのテナー・サックスの軽さに「物足りなさ」を覚えてしまう。
個人的にアーニー・ワッツを“ゴリゴリのジャズの人”として認めることはやぶさかではないが,アーニー・ワッツの個性が色濃いのはフュージョン・サックスの方だと思う。
アーニー・ワッツの個性である,独特の軽さ,に向いている音楽はフュージョン・サックスの方であると,アーニー・ワッツのジャズ・アルバムを聴いたからこそ断言できる。
チャーリー・ヘイデンの人選力って凄いよなぁ。“フュージョン以上ジャズ未満”なアーニー・ワッツのジャズ・サックスは「カルテット・ウエスト」ぐらいがちょうどよい。
ジャズに力を入れすぎると,モーダルなフレーズに隠れて「ゴスペル・アーニー・ワッツ」の顔がどうしても出てしまう。
01. REACHING UP
02. MR. SYMS
03. I HEAR A RHAPSODY
04. TRANSPARENT SEA
05. THE HIGH ROAD
06. INWARD GLANCE
07. YOU LEAVE ME BREATHLESS
08. SWEET LUCY
09. ANGEL'S FLIGHT
10. SWEET SOLITUDE
11. SWEET SOLITUDE (ALTERNATE TAKE)
ERNIE WATTS : Saxophones
JACK DeJOHNETTE : Drums
CHARLES FAMBROUGH : Acoustic Bass
MULLGREW MILLER : Piano
ARTURO SANDOVAL : Trumpet
(ビクター/JVC 1994年発売/VICJ-188)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,小川隆夫)
(ライナーノーツ/ナット・ヘントフ,小川隆夫)