DON'T BE STUPID-1 “女王”「ひみこ」という名前を聞くと,誰もが邪馬台国の「卑弥呼」を連想することと思うが,菊池ひみこフュージョン・サウンドを聞いたが最後“女王”「ひみこ」という名前を聞くと“邪馬台国の女王”「卑弥呼」ではなく“フュージョンの女王”菊池ひみこの「ひみこ」の方を連想するようになる。

 菊池ひみこの場合,フュージョンを演奏している人ではない。フュージョンを産み出している人なのである。
 あの当時,菊池ひみこの頭の中の音楽が,日本のフュージョン・シーン全体を動かしているような感覚があった。だからこそ菊池ひみこが“フュージョンの女王”と呼ばれたのだと思っている。

 菊池ひみこデビュー・アルバム『DON’T BE STUPID』(以下『ドント・ビー・ステューピッド』)は,全曲粒ぞろいの名曲集である。
 デビュー・アルバムだからだろう。『ドント・ビー・ステューピッド』では特に美メロだけを準備して,アレンジは演者にお任せのソロ・パートが多い。美メロを“生演奏”で聴かせるのが菊池ひみこ流なのである。

 菊池ひみこデビューから3作連続で「リー・リトナー&ジェントル・ソウツ」のサックス奏者であるアーニー・ワッツとコラボしている。
 フュージョンサックスとしての人選であれば,アーニー・ワッツでも悪くはないが,デヴィッド・サンボーンマイケル・ブレッカートム・スコットあたりの名前が挙がるのが自然だったと思う。

 しかし,菊池ひみこからしてみると共演するサックス奏者と来れば“アーニー・ワッツの一択”だったような気がする。
 アーニー・ワッツというサックス奏者は「ジェントル・ソウツ」と菊池ひみこの関連以外には,フュージョンサックスとしての目立った活動は行なっていない認識である。

 真実のアーニー・ワッツという人はフュージョンではなく“ジャズの人”。そんな“ジャズの人”が菊池ひみことコラボすると,ちょうどいい塩梅のフュージョンになるから不思議なものだ。菊池ひみこは目利きである。

DON'T BE STUPID-2 『ドント・ビー・ステューピッド』は「菊池ひみこ ウィズ  アーニー・ワッツ」名義。
 アーニー・ワッツテナーサックスが,菊池ひみこの音世界をくすませる事なく,さりげなく,しっかりと存在感のある演奏でサポートしている。

 『ドント・ビー・ステューピッド』随一の「神曲」【FOR MY BUDDY】は“弾む”アーニー・ワッツがいればこその松本正嗣の“神懸りな”ギターソロ
 親しみやすさや包容力という女性っぽさを隠れ蓑として,剛腕で硬派チックにたたみ掛けてくる勝負曲を“歌う”サックスが柔らかくほぐしている!

 それにしても男性目線のジャケットの美尻からして,菊池ひみこ自身は女性を“売り”にしてはこなかった。
 …が,当時中坊だった管理人なんかは,美尻の菊池ひみこの美人のお顔を勝手に想像したものでした。お顔を拝んで…。そしてこのキュートなお尻がご本人様のものではないことが分かった時のWショック。あぁ。

 
01. Stormy Spring
02. What's Baby Singin'
03. For My Buddy
04. Vampire
05. Flight In The Moonlight
06. Stiff Vamp
07. Tear Drops
08. Mambo Is Magic

 
HIMIKO KIKUCHI : Acoustic Piano, Fender Rhodes, Oberhime, Mini Moog, YAMAHA CS-20M, Hohner Clarinet, Pianica, Solina, Vocal
MASATSUGU MATSUMOTO : Electric Guitar, Acoustic Guitar
ERNIE WATTS : Alto Saxophone, Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
KAZUYA SUGIMOTO : Electric Bass
KANYA KAZUMA : Drums
MASATO KAWASE : Percussion
MINE MATSUKI : Chorus
ASAMI MATSUMOTO : Voice
SHIN KAZUHARA : Trumpet
TOSHIO ARAKI : Trumpet
GENJI SAWAI : Alto Saxophone
HIROFUMI KINJO : Tenor Saxophone
MASAO SUZUKI : Baritone Saxophone
TOMATO GROUP : Strings

(テイチク/TEICHIKU 1980年発売/TEH-14)
(ライナーノーツ/野口久光,金澤寿和)

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