![TRIO '64-1](https://livedoor.blogimg.jp/adliblog/imgs/3/4/34faebdc.jpg)
ゆえにキース・ジャレット・トリオのベーシスト=ゲイリー・ピーコックがビル・エヴァンスと共演した『TRIO ’64』(以下『トリオ ’64』)のお目当てはビル・エヴァンスではなくゲイリー・ピーコックのはずであった。
ところがどうだろう。あのゲイリー・ピーコックが霞んでいる。あのポール・モチアンが霞んでいる。
ズバリ『トリオ ’64』とは「ビル・エヴァンス100%」のアルバムである。
暴言を吐けばベーシストとドラマーはリズム・キープが出来れば誰でも良かった。それくらい“圧倒的に”ビル・エヴァンスなアルバムである。
ビル・エヴァンスの新鮮でハーモニー豊かなアイディア,独特のデリカシー,それは決して女性的な柔らかさではなく,生き届いた繊細さ,あるいはバランスのとれた美しさがまばゆい!
この美しさの秘訣は「美人薄命」である。ベースのゲイリー・ピーコックとドラムのポール・モチアンとの『トリオ ’64』のピアノ・トリオは結成当初から「期間限定」の約束であった。
新進気鋭のゲイリー・ピーコック,待望の復帰が叶ったポール・モチアンを迎えて,ビル・エヴァンスが燃えたのだった。
そう。『トリオ ’64』の聴き所はビル・エヴァンスの美しいピアノだけにある。
『トリオ ’64』の中にビル・エヴァンスの代名詞である「インタープレイ」的要素は含まれていない。演奏が“ぬるい”のだ。
仮に「期間限定」でなかったなら“奇跡の”超大物3人の揃い踏みなのだから,もっともっと&ずっとずっと良くなって,果てはスコット・ラファロを超えたかも?
事実『トリオ ’64』トリオのライブ会場にキース・ジャレットの姿があったらしい。後にキース・ジャレット・トリオで共演することとなるゲイリー・ピーコックのベースとポール・モチアンのドラムに,自身のピアノを思い重ねていたりして…。
それにしてもゲイリー・ピーコックのベースが普通すぎる。ゲイリー・ピーコックとしてもビル・エヴァンス・トリオのベーシストを務めるとなるとスコット・ラファロの遺灰を意識せざるを得なかったであろうに…。
この全ては選曲の難に負うところが大きいと思う。管理人の大好きな【エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー】でさえ“荒削りな”ベースが響いている。【サンタが街にやってくる】なんて“愛らしい”ベース・ウォーキング。
どうですか? 読者の皆さんはこの選曲とゲイリー・ピーコックがダイレクトに結びつきますか?
![TRIO '64-2](https://livedoor.blogimg.jp/adliblog/imgs/6/b/6b3d81c1.jpg)
全てはプロデューサーを務めるクリード・テイラーが仕掛けた,ビル・エヴァンスの美しさを際立たせるためのセッティングが,世紀の共演の魅力を半減してしまっている。
ここに,例えば【枯葉】などのスコット・ラファロの有名曲をぶつけていたら,こんなにも軟弱なゲイリー・ピーコックで終わるはずはなかった。心からそう思う! → 心からそう願う?
管理人の結論。『トリオ ’64』批評。
ゲイリー・ピーコックの演奏が悪いわけではないし,調子が悪いわけではないのだが『トリオ ’64』はゲイリー・ピーコック目当てで聴くアルバムではない。
いいや,ここでどんでん返し! 是非ともゲイリー・ピーコック目線で聴いてみてほしい。あのゲイリー・ピーコックが隅に追いやられるレベルで“圧倒的に”ビル・エヴァンスのピアノが迫ってくる。
キース・ジャレット・トリオが好きでゲイリー・ピーコックのベースが好きなファンがビル・エヴァンスを強烈に意識することになるアルバムとして『トリオ ’64』をお奨めする。
01. LITTLE LULU
02. A SLEEPING BEE
03. ALWAYS
04. SANTA CLAUS IS COMING TO TOWN
05. I'LL SEE YOU AGAIN
06. FOR HEAVEN'S SAKE
07. DANCING IN THE DARK
08. EVERYTHING HAPPENS TO ME
BILL EVANS : Piano
GARY PEACOCK : Bass
PAUL MOTIAN : Drums
(ヴァーヴ/VERVE 1964年発売/UCCU-5077)
(ライナーノーツ/ジャック・マハー,杉田宏樹,藤井肇)
(ライナーノーツ/ジャック・マハー,杉田宏樹,藤井肇)
コメント一覧 (2)
私は、ことjazzに関しては「オンリー・エヴァンス」であり、またラファロ、モチアンであることは、貴兄のよく知るところです。ラリー・バンカーもいいですね。
私のブログでも、毎日最低5〜15くらいのjazzへのアクセスがあります。ということは、エヴァンス中心の私の場合、それはほぼイクオール「ビル・エヴァンス」トリオということになります。
ことに「枯葉」が、圧倒的にアクセスが多いようです。
思うに、私のブログにおいてさんざん記述したことですが、やはり「ビル・エヴァンス」トリオは、当然のことながら「エヴァンスのピアノ」あってものであり、そのピアノサウンドを最高度に生かし得るベースとドラムであり、それら三者三様の静かで控えめな、他では得られない「崇高とも言える音楽センスとハーモニー」といえるでしょう。
要はエヴァンス以下のメンバーが、「プレイヤー(演奏者)」である前に、「真の音の職人」であり、「真に音楽を愛し、またリスペクトできる詩人」であるからではないでしょうか。
そういう人たちこそが、「真のアーティスト」と呼ばれるに相応しいと思うのですが。
それにしても、貴兄の最近の「ブログ・ランキング」は、ずっとトップを……のようですね。これも嬉しいかぎりですね。
お久しぶりです。お元気ですか? 秀理さんとまたジャズの話,エヴァンス談義ができてうれしく思います。
感性創房のジャズ記事とくれば「ビル・エヴァンス」が同意語ですが,秀理さんのエヴァンス熱は少なからず私にも影響を及ぼしたと思います。エヴァンス専門の秀理さんの前で『トリオ’64』を語るのも気恥ずかしい経験でした。
またコロナが明けたらジャズ&エヴァンスで「天ぷら・ひらお」にでも出かけましょう。
さて「ブログ・ランキング」1位の件ですが,誰がクリックしているのかさっぱり見当がつきませんが,その人たちが楽しんで読めるを書こう,とモチベーションが上がっています。
それから秀理さんへの連絡はまだでしたが「アドリブログ」は下記URLへ移転中です。
https://www.adliblog.org/
新サイトも見回してくださればうれしいです。移転が終了した暁には相互リンクの依頼をさせていただくつもりです。
コロナ禍の中寒い日が続きます。お体ご自愛下さい。