ブリジット・フォンテーヌの『COMME A LA RADIO』(以下『ラジオのように』)は,バックを務めるアート・アンサンブル・オブ・シカゴ目当てで買ったのだが,このアルバムは,ブリジット・フォンテーヌがどうとか,アート・アンサンブル・オブ・シカゴがどうとか,で計れるアルバムではない。
『ラジオのように』とは,フレンチ・ポップスとフリー・ジャズ・ミックスの形をとった,これが混沌とは真反対の理路整然とした“前衛”にして,絶対に掴むことのできない“底なしの前衛”である。則ち,何らかのキーワードで計れるアルバムではない。
“底なしの前衛”『ラジオのように』の最大の魅力とは,ポエムであって,音楽というよりも文学に近いということである。
『ラジオのように』は,リアルな世界観を描いたフィクションの読み物のようなのである。文章で誘う空想の世界であり“非日常の空気感”が描かれているように思う。「サブカルの走り」のような音楽の1つだと思lっている。
ブリジット・フォンテーヌとアート・アンサンブル・オブ・シカゴが,再現不可能な時代を背景に,危険極まりない“非日常の音世界感”を構築している。
都市の大通りから一本中に入った“路地裏の日常”こそが「社会の歪み」であり「社会の裏側」が音楽で見事に構築されている。だからこそ『ラジオのように』は,あの時代が産み出した“前衛”であり,サブカルなのである。
ウィスパー・ヴォイスで呪文を唱えるかのように歌うブリジット・フォンテーヌが殺気立っている。不気味で奇怪な歌であることは頭では理解していても,その場を立ち去ることができず,意に反して「立ち尽くして」最後まで聞いてしまうような恐ろしさがある。
フランス女性のイメージから来るものなのか,あるいはフリー・ジャズのイメージから来るものなのかもしれないが,絶対に見てはいけない闇の世界へとどんどん引き込まれてしまう,いいや,引きずり込まれてしまう危険な感覚…。
管理人は『ラジオのように』を初めて聴いた時に,成人してからでないと経験することが許されない,未成年では絶対に目隠しされてしまう事柄を見てしまったドキドキする感覚を抱いたことを覚えている。
だからなのだろう。『ラジオのように』というアルバム・タイトルを耳にすると,今でも音楽というよりも読み物の感覚の方が強い。絵のない「官能小説」の類をイメージしてしまう。
アート・アンサンブル・オブ・シカゴのバックサウンドが真に素晴らしい。「集団即興集団」であるアート・アンサンブル・オブ・シカゴが,完成度の高いフレンチ・ポップスとフリー・ジャズ・ミックスを演奏している。
そこで詩を朗読するように歌うブリジット・フォンテーヌの存在が,管理人の中の『ラジオのように』=音楽ではなく文学のイメージにつながっているのだろう。
いいや,何となくカッコ付けて書いてしまった。ぶっちゃけて書くと,フレンチ・ポップスも知らなかったし,フリー・ジャズもまだ詳しく知らない時分に出会った,管理人にとっての「カルチャー・ショック」の1枚が,たまたま『ラジオのように』だっただけ。
おフランスへの憧れがあったし,自分の知らない世界への憧れも強かった。「広く浅く」も好きだったし「狭く深く」も好きだった。好奇心旺盛な若者が“底なしの前衛”『ラジオのように』にたまたま出会っただけ。
今のサブカル世代にとっても『ラジオのように』は“底なしの前衛”と受け止められるのではなかろうか? 『ラジオのように』には,それくらいの破壊力がある。
恐らく,初めて聴いた人には,何が何だか分からない,で終わると思う。それでいいんです。“前衛”とはそういうものだし『ラジオのように』は“サブカルの走り”の1枚なのだから…。
01. COMME A LA RADIO
02. TANKA II
03. LE BROUILLARD
04. J'AI 26 ANS
05. L'ETE L'ETE
06. ENCORE
07. LEO
08. LES PETITS CHEVAUX
09. TANKA I
10. LETTRE A MONSIEUR LE CHEF DE GARE DE LA TOUR DE CAROL
11. LE GOUDRON
12. LE NOIR C'EST MIEUX CHOISI
BRIGITTE FONTAINE : Vocals, Spoken Word
ARESKI : Percussion, Vocals
ART ENSEMBLE OF CHICAGO
LESTER BOWIE : Trumpet
JOSEPH JARMAN : Saxophone, Oboe
ROSCOE MITCHELL : Saxophone, Flute
MALACHI FAVORS MAGMOSTUS : Bass
LEO SMITH : Trumpet
JACQUES HIGELIN : Guitar
JEAN-CHARLES CAPON : Cello
ALBERT GUEZ : Lute
KAKINO DE PAZ : Zither
『ラジオのように』とは,フレンチ・ポップスとフリー・ジャズ・ミックスの形をとった,これが混沌とは真反対の理路整然とした“前衛”にして,絶対に掴むことのできない“底なしの前衛”である。則ち,何らかのキーワードで計れるアルバムではない。
“底なしの前衛”『ラジオのように』の最大の魅力とは,ポエムであって,音楽というよりも文学に近いということである。
『ラジオのように』は,リアルな世界観を描いたフィクションの読み物のようなのである。文章で誘う空想の世界であり“非日常の空気感”が描かれているように思う。「サブカルの走り」のような音楽の1つだと思lっている。
ブリジット・フォンテーヌとアート・アンサンブル・オブ・シカゴが,再現不可能な時代を背景に,危険極まりない“非日常の音世界感”を構築している。
都市の大通りから一本中に入った“路地裏の日常”こそが「社会の歪み」であり「社会の裏側」が音楽で見事に構築されている。だからこそ『ラジオのように』は,あの時代が産み出した“前衛”であり,サブカルなのである。
ウィスパー・ヴォイスで呪文を唱えるかのように歌うブリジット・フォンテーヌが殺気立っている。不気味で奇怪な歌であることは頭では理解していても,その場を立ち去ることができず,意に反して「立ち尽くして」最後まで聞いてしまうような恐ろしさがある。
フランス女性のイメージから来るものなのか,あるいはフリー・ジャズのイメージから来るものなのかもしれないが,絶対に見てはいけない闇の世界へとどんどん引き込まれてしまう,いいや,引きずり込まれてしまう危険な感覚…。
管理人は『ラジオのように』を初めて聴いた時に,成人してからでないと経験することが許されない,未成年では絶対に目隠しされてしまう事柄を見てしまったドキドキする感覚を抱いたことを覚えている。
だからなのだろう。『ラジオのように』というアルバム・タイトルを耳にすると,今でも音楽というよりも読み物の感覚の方が強い。絵のない「官能小説」の類をイメージしてしまう。
アート・アンサンブル・オブ・シカゴのバックサウンドが真に素晴らしい。「集団即興集団」であるアート・アンサンブル・オブ・シカゴが,完成度の高いフレンチ・ポップスとフリー・ジャズ・ミックスを演奏している。
そこで詩を朗読するように歌うブリジット・フォンテーヌの存在が,管理人の中の『ラジオのように』=音楽ではなく文学のイメージにつながっているのだろう。
いいや,何となくカッコ付けて書いてしまった。ぶっちゃけて書くと,フレンチ・ポップスも知らなかったし,フリー・ジャズもまだ詳しく知らない時分に出会った,管理人にとっての「カルチャー・ショック」の1枚が,たまたま『ラジオのように』だっただけ。
おフランスへの憧れがあったし,自分の知らない世界への憧れも強かった。「広く浅く」も好きだったし「狭く深く」も好きだった。好奇心旺盛な若者が“底なしの前衛”『ラジオのように』にたまたま出会っただけ。
今のサブカル世代にとっても『ラジオのように』は“底なしの前衛”と受け止められるのではなかろうか? 『ラジオのように』には,それくらいの破壊力がある。
恐らく,初めて聴いた人には,何が何だか分からない,で終わると思う。それでいいんです。“前衛”とはそういうものだし『ラジオのように』は“サブカルの走り”の1枚なのだから…。
01. COMME A LA RADIO
02. TANKA II
03. LE BROUILLARD
04. J'AI 26 ANS
05. L'ETE L'ETE
06. ENCORE
07. LEO
08. LES PETITS CHEVAUX
09. TANKA I
10. LETTRE A MONSIEUR LE CHEF DE GARE DE LA TOUR DE CAROL
11. LE GOUDRON
12. LE NOIR C'EST MIEUX CHOISI
BRIGITTE FONTAINE : Vocals, Spoken Word
ARESKI : Percussion, Vocals
ART ENSEMBLE OF CHICAGO
LESTER BOWIE : Trumpet
JOSEPH JARMAN : Saxophone, Oboe
ROSCOE MITCHELL : Saxophone, Flute
MALACHI FAVORS MAGMOSTUS : Bass
LEO SMITH : Trumpet
JACQUES HIGELIN : Guitar
JEAN-CHARLES CAPON : Cello
ALBERT GUEZ : Lute
KAKINO DE PAZ : Zither
(サラヴァ/SARAVAH 1969年発売/OMCX-1006)
(ライナーノーツ/葉山ゆかり)
(ライナーノーツ/葉山ゆかり)