LET THE JUICE LOOSE〜BILL EVANS GROUP LIVE AT BLUE NOTE TOKYO-1 現代アコースティックジャズ名盤SUMMERTIME』から数カ月もしないうちに録音&発売された,サックスビル・エヴァンスの“最高傑作”が『LET THE JUICE LOOSE〜BILL EVANS GROUP LIVE AT BLUE NOTE TOKYO』(以下『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』)である。

 『SUMMERTIME』のビル・エヴァンスは本当に素晴らしかった。しかし『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』を前にすると,前作とは全くの別人格のビル・エヴァンスと思えるくらいの充実度である。
 ゆえに管理人は『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』については「第三のビル・エヴァンス」と読んで区別している。

 ジャズサックスビル・エヴァンスフュージョンサックスビル・エヴァンスが凌駕していく。
 特に『SUMMERTIME』からの再演となる【LET’S PRETEND】と【KWITCHUR BELIAKIN】を聴き比べてみると「第二のビル・エヴァンス」と「第三のビル・エヴァンス」との“色の違い”が良く出ている。

 サイデメンの違いも甲乙付け難いし,ジャズサックスフュージョンサックスも分け隔てなく両方大好きなはずなのだが,管理人の好みは『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』の一択である。

 『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』のビル・エヴァンスに「のめり込む」! と書くよりもテナーサックスビル・エヴァンスに「のめり込む!」と書くのが正解であろう。

 ソプラノサックス中心の『SUMMERTIME』と比較して『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』のビル・エヴァンスは「本職」であるテナーサックスを中心に吹きまくっている。

 ビル・エヴァンステナーサックスの系統は「渋め」路線にあると思う。時に「枯れた」テナーサックスには,風格さえ漂っている。
 そんなビル・エヴァンスブルーノート東京の良質な観客の反応に乗せられて,バリバリに乾いた音色でテクニカルに吹き上げた際のオーバートーン! いや〜,こんな音色をライブ会場で実際に聞かされたら,正気ではいられなくなる。もう“アゲアゲ”状態である。

LET THE JUICE LOOSE〜BILL EVANS GROUP LIVE AT BLUE NOTE TOKYO-2 そこにデニス・チェンバースドラムが被さって来て,ダリル・ジョーンズベースまでもが被さって来る! ウォーッ! マジかよ学園!
 これぞ,グルーヴである。実にクリアーな音を聴かせるリズム隊である。「言語明瞭,意味不明瞭」なタイトなグルーヴに身体全体が熱くなる!

 『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』を聴いて感じる高揚感からの恍惚感! それでいて『SUMMERTIME』より軽いので,聴き終わった時に疲れを感じることもない。
 この辺りに,世間ではビル・エヴァンスサックスを,ジャズではなくフュージョンでもなくロックである,と感じる人がいる理由が隠されているのだろう。「渋め」&「枯れた」テナーサックスなのに体幹としては「若々しい」のだ。

 『レット・ザ・ジュース・ルース〜ビル・エヴァンス・ライヴ・アット・ブルー・ノート東京』を聴いて以降,マイルス・デイビスの『THE MAN WITH THE HORN』でビル・エヴァンスと共演した,バンドを引っ張るマーカス・ミラーの超絶ベースを聴く度に,後のダリル・ジョーンズのヘビーなベースを思い浮かべるようになりました。

 
01. Let the Juice Loose
02. Hobo
03. My Favorite Little Sailboat
04. Let's Pretend
05. In the Hat
06. Ginza
07. The Wait
08. Kwitchur Beliakin

 
BILL EVANS : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone
CHUCK LOEB : Guitar
JIM BEARD : Keyboards
DARRYL JONES : Bass
DENNIS CHAMBERS : Drums

(ジャズシティ/JAZZCITY 1990年発売/POCY-00054)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(サンプル盤)

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