SEE ALL KIND-1 本田竹曠ジャズ・アルバムにしてソロピアノ・アルバム『SEE ALL KIND』(以下『シー・オール・カインド』)を聴いて,個人的に感じたことが2つある。
 それは本田竹曠は,根っからのジャズメンではないということ。本田竹曠は,根っからのピアニストではないということ。

 ズバリ,本田竹曠という人はジャズではない。これは本田竹曠フュージョン本田竹曠=「ネイティブ・サン」と言いたいわけではない。
 たまたま本田竹曠の表現手法がジャズであっただけのことで,ジャズで何かを表現しようと思っている人ではないと思う。

 そうでなければ『シー・オール・カインド』での“空っぽな”ジャズスタンダード集なんて作らない。
 『シー・オール・カインド』の演奏には,特に目新しさも感じないし,これぞ渡辺貞夫グループ出身のジャズピアニスト,と唸らされる部分もない。

 「期待値の高い」管理人の予想に反して,ごくごくノーマルで平坦なアレンジ,素直なピアノ演奏が続いている。既発のジャズスタンダードに「一石を投じる」気持ちなんて微塵もない。
 ジャズスタンダードの一ファンとして,本田竹曠が気持ち良くピアノで美メロを弾き上げる。その繰り返しで6曲目まで粛々と進行して行く。

 駄盤だったか,と諦めかけたその時,7曲目の【SEE ALL KIND】が“堰を切ったように”流れ出す。これまでも鬱憤を晴らすようにピアノが生き生きと“歌い始める”。

SEE ALL KIND-2 もの凄い熱量である。もの凄い勢いに押し倒されてしまう。あらかじめ作曲されていたのだろうが,即興演奏のように,鍵盤の奥から奥から“生まれたての音”が次々と飛び出してくる。感情を揺さぶってくる。

 ポジティブな性格で多少のことは気にしない管理人。だから落ち込むことはほとんどないのだが,多忙が続くと疲れ切ってしまうことはたまにある。深夜に帰宅しシャワーを浴びて速攻眠るだけの日が年に数日かある。 
 そんな夜に【SEE ALL KIND】が聴きたくなる。疲れた身体が「パンチの効いた」【SEE ALL KIND】を欲してくる。ビタミン剤というよりも栄養ドリンクのような存在である。

 管理人にとって【SEE ALL KIND】を聴くという行為は,点滴してもらうことと等しい。【SEE ALL KIND】に,明日へのパワーをもらっている。

 
01. Mystery Circle〜Stella By Starlight
02. Summertime
03. Ku Ongea
04. In A Sentimental Mood
05. I Thought About You
06. Left Alone〜Slim Is Gone
07. See All Kind

 
TAKEHIRO HONDA : Piano

(ファンハウス/FUN HOUSE 1991年発売/FHCF-1171)
(ライナーノーツ/槙悟郎)

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