EVOLUTION-1 表向き「ロボット・フュージョン」として売り出し中の『EVOLUTION』。ここを素直に“ヴォーカルフィーチャー・アルバム”と謳わない姿勢にTRIXの“迷い”があると思う。

 TRIX・ファンの中には「TRIX“初のヴォーカルフィーチャーリング”だけを抜き取って駄盤と決め込むのは良くない。インスト曲にもいい曲はある」と擁護する意見が散見される。
 気持ちは分かるが管理人は『EVOLUTION』否定派である。その理由は単純に「ヴォーカル入りだから」ではない。「ヴォーカルにアルバム全体が引っ張られてしまっている」からだ。

 インスト曲の出来もいつもより少し落ちると書かざるを得ないが,中盤の5−7曲の【BURNING】〜【URBAN OASIS】〜【GUIDE THROUGH LIFE】での須藤満ベースの動きが『EVOLUTION』のハイライトであろう。参考までに書いておくと【GUIDE THROUGH LIFE】でのスキャットは全く気にならない。

 ただし,1曲目から10曲まで,アルバムを1枚通して聴き終えるとインスト曲が霞んでしまうんだなぁ,これが! 試しにヴォーカル・ナンバーをスキップして聴いてみると印象がいい。いつものTRIXが鳴っている。だから管理人はヴォーカル曲を評価しない。ヴォーカルという「毒」がアルバム全体を回ってしまっている。

 特に【DEJA−VU】が放つ「毒っ気」が大好物でして(ヤバイ,褒めてしまっている)全身ではなく頭の中をグルグル回る〜。これっ,かなり中毒性高いです。
 とどのつまり『EVOLUTION』の“隠れ”代表曲は【DEJA−VU】なのです。【DEJA−VU】のズバ抜けたインパクトが,上記の「黄金の中盤曲」の名演を蹴散らかしてしまう。それが身体では正直に反応しても理性では受け入れられないだけなのです。

 ああ〜,スッキリ! 実は管理人『EVOLUTION』を聴くという行為は,いつでも【DEJA−VU】とイコールなのです。スキャットはイケルとも書いたし,ヴォーカル否定派のふりをしてここまで書き連ねてしまって申し訳ありません。ここから書くことが本音です。

 そう。管理人が『EVOLUTION』を評価しない(評価したくない)最大の理由は「ヴォーカル入り」とは別の理由があるのです。
 そもそもTRIXというフュージョン・バンドは,以前から【パチンカーZ】【クワガッタン】【BOSTON】などの「お遊び曲」でヴォーカルと仲良く暮らしてきたバンドであった。
 それを今更“初のヴォーカルフィーチャーリング”だからと言って目くじら立てるのもおかしいわけですし…。 

EVOLUTION-2 ズバリ,菰口雄矢の脱退が管理人を『EVOLUTION』否定派に転じさせている。
 冒頭で書いた『EVOLUTION』を聴いて感じたTRIXの“迷い”。それは菰口雄矢の“迷い”であった。
 決してそのようなことはないのだが,ふとした瞬間に“ヴォーカルフィーチャー・アルバム”の制作が菰口雄矢脱退の背中を押したように思ってしまう。

 TRIXと来れば,長らくJETギターが大好きでして,最近やっとその思いが吹っ切れて『TRICK』で菰口雄矢ギターも好き,と公言できるようになった管理人。
 菰口雄矢の“置き土産”となった【SKETCHES OF YOUR DREAM】を聴く度に,失った才能の大きさに痛みさえ感じてしまう。

 だから二代目までも失った,どうしてもやり切れない喪失感が『EVOLUTION』を責めるのだと思う。心のどこかでは「本当はそんなに悪くない」と分かっていながら“ヴォーカルフィーチャー・アルバム”『EVOLUTION』に菰口雄矢脱退の,全責任をなすりつけてしまう,管理人をどうかお許しください。

 
01. Forget it
02. A-live featuring つのだ☆ひろ
03. 雷電
04. Nothing Changes
05. Burning
06. Urban Oasis
07. Glide Through Life
08. deja-vu
09. Sketches Of Your Dream
10. A-live

 
TRIX
NORIAKI KUMAGAI : Drums
MITSURU SUTOH : Bass
YUYA KOMOGUCHI : Guitar
AYAKI : Keyboards

(キングレコード/KING RECORD 2016年発売/KICJ-752)

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