FOR HAMP, RED, BAGS, AND CAL-1 『FOR HAMP,RED,BAGS,AND CAL』(以下『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』)は,ゲイリー・バートンが4人のヴィブラフォン奏者へ捧げたトリビュート・アルバムであるが,そんな知識は抜きにしてテイストとしては有名ジャズスタンダード集そのものである。

 ゲイリー・バートンのアルバムは,そのどれもが“一癖も二癖もある”聞き応えのある名盤ばかり。本命はチック・コリアとのデュエットなのだが『CRYSTAL SILENCE』『DUET』『IN CONCERT,ZURICH,OCTOBER 28,1979』はパワーを奪われる。聴いているだけでもエネルギーを消耗する。

 だから日常的にゲイリー・バートンを聞くことはないのだが『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』だけは,なんだかんだでつい聞いてしまう。まったりした感じでくつろいで楽しめる。
 個人的にはゲイリー・バートンの中で一番聞いた回数が多いのが『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』だと思う。

 そんな“癒し系”の『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』なのだが,演奏の厳しさを排除して,適当に聞き流せるリラックスした音造りはゲイリー・バートンの狙い通りとして,もう1つ,ゲイリー・バートンが狙ったのはオマージュした4人のヴィブラフォン奏者,ライオネル・ハンプトンレッド・ノーヴォミルト・ジャクソンカル・チャーダーの個性的な雰囲気の再現にある。

 選曲にしてもライオネル・ハンプトンレッド・ノーヴォミルト・ジャクソンカル・チャーダーの代表曲が選ばれているし,レッド・ノーヴォへのオマージュ曲ならドラムレスでギター入りといった編成にもこだわっている。アレンジも崩しすぎることはなく,4人の偉人の演奏イメージに自らを重ねた演奏にゲイリー・バートンオマージュが感じられる。

 ゲイリー・バートンの偉人への深い敬意が共演者にも伝わっているのだろう。マルグリュー・ミラー小曽根真ダニーロ・ペレスラッセル・マローンクリスチャン・マクドナルドジョン・パティトゥッチホラシオ・ヘルナンデスルイス・ナッシュルイス・クインテーロのビッグネーム軍団も,自分を捨てて楽曲の良さを引き出す演奏に徹している。

FOR HAMP, RED, BAGS, AND CAL-2 ゲイリー・バートン自身も「黒子」を演じているのだが,共演者たちはさらに「黒子の黒子」を演じている。
 だから本当はスタイルの異なる4人の偉人たちのヴィブラフォンゲイリー・バートンヴィブラフォンに昇華され,個性の違う楽曲が違和感なくまとめられている。
 ゲイリー・バートンクリスタルなカラーに温かみが加味された,柔らかなヴィブラフォンが美しく響いている。素晴らしい。

 きっと管理人が『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』を繰り返し聴いてしまう理由がそこにあるのだろう。この辺のニュアンスは文章で書き表わすのは,伝えたいのに伝えきれない。

 『グレイト・ヴァイブス〜ハンプ,レッド,バグス,カルに捧ぐ』の主役はゲイリー・バートンではない。ライオネル・ハンプトンレッド・ノーヴォミルト・ジャクソンカル・チャーダーの再ブレイク作として聴き続けられるべき名盤だと思う。

 
01. AFRO BLUE
02. BAGS' GROOVE
03. MOVE
04. MIDNIGHT SUN
05. FLYING HOME
06. DJANGO
07. BACK HOME AGAIN IN INDIANA
08. BODY AND SOUL
09. GODCHILD
10. JOAO
11. HOLE IN THE WALL
12. DANCE OF THE OCTOPUS

 
GARY BURTON : Vibraphone, Xylophone, Marimba
MULGREW MILLER : Piano
MAKOTO OZONE : Piano
DANILO PEREZ : Piano
RUSSELL MALONE : Guitar
CHRISTIAN McBRIDE : Bass
JOHN PATITUCCI : Bass
HORACIO HERNANDEZ : Drums
LEWIS NASH : Drums
LUIS QUINTERO : Percussion

(コンコード/CONCORD 2001年発売/VICJ-60733)
(ライナーノーツ/ニール・テッセール,小川隆夫)

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