THE WAY UP - LIVE-1 生涯に一度“立ち会えるか”どうかの奇跡のライブ! そのライブを偶然収録することができた奇跡のDVD! それこそ“我らが”パット・メセニー・グループの『THE WAY UP − LIVE』(以下『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』)である。
 『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』のおかげで,管理人も上記「奇跡の二重奏」の“目撃証人”となることができた。いずれは読者の皆さんも…。

 むろん,正確には『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』は「奇跡の二重奏」などではない。恐らくライブの出来に関しては,パット・メセニー・グループというもの,ツアー中も更なる向上を目指すことで知られるバンドであるがゆえ,最終公演近くの“練りに練り上げられ,成熟された演奏”がベストだったと思うし,収録日に関しては,現地韓国スタッフが入念な準備のもと,いわばライブの開演を“手ぐすね引いて待ち構えていた”状態だったとも思う。

 そんなの分かりきっている。百も承知である。でもそれでも管理人は『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』を敢えて「奇跡」と呼ぶのである!
← 「セラビー,カッコイイ」! この掛け声はオリエンタルラジオ風でお願いしま〜す。

 それはなぜか? 理由は『ザ・ウェイ・アップ』という楽曲のインパクトに尽きる!
 『ザ・ウェイ・アップ』を(例えば1年後などと)時間を空けて,このクオリティで再演することなど,それが天才集団=パット・メセニー・グループの現メンバーたちであったとしても不可能に違いない,と思うからだ。

 『ザ・ウェイ・アップ』の詳しい解説は「JAZZFUSION CD批評」をご覧いただくとして,ここで一言。『ザ・ウェイ・アップ』こそが,音楽家=パット・メセニーの全てである。
 『ザ・ウェイ・アップ』は,どこをどう切っても,パット・メセニー節のオンパレード。68分にも及ぶ超大作を暗譜するのも大変だろうが,パット・メセニーの音符を弾ききることはもっと大変。一回一回の演奏が大チャレンジの場と化している。

 管理人が上記の結論に達したのは,ふと目にした「特典映像」にヒントがあった…。
 これまで何度,この『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』を視聴したことだろう。骨の有りすぎるDVDであるだけに何度も繰り返し視聴してみたが,自分の言葉でDVD批評を執筆できるレベルまでは達しない。これほど“凄い&手強い”DVDは初めてである。
 読者の皆さんも,一度や二度は体験済みだと思いますが,演奏鑑賞中に手が止まってしまう。もはや批評どころではなくなってしまう。トリップさせられてしまう。例のアレのことです。

 それで特に興味があったわけでもなく“筆休め”のつもりで見た“おまけ”=「パット・メセニー・インタビュー」の中に『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』の秘密を解き明かす答えがあった!

 自宅には年に10日程しかいない,世界一の音楽バカ?=パット・メセニーをして「今回のツアーは特別」だと語っている。
 『ザ・ウェイ・アップ』については「スタジオの利点を生かして制作しようと思った。ライブのことは念頭になかった。“ライブで演奏するのは大変だ”と,過去の自分に文句を言いたい…」とも語っている。

 そう。スタジオ・ワークと位置づけていた『ザ・ウェイ・アップ』の再演が,今回のツアーの一番の見所。いつもの新鮮なアドリブへの探求心など微塵も感じられない。
 4部構成で1曲を聴かせる壮大な組曲。細部まで作り込まれた楽曲の枠内で「ソロをどう聴かせるか」「アンサンブルをどう聴かせるか」に集中している。そんな制約の中で,ライブ特有のハプニングまでをも演奏の中に上手に取り込み全体の統制を保っていく。

THE WAY UP - LIVE-2 毎回会場も異なればオーディエンスも異なる。レコーディングからツアー・メンバーも変わっている。再演不能の理由なら幾らでも挙げることができるだろう。
 しかしそんな障害など何も無かったかのごとく,パット・メセニー・グループは『ザ・ウェイ・アップ』の究極の再演を目指す! 過去の偉大な自分たちへ近づくため,いいや,過去の偉大な自分たちを越えるために,新生パット・メセニー・グループが“命を削っていく”のである。

 ただし,これはチャレンジであって苦行ではない。演奏中のメンバーの表情を見ていると,全員が超難曲『ザ・ウェイ・アップ』の演奏にハマッている。とりこになっている。この楽曲の深みへと誘われている。
 そんな超難曲と真剣に向きあい,幾つものギターを“弾きまくる”パット・メセニーの表情にグッとくる。

 『ザ・ウェイ・アップ』のCDもそうだが『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』のDVDも,そう何度も視聴できるものではない。
 何せ1曲68分(ボーナス・トラック入り日本盤CDは更に驚異の74分!)の「プロテスト・ミュージック」! 所有していても,そう易々と視聴できるものでもない。リスナー側にも「時間・体力・集中力」が要求されている。

 しかし注ぎ込んだその努力は必ず報われる。準備すれば準備するほど得られる感動は倍加する。努力と喜びは『ザ・ウェイ・アップ』のCDと『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』のDVDに関する限り比例する。この全てに関して管理人が全責任を担おう。

 『ザ・ウェイ・アップ』並びに『ザ・ウェイ・アップ〜ライヴ』について,管理人は「ジャズフュージョン批評家」人生をかけて「五ツ星」を保証する。

 
01. OPENING
02. PART 1
03. PART 2
04. PART 3

 
PAT METHENY GROUP
PAT METHENY : Guitars
LYLE MAYS : Piano, Keyboards
STEVE RODBY : Acoustic Bass, Electric Bass
ANTONIO SANCHEZ : Drums, Electric Bass
CUONG VU : Trumpet, Vocals, Percussions, Guitar
GREGOIRE MARET : Harmonica, Guitar, Vocals, Percussions, Electric Bass
NANDO LAURIA : Guitar, Vocals, Misc Percussion & Instruments

(ビデオアーツ/VIDEOARTS 2006年発売/VABG-1216)
(ライナーノーツ/工藤由実,パット・メセニー)
★特典映像:パット・メセニー・インタヴュー

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