
人は師をお手本にしながらも,つい師のモノマネに終治してまいがちである。しかし,師のモノマネをするだけなら,師を持ち師に教えを請う必要はない。師から教えを請うという行為には,師の求めることを知り自らも同じ目標を追い求めて初めて価値がある。
ブランフォード・マルサリスは「師(ジョン・コルトレーン)の跡を求めず,師(ジョン・コルトレーン)の求めたるところを求め」た“コルトレーン信者”である。
ジョン・コルトレーンのジャズ・テナーを研究し,ジョン・コルトレーンなら“現代ジャズの文脈の中で”どのように演奏したかを思い見ながらテナー・サックスを吹く“真の求道者”である。
そんなブランフォード・マルサリスが,ジョン・コルトレーンの“象徴”であろう『至上の愛』に挑戦した。
DVD+CD2枚組『COLTRANE’S A LOVE SUPREME LIVE IN AMSTERDAM』(以下『至上の愛 ライヴ』)である。
よくぞ,ジョン・コルトレーンの“象徴”『至上の愛』に挑戦しようと思ったものだ。『至上の愛』の威圧感は絶大! 並みの“コルトレーン・チルドレン”なら,決して手を伸ばそうとは思いもしない。凡人には決して計り知れない“師匠と腹を刺し違える”くらいの覚悟?
ブランフォード・マルサリスもサックス・プレイヤーとして“超えなければならない領域”に足を踏み入れたということなのだろう。
ブランフォード・マルサリスが意を決して吹き込んだ『至上の愛 ライヴ』はライヴ録音!
このライヴ録音で大正解! コルトレーンの“生真面目さ”まで受け継いだブランフォードがスタジオで『至上の愛』と向き合っていたなら,きっと録り直し&手直しの日々。完成が何年先になったことやら…。
レギュラー・グループのライヴCDの少ないブランフォードだっただけに,結果これは「一粒で二度おいしい」。
『至上の愛 ライヴ』で,ブランフォード・マルサリスが,師=ジョン・コルトレーンと真剣に向き合っている。
ブランフォード・マルサリスは,決して“ジャズの古典”に執着しているわけではない。ブランフォード・マルサリスが執着しているのは“ジャズの精神”である。

「楽器ではなく心で演奏する。魂で演奏する」ジョン・コルトレーンの“精神性”が色濃く乗り移っている。素晴らしい演奏である。
管理人は『至上の愛 ライヴ』に,完璧にハマッてしまった。何度見ても聴いても,見飽きないし聴き飽きない。
『至上の愛 ライヴ』は,リラックスするためのDVDではない。絶えず緊張を強いられる。それが分かっていても見たくなる。これぞ“ジャズの媚薬”である。
ブランフォード・マルサリスの名演が,管理人をコルトレーンに近づけてくれた。いや,ジャズに近づけてくれたのだ。
「師の跡を求めず,師の求めたるところを求めよ」。『至上の愛 ライヴ』は,この格言を“コルトレーン・チルドレン”ブランフォード・マルサリスが体得した瞬間の記録である。
至上の愛
01. PT.1:承認/Acknowledgement
02. PT.2:決意/Resolution
03. PT.3:追求/Pursuance
04. PT.4:賛美/Psalm
BRANFORD MARSALIS : Saxophone
JOEY CALDERAZZO : Piano
ERIC REVIS : Bass
JEFF "TAIN" WATTS : Drums
(東芝EMI/MARSALIS MUSIC 2005年発売/TOBW3219)
★ DVD+CD 2枚組
(ライナーノーツ/岡崎正通,中川ヨウ)
★ DVD+CD 2枚組
(ライナーノーツ/岡崎正通,中川ヨウ)
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