
こう語った“帝王”マイルス・デイビスの「本物中の本物が味わえる」のが,ライブDVD『MILES DAVIS LIVE IN GERMANY 1988』(以下『ミュンヘン・ライヴ 1988』)である。
中山康樹が命名した『YOU’RE UNDER ARREST』以降の「ポップ&シンセ・マイルス」の評価は総じて低い。
それはマイルス・デイビスの才能が枯渇したからでは断じてない。カムバック後のマイルスを認めようとしない,アコースティック・マイルス信者(あるいは一部の電化マイルス信者)が口に(耳に)しないから。要は“食わず嫌い”にすぎない。
DVD『ミュンヘン・ライヴ 1988』を見てほしい。
「ポップ&シンセ」路線に走ったとしても,マイルス・デイビスはジャズの“帝王”であった。そして“本物の”マイルス・デイビスが味わえるのは,メニューとしての『’ROUND ABOUT MIDNIGHT』『KIND OF BLUE』『NEFERTITI』『IN A SILENT WAY』『GET UP WITH IT』のスタジオ録音+テオ・マセロのマジック編集の名盤ではなく“ライブ”なのである。
マイルス・デイビス=絶対帝王はライブで明白。マイルス・デイビスはトランペッターでありながら,トランペットをあまり吹かない。そこにいるのは“監督総指揮”マイルス・デイビス。マイルス・デイビスはライブでシンセサイザーを多用し,バンド・リーダーに専念している。
そう。マイルス・デイビスはバンド・メンバーの力量を己の懐に取り込む天才なのである。
『ミュンヘン・ライヴ 1988』でのマイルス・バンドのメンバーも全員超優秀であるが,管理人のお奨めは,アルト・サックスのケニー・ギャレットとパーカッションのマリリン・マズール。
【HUMAN NATURE】【TOMAAS】でのケニー・ギャレットの大爆発! マイルス・デイビスが「ジョン・コルトレーンとウェイン・ショーターを足して2で割ったようなやつ」と評したケニー・ギャレット。ジョン・コルトレーンの大ブローとウェイン・ショーターのハイセンスを持ち合わせるケニー・ギャレットこそ,歴代マイルス・バンドの「NO.1サックス奏者」で間違いない。

【TUTU】におけるマリリン・マズールの“妖艶な”ダンス・パフォーマンスがたまらない。【HEAVY METAL PRELUDE】【CARNIVAL TIME】の「スーパー・プレイ」はDVDならでは!?
「レコードはメニューみたいなものだ。本物が味わえるのはライブだ」。この言葉は「ポップ&シンセ」路線の『ミュンヘン・ライヴ 1988』においても真実であった。
01. Perfect Way
02. Human Nature
03. Tutu
04. Splatch
05. Heavy Metal Prelude
06. Heavy Metal
07. Don't Stop Me Now
08. Carnival Time
09. Tomaas
10. New Blues
11. Portia
MILES DAVIS : Trumpet, Keyboards
KENNY GARRETT : Saxophone, Flute
BOBERT IRVING III : Keyboards
ADAM HOLZMAN : Keyboards
BENJAMIN RIETVELD : Bass
MARILYN MAZUR : Percussions
JOSEPH "Foley" McCREARY : Guitar
RICKY WELLMAN : Drums
(コロンビア/COLUMBIA 2005年発売/COBY-91338)
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