
何が最高かって? 『LIVE IN MONTREUX』のウェザー・リポートはバンドの“成長期”に当たっている。ライブ・バンドであったウェザー・リポートは,1回1回のライブによって成熟へと向かい,続く『へビー・ウェザー』『8:30』『ナイト・パッセージ』で“絶頂期”に至る。そんなイケイケで上り調子で恐いもの知らずな“スリリングで完璧な演奏”が最高である。
ウェザー・リポートにとって,1976年のモントルー・ジャズ・フェスティバルと来れば,まずは『へビー・ウェザー』公式収録=【ルンバ・ママ】であろう。
アレックス・アクーニャとマノロ・バドレーナによる,ツイン・パーカッションの壮絶プレイがノーカットで収録されている。あの2人の名手の渾然一体となった音の洪水の区別がつく快感を何と伝えたらよいのだろう。【ルンバ・ママ】の映像は,ウェザー・リポート・ファンにとっての“お宝”である。
ウェザー・リポートにとって,1976年のモントルー・ジャズ・フェスティバルと来れば,次に“ベースの革命児”ジャコ・パストリアス』の全面参加である。ジャコ・パストリアスのウェザー・リポートへの加入は『ブラック・マーケット』からであるが,この時期のジャコ・パストリアスは,すでにウェザー・リポートの主要メンバー然としている。
尤も,これは音声のお話。映像への出番は余りない。まぁ,それもしょうがないでしょう。
『へビー・ウェザー』発売前のウェザー・リポートなんてこの位の扱いが普通。ましてジャコパスの凄さを世間が(カメラマンが)知る由もないのだ。ん〜,ジャコパスの扱いの“小ささ”に駆け出しだった『LIVE IN MONTREUX』を感じてしまう。
それにしても,本当にこの時期,このメンバーでの演奏は素晴らしい。メンバー全員の超絶技巧をもはや神の域。作り込まれたスタジオ盤とは違った,圧倒的なグルーヴ感とハプニングをもものにするアドリブが随所にキメキメのキラキラである。
大地のリズムに身を任せ,妖艶なメロディーに異国へと誘われる楽曲は『ブラック・マーケット』と当時はまだ未発表だった『へビー・ウェザー』からと名曲揃い。
特にラストの【ジブラルタル】を知らないウェザー・リポート・ファンは“モグリ”と呼ばれてもしかたがないと思う。壮絶で絶品なウェザー・リポート!

ほとんど音が悪いか,映像が悪いか,はたまたどっちも悪いかのどれか。ああ〜,最高の素材だったのに〜。
そもそも『LIVE IN MONTREUX』は,地元スイスのテレビ局が番組用に収録したものなのだが,カメラ毎の映像があるわけではなく現場でぶっつけでスイッチングしたのだろう。とにかく間が悪い。
カメラワークもやたらと近接で,これは顕微鏡で覗いた世界かっちゅうの。特にウェイン・ショーターも棒立ち時のアップは何? 撮影前に少しはウェザー・リポートを予習しろっちゅうの。
ところで『LIVE IN MONTREUX』には,特典映像として「MIDNIGHT SPECIAL」と題するTVショーの秘蔵映像も追加収録。【バードランド】【ルンバ・ママ】【ティーン・タウン】で,リズムに合わせて腰を振って踊り狂うマノロ・バドレーナとマイケルジャクソンもびっくりの軽やかなステップを踏むジャコ・パストリアス。この映像は「コレクターズ・アイテム」ですよっ。
Montreux Jazz Festival 1976
01. Elegant People
02. Scarlet Woman
03. Barbary Coast
04. Portrait Of Tracy (Jaco Pastrius Solo)
05. Cannon Ball
06. Black Market
07. Rumba Mama (Per / Drum Duo)
08. Piano / Sax Duo
09. Badia
10. Gibraltar
11. Band Introduction
Midnight Special 1977
12. Birdland
13. Rumba Mama (Per / Drum Duo)
14. Teen Town
WEATHER REPORT
JOE ZAWINUL : Keyboards
WAYNE SHORTER : Tenor Sax, Soprano Sax
JACO PASTRIUS : Bass
MANOLO BADRENA : Percussions
ALEX ACUNA : Drums
(FOOTSTOMP/FOOTSTOMP 2005年発売/FSVD-005)
ヤコブの家の回復(オバ17-21)
阿部薫 『ソロ・ライヴ・アット・騒 VOl.10』