
『ドミノ・セオリー』が“リアル”ウェザー・リポート初体験だっただけに『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』は,管理人にとって非常に感慨深いものがある。
『ドミノ・セオリー』発売当時のウェザー・リポートは,ジャコ・パストリアスとピーター・アースキンが揃って脱退し,ビクター・ベイリーとオマー・ハキムが『プロセッション』から,そしてこの『ドミノ・セオリー』ツアーからホセ・ロッシーに代わってミノ・シネルの,フレッシュ若手リズム隊へとメンバー・チェンジした。
一方,ジョー・ザビヌルとウェイン・ショーターの両雄は,ウェザー・リポートの活性化のため「フロント VS リズム隊」の新しい構図を思い描いていた。
そう。『ドミノ・セオリー』発売当時のウェザー・リポートは,言わばバンド内“新陳代謝”の真最中であって,この『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』は,ツアーを通してバンドの“地固め”を図っていた頃のライブ映像に当たる。
『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』には,ジャコ・パストリアス脱退後,ウェイン・ショーターとの“黄金の三角関係”のバランスが崩れ“ザビヌル王朝”が確立された様子が記録されている。
ジョー・ザビヌルのキーボードを中心に,オマー・ハキムのドラミングが冴え渡るフュージョン・ファンにはたまらないグルーヴ。
そう。『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』の主役は,ジョー・ザビヌルとオマー・ハキムである。
【WHERE THE MOON GOES】を見てほしい。 オマー・ハキムのドラミングはハービー・メイソン並のバネに,さらに「しなやかさ」と「なめらかさ」がプラスされた抜群のグルーヴと,スティーブ・ガッド系のテクニックを兼ね備えた圧倒的なドラミングで,今にも椅子から落ちそうな大迫力は見ている者を“釘付け”にすることだろう。
複雑なリズムを,ボーカルを取りながらも楽勝でこなし,しかも無茶苦茶グルーヴさせるかと思えば,超ハイテンションで暴れまくるインタープレイを披露する。正に冷静と熱狂,緻密と奔放が両立している。
このオマー・ハキムのドラミングにザビヌルさえもが“釘付け”になっている。若く才能溢れるドラミングに,まるで可愛い孫でも見ているかのようにニコニコと表情を崩しながら…。

これが『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』の合言葉である。
そこさえ押さえておけばライブの定番=【DUET(IMPROVISATION FEAT.ZAWINUL & SHORTER】【MEDLEY − BLACK MARKET/ELEGANT PEOPLE/SWAMP CABBAGE/BADIA/A REMARK YOU MADE/BIRDLAND】でのウェイン・ショーターのアドリブが心置きなく楽しめる。
なお『WEATHER REPORT IN JAPAN − DOMINO THEORY LIVE IN TOKYO 1984』にはLD盤未収録の【THE EVOLUTIONARY SPIRAL】のレアなビジュアル・イメージ映像を収録。ただし特段見る価値は…。
PS ジャコパスの亡霊を振り払おうともがいているのは“新生ウェザー・リポート”のメンバーだけではありません。こんなに圧倒的な名演を見せつけられても,ジャコパスのいないウェザー・リポートに“物足りなさ”を感じてしまった管理人は贅沢でしょうか?
LIVE IN TOKYO 1984
01. D' WALTZ
02. DUET (IMPROVISATION FEAT. ZAWINUL & SHORTER)
03. SOUNDCHECK
04. WHERE THE MOON GOES
05. - MEDLEY - BLACK MARKET / ELEGANT PEOPLE / SWAMP CABBAGE / BADIA / A REMARK YOU MADE / BIRDLAND
VISUAL SOUNDTRACKS
06. THE EVOLUTIONARY SPIRAL
WEATHER REPORT
JOE ZAWINUL : Keyboards
WAYNE SHORTER : Saxophone
VICTOR BAILEY : Bass
MINO CINELU : Percussions
OMAR HAKIM : Drums
(FOOTSTOMP/FOOTSTOMP 発売日不明/FSVD-030)
虐げ,処罰,および回復(アモ8:1-9:15)
阿部薫 『ソロ・ライヴ・アット・騒 VOl.8』