
ハッキリ言って復帰後のマイルス・デイビスは,他人の力を借りまくっている。復帰して1年も経つというのに,電化マイルス引退前のような先頭に立ってビシビシ吹きまくる姿はない。
何という手抜き OR 老い? いいや,そうする必要がなかったのだ! 『LIVE IN LONDON 1982』を見れば,マイルス・デイビスがトランペットでスパークする必然性を感じない程の鉄壁なサウンド。
サックスのビル・エヴァンス,ギターのマイク・スターン,ベースのマーカス・ミラー,ドラムのアル・フォスター,パーカッションのミノ・シネル。
どうですか? このメンバー。才能豊かな若手3人と重鎮のドラマーとパーカッショニストの2人。この5人にマイルス・デイビスが加わった時の最高のバランス。
これでマイルス・デイビスが,前に前に出過ぎると,若手3人が“並みの”バック・ミュージシャンに成り下がってしまうかも…。
このカムバック・バンドの特徴はピアノレス。白いビル・エヴァンスとロックなマイク・スターンが前面に出る超攻撃型のバンド。
リーダー=マイルス・デイビスのポジションは,ビル・エヴァンスとマイク・スターンのツー・トップを自由に泳がせ,最後に仕留める一吹き勝負師。コンディションの関係上で前半は抑え目,後半徐々に本領発揮という裸電球の白熱灯スタイル。最後の一吹きの出来は,演奏が進むにつれて熱くなる。
でもこれでいいんです。管理人はマイルス・デイビスの一吹きにしびれてしまうのです。もうステージに立っているだけで,そこにいるだけで満足してしまうのです。

『LIVE IN LONDON 1982』に限っては,音楽的にも「リップサービスなし」に才能豊かなメンバーが一堂に会した超レア音源。
あのビル・エヴァンスが,あのマイク・スターンが,あのマーカス・ミラーが“帝王”の側で素晴らしいソロをかましている。至福のアドリブはマイルス・バンドだからこそ!
ただし『LIVE IN LONDON 1982』=画質劣悪ブートDVD。
当時の映像作品は「タマが少ない」との噂で購入した“お宝”DVDの『LIVE IN LONDON 1982』であるが,繰り返しの鑑賞には堪えられない。
「マイルスを聴け!」が中山康樹なら「マイルスは見るな! マイルスは聴け!」がセラビーである(『LIVE IN LONDON』『JAZZ FEST.BERLIN 1 NOV.1985』のようなブートDVDの場合の話)。
01. Back Seat Betty
02. My Man's Gona Now
03. Aida
04. Ife
05. Fat Time (incomplete)
MILES DAVIS : Trumpet, Synthesizer
BILL EVANS : Soprano Saxophone, Tenor Saxophone, Flute
MIKE STERN : Guitar
MARCUS MILLER : Bass
AL FOSTER : Drums
MINO CINELU : Percussions
(FOOTSTOMP/FOOTSTOMP 2005年発売/FSVD-004)
もはや罪の奴隷ではなく,キリストを通して義の奴隷である(ローマ5:1-6:23)
和泉宏隆 『22 to 26 midnight』