
どうですか? この超豪華メンバー! これぞ『THE MANHATTAN PROJECT』(以下『マンハッタン・プロジェクト』)なるスペシャル・プロジェクト!
← 注)『マンハッタン・プロジェクト』で検索してこのページに辿り着いた方の中には,トランペットのニコラス・ペイトン,アルト・サックスのビンセント・ハーリング,テナー・サックスのマーク・ターナー擁する「マンハッタン・プロジェクト」をお探しだと思いますがこちらは同名異人の別ユニットです。あっ,あちらは「マンハッタン・プロジェクツ」。複数形違い。今気付きました。
ジャズは“一期一会”な音楽なので,このマンハッタン・プロジェクトのように,さっと集まってささっと演奏して飲んで帰る,が通例なのだが,マンハッタン・プロジェクトには,ここにスタジオ・ライブでのCD&DVD収録という「音と映像の一発撮り」という難条件が加わっていた。
でもでも,やっぱり通例通りに,さっと集まってささっと演奏して音とビデオを一発で撮って飲んで帰る〜。出来はセッションらしからぬコンボ・サウンド〜。
おおっと忘れるところでした。上記難条件にもう1つ,ブルーノートの新人ジャズ・ボーカリスト=ラシェル・フェレルのプロモーション付き〜。ラシェル・フェレルには全く興味はありませんが,読者の皆さんも一度見てみてください。ほえ〜で奇妙なスキャットの大迫力に「恐いものみたさ」を感じますよっ。
4人のジャズ・ジャイアントによるスーパー・ウルトラ・カルテット。見所満載で悠長にDVD批評などしている余裕などなくしてしまう圧倒的な演奏力。どこを見ても誰を見ても素晴らしい。仮にマンハッタン・プロジェクトがレギュラー・カルテット化していたならば「90年代のV.S.O.P.?」として間違いなくジャズの歴史の爪痕を残すビッグ・コンボになっただろう。
テナー・サックスとソプラノ・サックスのウェイン・ショーターが素晴らしい。
この夜のセット・リストを眺めると,マイルス・バンド時代の代表曲【ネフェルティティ】に新曲【ヴァーゴ・ライジング】(後に『ハイ・ライフ』収録)。そしてウェザー・リポートでウェイン・ショーターとの係わりが深いジャコ・パストリアスの【ダニア】と3トラックもウェイン・ショーター絡み。これにはリーダー=レニー・ホワイトの「ショーターで行こう」な意向が見え隠れしている?
しか〜し,管理人がウェイン・ショーターを絶賛するのは,勝手知ったるレパートリー以外で炸裂するウェイン・ショーターのアドリブにある。
この夜のウェイン・ショーター,前半はノッテいない。まっ,ウェイン・ショーターはいつだってマイペースな人なのだが【ダニア】ではソプラノの調子が悪かったのか,しきりに楽器を気にしている。
そんなウェイン・ショーターの“ジャズメン魂”に火を付けたのがラシェル・フェレルをフィーチャリングした【枯葉】。ブルーノート・レーベルの【枯葉】らしく『マンハッタン・プロジェクト』の【枯葉】はキャノンボール・アダレイの『サムシン・エルス』のアレンジを踏襲している。そのお膳立ての上でラシェル・フェレルを泳がせている。
しかし【枯葉】の聴き所はブルーノートの新社長=ブルース・ランドヴァルにとっては残念だろうが,ラシェル・フェレルの歌終わりから始まるウェイン・ショーターのアドリブである。
テクニックと勢いだけの“新人”ラシェル・フェレルのアドリブとジャズの酸いも甘いも知り尽くした“ベテラン”ウェイン・ショーターのアドリブ。2人の段違いの表現レベルに「ショーター,あっぱれ」。フュージョン・タッチな【ネフェルティティ】のリズム抑え目&フロント全開なテナー・サックスにも「ショーター,あっぱれ」。

ミシェル・ペトルチアーニの映像に引き込まれる。ハンディキャップがあるにも関わらず五体満足なピアニストでもとてもこんなに音楽的に弾きこなせやしない。短い命を宿命づけられたピアノに“感謝感激”の念が湧き上がる。
さてさてDVD『マンハッタン・プロジェクト』の主役は,リーダーでプロデューサーでもあるレニー・ホワイトのドラムである。画面に四六時中,レニー・ホワイトのドラムがフィルインする。
しか〜し『マンハッタン・プロジェクト』の“陰の”主役はベースのスタンリー・クラーク。スタンリー・クラークの大暴れがあればこそCD&DVDが売れたのだと思う。
前半はジャコ・パストリアスを意識してのことなのか【ダニア】でもウッド・ベースを弾いていたが,後半のエレクトリック・ベースに持ち替えてからが真骨頂。
【ネフェルティティ】【グッドバイ・ポーク・パイ・ハット】におけるウェイン・ショーターとの掛け合い。【サマータイム】におけるレニー・ホワイトとの掛け合いがお見事。どんどんどんどん前へ前へ〜。
そう。『マンハッタン・プロジェクト』の副題とは「スタンリー・クラークの“まさかの突進に”レニー・ホワイト,ウェイン・ショーター,ミシェル・ペトルチアーニが引っ張られるの巻き〜」。完。
PS 本文には登場させませんでしたが,サポート参加のギル・ゴールドスタインとピート・レヴィンのツイン・キーボードがマンハッタン・プロジェクトを“最新の”アコースティック・カルテットへと昇華させる働きをしていると思います。
01. OLD WINE, NEW BOTTLES
02. DANIA
03. AUTUMN LEAVES
04. NEFERTITI
05. VIRGO RISING
06. GOODBYE PORK PIE HAT
07. SUMMERTIME
WAYNE SHORTER : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
MICHEL PETRUCCIANI : Piano
STANLEY CLARKE : Bass
LENNY WHITE : Drums
GUEST MUSICIAN
GIL GOLDSTEIN : Keyboards
PETE LEVIN : Keyboards
RACHELLE FERRELL : Vocal
(ブルーノート/BLUE NOTE 2005年発売/TOBW-92049)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
ヒゼキヤの時代に神はアッシリアを退却させる(イザ36:1-39:8)
秋吉敏子 『秋吉敏子 渡米50周年 日本公演』