この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 45 - Best Contemporary Jazz Album ; MomentumJoshua Redman Elastic Band

 
MOMENTUM-1 ジョシュア・レッドマンジャズテナーのサラブレットだった。生粋の後継者になるはずであった。過去形である。

 そう。ジョシュア・レッドマンはメイン・ストリーム・ジャズの王道から,自ら道を外れることを選んだ。自分の限界を感じたからでもメイン・ストリーム・ジャズに限界を感じたからではない。
 そうではなく,ジャズの新しい可能性を見い出したからので,次なる王道を目指してチャレンジを始めたのだ。

 きっかけは客演であった。その客演においてジョシュア・レッドマンが「魂を射抜かれてしまった」。オルガンサム・ヤエルドラムブライアン・ブレイドと組んだ「YAYA3」であった。
 「YAYA3」はオルガンサム・ヤエルのプロジェクト。ジョシュア・レッドマンの変化に目を留めることもなかった。サム・ヤエルの神輿に担がれて,いいテナー奏者だよなぁ,の思いを強くした印象が残っている。

MOMENTUM-2 だから管理人は『YAYA3』直後のジョシュア・レッドマン名義の『ELASTIC』(以下『エラスティック』)に驚いた。そしてこう叫んだのだった。「ジョシュア,お前もか〜」。

 ズバリ,ジョシュア・レッドマンは確信犯であった。今思えば「YAYA3」とは,サム・ヤエルを“隠れ蓑”に利用したジョシュア・レッドマンの新プロジェクトであった。そうでなければ名盤エラスティック』は作れやしないし,今夜の主役『MOMENTUM』(以下『モメンタム』)には繋がらない。

 そう。『モメンタム』とは『エラスティック』の続編ではない。『YAYA3』でHOPして『エラスティック』でSTEPして『モメンタム』でJUMPする「エラスティック・バンド」の三段跳びなのである。

MOMENTUM-3 それにしても『モメンタム』での大JUMPが凄い! メイン・ストリーム・ジャズを飛び越えるだけでなく「レッド・ホッド・チリ・ペッパーズ」や「ザ・ルーツ」のファンまでも取り込もうとする勢いである。

 ただしジョシュア・レッドマンが真に飛び越えたのはジャズからロックやヒップホップというジャンルではなかった。
 それはピーター・バーンスタインエリック・クラズノカート・ローゼンウィンケルという,余りにも性格の異なるギタリストがアルバム1枚に収まりきれる“最先端のジャズ”なのであって『モメンタム』のテイストは,かつてウイントン・マルサリスが「時代の寵児」として飛び越えたものを,もう1度飛び越えた感じに似ている。

MOMENTUM-4 そう。ジョシュア・レッドマンが,ジャズの王道を再刷新してみせた。WINDOWSで言えばVISTAの次が出た感じ? 「エラスティック・バンド」でのジョシュア・レッドマンの“ご乱心”が新しいムーヴメントになるように思う。

 そして「エラスティック・バンド」の“最先端のジャズ”が,従来のジャズ・ファンではなくロックやヒップホップのファンに受け入れられ時,ついにジョシュア・レッドマンが再評価され『モメンタム』が再評価されることになる。

 ジョシュア・レッドマンが「エラスティック・バンド」三部作で,ウェイン・ショーターマイケル・ブレッカーの大きな背中を捉えてみせた!

 
01. SOUNDCHECK
02. SWEET NASTY
03. JUST A MOMENT
04. SHUT YOUR MOUTH
05. THE CRUNGE
06. RIVERWIDE
07. GREASY G
08. LONELY WOMAN
09. SWUNK
10. BLOWING CHANGES
11. DOUBLE JEOPARDY
12. PUT IT IN YOUR POCKET
13. SHOWTIME

 
JOSHUA REDMAN : Saxophones, Keyboards
SAM YAHEL : Keyboards
JEFF BALLARD : Drums
BRIAN BLADE : Drums

PETER BERNSTEIN : Guitar
FLEA : Bass
STEFON HARRIS : Vibes
ERIC KRASNO : Guitar
MESHELL NDEGEOCELLO : Bass
JEFF PARKER : Guitar
KURT ROSENWINKEL : Guitar
NICHOLAS PAYTON : Trumpet
?UESTLOVE : Drums

(ノンサッチ/NONESUCH 2004年発売/WPCR-12031)
(スリーブケース仕様)
(ライナーノーツ/工藤由美)

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