この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 48 - Best Jazz Instrumental Album, Individual or Group ; Live At The House Of TribesWynton Marsalis

 
LIVE AT THE HOUSE OF TRIBES-1 『LIVE AT THE HOUSE OF TRIBES』(以下『スタンダード・ライヴ』)は,ウイントン・マルサリスにとって久しぶりのライブ・アルバムであり,久しぶりのスタンダード集である。

 だ・か・ら・個人的には期待値が高かった。そ・れ・な・の・に最高だった。スタンダードのはずなのにアドリブがスパークしている。久しぶりにウイントン・マルサリスで熱狂してしまった。これだからウイントン・マルサリスは・や・め・ら・れ・な・い。

 それにしてもウイントン・マルサリスのコンボがガラリと変わったよなぁ。新たなセクステットのメンバーは,アルトサックスウェッセル・アンダーソンピアノエリック・ルイスベース中村健吾ドラムジョー・ファンズワースパーカッションオーランド・Q・ロドリゲスの面々。

 馴染みのメンバーは1人も残っていないのに,80年代絶頂期の“音の香り”がするのはウイントン・マルサリスの強い個性の賜物である。これだからウイントン・マルサリスは・や・め・ら・れ・な・い。

 そう。そうなんだ。新たなセクステットのメンバーで名前を知るのは,ウイントン・マルサリスマーカス・ロバーツと共演していたウェッセル・アンダーソンエリック・アレキサンダーと共演していたジョー・ファンズワースの2名のみ。中村健吾については,今年になって小曽根真のアルバムで知ったばかり。

 でもそれが良かったのだと思う。個人的には“覆面集団”として聴いた,ウイントン・マルサリスの新セクステットのノリの良さ,活きの良さが新鮮で,聞き覚えのあるウイントン・マルサリストランペットが若返って聴こえた。「(野生の本能的な)ジャズの真髄」を帯びたトランペットが最高に魅力的である。
 おかげで,ブラインドで聞こうものならウイントン・マルサリストランペットでさえ,驚異の新人のように感じてしまった。

 そう。ウイントン・マルサリスを超える新人トランペッターが出てきたと思ったら,それがウイントン・マルサリスだった!
 やっぱり管理人は“根っからのウイントン好き”だったんだよなぁ。そう自分で感じられたことがたまらなくうれしかった!

 それにしてもこの日の観客の異様なノリは何なのだろう。最高のオーディエンスの活躍こそが『スタンダード・ライヴ』のハイライト!
 ジャズ・ジャーナリズムの熱狂が去ったウイントン・マルサリスを,未だに追いかけ,こんなにも愛してやまない熱狂的なファンの存在に,実はウイントン・マルサリス本人の演奏以上に,大きな勇気をもらったように思う。
 だって,今でもウイントン・マルサリスが好きだと公言するのは,肩身の狭いご時世だと思うものでして…。

LIVE AT THE HOUSE OF TRIBES-2 2005年度の「カテゴリー48」にはウェイン・ショーターという強敵がいたので,残念ながらグラミー受賞は逃したが『スタンダード・ライヴ』クラスのアルバムを連発すれば,ニュー・ウイントン・マルサリスの時代が復権できる。

 ウイントン・マルサリスの実力をもってすれば『スタンダード・ライヴ』クラスのアルバムは量産できる。だって『スタンダード・ライヴ』でのウイントン・マルサリスの演奏は,思いっきり吹いているように聞こえて,実は腹八分目程度? 余力を軽く残してのこの大名演に末恐ろしや〜。

 正直,スタンダードばかりを演奏していた90年代のウイントン・マルサリスの音楽には惹かれるものが少なかった。2000年代を迎えて,久しぶりにスタンダードを演奏したウイントン・マルサリスの音楽に強烈に惹かれてしまった。
 2000年代のウイントン・マルサリスに,80年代絶頂期の“音の香り”が再び漂い出した予感!? しばらくは90年代のスタンダード集を掘り起こしてみるとしましょうか…。

 やっぱりウイントン・マルサリスは本物である。ウイントン・マルサリスは10年間錆びていても,磨けば光る本物である。この圧倒的なポテンシャルの高さゆえ,管理人にはウイントン・マルサリスを切ることなどできないでいる。

 
01. GREEN CHIMNEYS
02. JUST FRIENDS
03. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
04. DONNA LEE
05. WHAT IS THIS THING CALLED LOVE
06. 2nd LINE

 
WYNTON MARSALIS : Trumpet
WESSELL ANDERSON : Alto Saxophone
ERIC LEWIS : Piano
KENGO NAKAMURA : Bass
JOE FARNSWORTH : Drums
ORLANDO Q. RODRIGUEZ : Percussion

(ブルーノート/BLUE NOTE 2005年発売/TOCJ-66266)
(ライナーノーツ/スタンリー・クロウチ,小川隆夫)

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歴代誌第一20章 フィリスティア人の巨人たちを討つ
バド・パウエル 『ジャズ・ジャイアント