PUCCINI'S TURANDOT-1 2006年2月吉日。トリノ冬季オリンピックが閉幕した。トリノ五輪のシンデレラと来れば“クール・ビューティー”荒川静香で決まりであろう。
 荒川静香さん,金メダルおめでとうございます。採点に加点されない「イナバウアー」の演出が効きましたねっ。

 ただし個人的には荒川静香→「イナバウアー」ではなく,荒川静香→「トゥーランドット」でした。そして「トゥーランドット」と来ればトリノ五輪の開会式で絶賛されたルチアーノ・パヴァロッティの「トゥーランドット」被り。
 だからトリノ五輪と来れば「トゥーランドット祭り」なわけだが,管理人の頭の中に流れている「トゥーランドット」は荒川静香でもルチアーノ・パヴァロッティでもなく「THE BOB BELDEN ENSEMBLE」の「トゥーランドット」。

 ここ数日はトリノ五輪のニュースを見た後にボブ・ベルデンの『PUCCINI’S TURANDOT』(以下『プッチーニ・ジャズ』を引っ張り出しては【だれも寝てはならぬ】ばかりを聴きまくっていた。
 そうして次のように妄想する。もし荒川静香の「トゥーランドット」使用曲が「THE BOB BELDEN ENSEMBLE」の「トゥーランドット」であったなら…。

 それくらいに管理人はボブ・ベルデンのアレンジに入れ込んでいる。『プッチーニ・ジャズ』という邦題に怪しげな雰囲気を感じるが,そこでひるんではいけない。キワモノなのではない。それどころか超正統派のビッグバンドジャズが,こんなテクノロジーの時代に躍動するとは…。

 ズバリ,ボブ・ベルデンの『プッチーニ・ジャズ』こそが「オペラのジャズ化」の“最高傑作”である。こんなにも大編成な組曲を完璧にアレンジするのは数年,場合によっては数十年かかると思う。いいや,数十年かかってもこのレベルに到達するのは至難の業であろう。
 『プッチーニ・ジャズ』は“天才”ボブ・ベルデンに「ブルーノート・オールスターズ」が組んだ「THE BOB BELDEN ENSEMBLE」だから成し得ることのできた「奇跡の作品」だと思っている。

 ここから書き記す文章はオペラと切り離して,100%ジャズ・アルバムのレビューとして読んでほしい。と言うのも管理人は「トゥーランドット」を1回も見たことがない。原曲のこともよく分からない。ジャコモ・プッチーニの「オペラのジャズ化」も「テザード・ムーン」の『EXPERIENCING TOSCA』しか聴いていない。不勉強で申し訳ない。

 ただし,不勉強でもボブ・ベルデンの『プッチーニ・ジャズ』の,何たるか,が伝わってくる。『プッチーニ・ジャズ』プロジェクトの「とてつもなく壮大な規模」を考えるだけで倒れそうになる。規格外も規格外の「夢の企画盤」な1枚である。恐らくは未来永劫,ボブ・ベルデンの『プッチーニ・ジャズ』を超える「トゥーランドット」は誕生しないと思っている。

PUCCINI'S TURANDOT-2 なにせ,ジョー・ロヴァーノテナーサックスデイヴ・リーブマンソプラノサックスウォレス・ルーニートランペットチャック・フィンドリートランペットスヌーキー・ヤングトランペットマーク・コープランドピアノケヴィン・ヘイズピアノアダム・ホルツマンローズピアノラリー・ゴールディングスオルガンゲイリー・ピーコックベースジェイ・アンダーソンベースジェームス・ジーナスベーストニー・ウイリアムスドラムポール・モチアンドラムジョー・チェンバースドラムという超大物揃いの「ブルーノート・オールスターズ」が,自分を無にしてアンサンブルの一部と化すことを喜んでいる。
 「THE BOB BELDEN ENSEMBLE」の全員がボブ・ベルデンの譜面の魅力に「憑りつかれている」! 凄いぞ,ボブ・ベルデン

 実はボブ・ベルデンというお方。テナーサックスを吹くブルーノート・レーベルのプレイング・マネーシャー兼ディレクターなのだそうだ。だからボブ・ベルデン自身を含めて65名の「THE BOB BELDEN ENSEMBLE」の面々を「適材適所」で“ワンフレーズだけ吹かせる”という贅沢な使い方ができるわけだし,超大物ジャズメンからの信頼を勝ち得ている。

 ボブ・ベルデンの『プッチーニ・ジャズ』は,純度100%のジャズ・アルバム。木管楽器祭り〜打楽器祭り〜金管楽器祭りの展開を挟み,ハイライトである【だれも寝てはならぬ】に繋げるまでの,大編成ものと小編成もののアクセントも完璧な流れであって,これぞ「オペラのジャズ化」の極み。

 ボブ・ベルデンの『プッチーニ・ジャズ』は,完成度においてもスケール感においても“本家”オペラを凌駕した唯一のジャズ・アルバムである。

 
01. OPENING
02. CALAF'S THEME
03. FIRST VISION
04. CHILDREN'S SONG
05. THE PRINCESS SLEEPS
06. THE EXECUTION
07. SIGNORE ASCOLTA
08. NON PIANGERE LIU
09. IN QUESTA REGGIA
10. THE THREE EBIGMAS
11. IN QUESTA REPRISE
12. NESSUN DORMA
13. DEL PRIMO PIANTO

 
THE BOB BELLDEN ENSEMBLE
BOB BELLDEN : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
JOE LOVANO : Tenor Saxophone
DAVID LIEBMAN : Soprano Saxophone
MIKE MIGLIORE : Alto Saxophone
WALLACE RONEY : Trumpet
TIM HAGANS : Trumpet, Fluegelhorn
JIM POWELL : Trumpet, Fluegelhorn
TONY KADLEK : Lead Trumpet
FRANK SZABO : Lead Trumpet
CHUCK FINDLEY : Lead Trumpet
PHIL GRENADIER : Trumpet
LES LOVITT : Trumpet
OSCAR BRASHEAR : Trumpet
SNOOKY YOUNG : Trumpet
MIKE MIGLIORE : Piccolo, Flute
CHUCK WILSON : Flute, Alto Flute
TIM RIES : Soprano Saxophone, Flute, Alto Flute
JAMES WALKER : Flute
SAM RINEY : Flute, Alto Flute
LAWRENCE FELDMAN : Bass Flute
GERRY HERBIG : Bass Flute, Bass Clarinet
RON KOZAK : Bass Clarinet, English Horn, Bass Flute, Bassoon
GLENN WILSON : Baritone Saxophone
PETER REIT : French Horn
JOHN CLARK : French Horn
BILL LANE : French Horn
GENE CIPRIANO : English Horn
RON JANELLI : Bassoon
JOHN FEDCHOCK : Trombone
CLARK GAYTON : Trombone, Bass Trombone
BILL WATROUS : Trombone
BILL REIDENBACH : Bass Trombone
GEORGE MORAN : Tuba, Bass Trombone
BILL ROPER : Tuba
ERIC FRIEDLANDER : Cello
MARK COPLAND : Acoustic Piano, Wurlitzer Electric Piano, Hammond B-3 Organ
KEVIN HAYS : Fender Rhodes Piano, Wurlitzer Electric Piano
ADAM HOLZMAN : Fender Rhodes Piano
GEOFF KEEZER : Hammond B-3 Organ, Wurlitzer Electric Piano
LARRY GOLDINGS : Hammond C-3 Organ
JOEY CALDERAZZO : Acoustic Piano
FAREED HAQUE : Acoustic Guitar
JOHN HART : 12-String Guitar, Electric Guitar
DAVID MILES : Electric Guitar
STACEY SHAMES : Harp
GARY PEACOCK : Acoustic Bass
JAY ANDERSON : Acoustic Bass
IRA COLEMAN : Acoustic Bass
JAMES GENUS : Electric 6-String Bass
STEVE LOGAN : Electric Bass
JEFF HIRSHFIELD : Drums, Gong
BOBBY PREVITE : Drums
TONY WILLIAMS : Drums
PAUL MOTIAN : Drums
JOE CHAMBERS : Drums, Vibes, Chimes, Marimba
ROCKY BRYANT : Drums
RALPH PENLAND : Drums, Timpani
BRUCE HALL : Timpani, Bas Drum
DAVID EARLE JOHNSON : Percussion, Congas
JERRY GONZALEZ : Congas
C.K. LADZEKPO : Achimevu, Vocal
KOBLA LADZEKPO : Gankogui, Vocal
AGBI LADZEKPO : Kidi, Lead Vocal
DZIDZORGBE LADZEKPO : Axatse, Vocal
ADAM RUDOLPH : Kaganu

(ブルーノート/BLUE NOTE 1993年発売/TOCJ-5731)
(ライナーノーツ/ジョン・ディリベルト,黒田恭一,瀬川昌久)

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