『ＢＥＳＴ』の５曲目は【ＳＰＡＩＮ】（以下【スペイン】）。

　スロー・テンポの【スペイン】は好みではないので，しばらくは聴き飛ばしていたのだが，アルバムを通して流し聴きしていた時に気付いたことがある。
　ズバリ，寺井尚子はヴァイオリンの「得手不得手」を理解した上で【スペイン】をスロー・テンポでアレンジしている。

　ヴァイオリン弾きにとっての苦手な音域はしっとりと，そして得意な音域では，まるでヴァイオリンのために書かれた曲であるかのようにバンバン弾く。
　【スペイン】がヴァイオリンをフィーチャリングすれば，ヴァイオリンが【スペイン】をフィーチャリングしている。

　ヴァイオリンを美しく聴かせるために，時には「引き算」も必要である。
　ジャズメンのほぼ全員がイケイケで「弾き倒す」名曲【スペイン】をヴァイオリンの特性に合わせて「引き算」で演奏した寺井尚子の大勝利である。

　でもでも寺井尚子の【スペイン】は星４つ。【スペイン】は高速でイッキに演奏したヴァージョンが聴きたい！

 
NAOKO TERAI : Violin
MASARU OKUYAMA : Piano, Synthesizer
TATSUYA IKEDA : Bass
SETSU FUJII : Drums

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格言の書21章　立場が低い人の叫びを聞かない人は自分も聞いてもらえない
LEVER 42　『ラニング・イン・ザ・ファミリー』