『FOURPLAY』の1曲目は【BALI RUN】(以下【バリ・ラン】)。

 静寂の中,テーマが流れ出す。まるでオルゴールがかかっているかのような感覚…。
 これまでずっと【バリ・ラン】のイントロはリー・リトナーギターソロだと思っていたが,ふいに,1分45秒からのリフレインがイントロと同じ音色であることに気付いた。つまりイントロを弾いていたのはリー・リトナーではなくボブ・ジェームスだったのだ。

 この発見が大きい! 個人的にフォープレイの歴史観を塗り替えるぐらいの発見であった。管理人はフォープレイギタリストの違いで聴いていた。つまりリー・リトナー期とラリー・カールトン期に分けて聴いていた。
 その区分自体は悪くないし,間違ってもいないとは思うが,そもそもフォープレイとはギタリストがリードするバンドではなかった。ギタリストではなくボブ・ジェームスだったのだ。バンドの一発目,それも目立ちすぎるぐらいに目立つ“独奏”はボブ・ジェームスソロだったのだ。

 ボブ・ジェームスは「裏方」に回る機会が多い。ソロ・アルバムでこそピアノをバリバリ弾いているが,デュエット以上のボブ・ジェームスは,実に控え目なピアノだし,メインは「バックでハモル」キーボードである。
 そもそもフォープレイのコンセプトは「グループ・サウンド」なのだから,当然,ボブ・ジェームスは後ろに下がり“スター”であるリー・リトナーを前面に押し出している。

 ずっとそうだと思っていたのだから,リー・リトナーではなくボブ・ジェームスソロでバンドがスタートしたことに気付いた瞬間,これまでの自分の中のフォープレイ像がガタガタろ崩れる思いがしたのだった。
 この思いに共感してくださるフォープレイ・ファンは実は多いと想像する。フォープレイ・ファンの皆さん,フォープレイは,リー・リトナーでもラリー・カールトンでもなく,名実ともにボブ・ジェームスのバンドです!
 …って,もしかしたらファースト・インプレッション通り,ボブ・ジェームスではなくリー・リトナーだったりして!? 再逆転の可能性も残っている…。

 いいや,管理人が【バリ・ラン】で語りたいのは,最初から最後まで「右肩上がり」な盛り上がりについてである。
 2コーラスのテーマのリフレインが合計9回。1回目はイントロからの例の「オルゴールの静寂」である。2回目は55秒からのリー・リトナーのフィルインによって完成した美メロに「ウワーッ」。3回目は1分32秒からのボブ・ジェームスの分厚いキーボードでのストリング的な「自己主張」にゾックゾク。4回目は1分53秒からの仕切り直しの「静寂」でリズム隊が前面に浮かび上がってくる仕掛け。5回目は2分12秒から始まるが,ここからはリー・リトナーギターソロへと繋がるイケイケ調。6回目は3分33秒からのハービー・メイソンの“鈴の音”であり,7回目は4分0秒からの,これまたハービー・メイソンの“スネア”がついに解禁されて,もうバンドの勢いが止まらない!

 「よっ,待ってました」的な“真打ち”ハービー・メイソンの「スネア解禁」の瞬間が【バリ・ラン】の一番の盛り上がりだと誰もが思ったはずなのに,フォープレイの4人が準備したクライマックスはまだ先にあった!
 4分39秒からの8回目では,大盛り上がりの後だけにクールダウンしたと思わせといての“フリ”であった。ついに訪れた9回目の“奇跡の”4分55秒! 「もう大丈夫ですから。気持ち良すぎて死にそうですから。ごめんなさい。この辺で本当に勘弁してください。お願い,分かったからもう止めてくれ〜」! 全員音量UPでの大合唱の中,リー・リトナーのリズム・ギターに震えが走る!

 
FOURPLAY
BOB JAMES : Keyboards
LEE RITENOUR : Guitars
NATHAN EAST : Bass
HARVEY MASON : Drums

FOURPLAY-1
FOURPLAY
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伝道の書9章 思いも寄らないこと
国府弘子 『ピアノ・アニヴァーサリー