この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 45 - Best Contemporary Jazz Album ; Who Let The Cats OutMike Stern

 
WHO LET THE CATS OUT?-1 『WHO LET THE CATS OUT?』(以下『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』)は,マイク・スターンには珍しいジャズ寄りのサウンドで,個人的にはグッと来た。
 きっとマイク・スターン本人には,これまでのキャリアを総括するつもりなどないのだろうが,ジャズ寄りのサウンド・メイクがカムバック後のマイルス・デイビスを思い起こさせる。

 そしてマイク・スターンの新しい相棒となったボブ・フランセスチーニサックスが素晴らしく,過去のビル・エヴァンスデヴィッド・サンボーンマイケル・ブレッカーボブ・バーグをこれまた思い起こさせる。

 そしてリチャード・ボナベースヴォーカルが入ると,ここ数年間の安定のマイク・スターンのワールド・ミュージック寄りのサウンドで続編っぽいし,まぁ,そもそもマイク・スターンギターデビュー以来,いつでもマイク・スターンだし。マイク・スターンのアルバム毎に重ねてきた思い出がよみがえってくるし。

 でもでもマイク・スターンがそんな懐古趣味に溺れるはずもなく,上記に挙げたフュージョンのトップ・ギタリストとして積み重ねてきたキャリアの上に『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』での4ビートやアコースティックギターウッドベースを使ったジャズ寄りのサウンドが乗せられてきたから,個人的にはグッと来た。

 そう。『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』のような多彩なフュージョン・アルバムを作れるのはマイク・スターンぐらいしかいない。
 その意味で『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』は,ギタリストとしては安定のマンネリなのに,四方八方の顔を出すマイク・スターンの「集大成」。バラエティに富む楽曲群全てにマイク・スターン印が刻まれている。

 そんなギターフュージョン・ベースの上にジャズ・エッセンスが振りかけられたマイク・スターンの音世界がかつてなく光り輝いて聴こえる。

 管理人がマイク・スターンを好きな理由は,1番がギターフュージョンなのは当然として,サックスが入った時のギターの使い方が最高に上手いからである。
 マイク・スターンの手にかかるとギターだけではなくサックスもカッチョよくなるのだが『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』ではギターサックスだけではなく,ベースドラムにまで手が伸びている。

WHO LET THE CATS OUT?-2 『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』には,リチャード・ボナアンソニー・ジャクソンヴィクター・ウッテンクリスミン・ドーキーミシェル・ンデゲオチェロという5人のベーシストデイヴ・ウェックルキム・トンプソンという2人のドラマーを楽曲のイメージによって,そのベーシストとそのドラマーの双方が輝くように,それによって楽曲が光り輝くように見事に使い分けている。

 そう。管理人が感じた『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』の第一印象=「マイク・スターンのエレクトリック・マイルス』はあながち間違いではなかった。

 マイルス・デイビス・バンドは,トランペットが流れていない時間でもマイルス・デイビスの音がする,と語られていたが『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』でのマイク・スターンも同様であって,マイク・スターンは自分では演奏せずとも,自分の狙った通りのベース,自分の狙った通りのドラム,自分の狙った通りのサックスを弾いている。

 『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』の主役はギターではない。しかし間違いなく『フー・レット・ザ・キャッツ・アウト?』の主役はマイク・スターンなのである。

 
01. TUMBLE HOME
02. KT
03. GOOD QUESTION
04. LANGUAGE
05. WE'RE WITH YOU
06. LENI GOES SHOPPING
07. ROLL WITH IT
08. TEXAS
09. WHO LET THE CATS OUT?
10. ALL YOU NEED
11. BLUE RUNWAY

 
MIKE STERN : Guitar, Acoustic Guitar
ROY HARGROVE : Trumpet
BOB FRANCESCHINI : Saxophone
GREGOIRE MARET : Harmonica
JIM BEARD : Piano, Synthesizers, Organ, Clavinet
CHRIS MINH DOKY : Acoustic Bass
NESHELL NDEGEOCELLO : Bass
RICHARD BONA : Bass, Vocals
VICTOR WOOTEN : Bass
ANTHONY JACKSON : Bass
KIM THOMPSON : Drums
DAVE WECKL : Drums

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2006年発売/UCCT-1167)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/成田正)

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ソロモンの歌4章 羊飼い
ニューハード+富樫 雅彦 『牡羊座の詩