この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。
「スーパートリビア」の記事で記したように，ＣＤ購入済の「グラミー・受賞作」（または「グラミー・ノミネート作」）の“お祝いレビュー”（あるいは“残念レビュー”）をＵＰいたします。
それで読者の皆さん，お断り＆再確認しておきますが，レビューするのは既に所有済のＣＤだけですから〜。追加購入はしませんから〜。
なお，現在「アドリブログ」の「ＪＡＺＺ／ＦＵＳＩＯＮ ＣＤ批評」では“１アーティスト１枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“１アーティスト１枚縛り”ノーカウントといたします。
こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する？ まぁ，いずれは所有ＣＤを全枚レビューすることになるので，早いか遅いか，の違いだけ！？ なお，この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
『ＢＥＹＯＮＤ ＴＨＥ ＷＡＬＬ』（以下『ビヨンド・ザ・ウォール』）は，ケニー・ギャレットの２つの個性が融合して「ザ・ケニー・ギャレット・ミュージック」とでも呼べる，ケニー・ギャレットにしては珍しい「静かに聴かせる」大名盤である。
その２つの個性とは，１つが今回は中国だったが元々は大の日本贔屓であることと，もう１つがアルトなのにジョン・コルトレーンのシンパであるということ。ケニー・ギャレットの２つの個性にそれぞれ尾ひれがついている。１＋１＝２ではなく１０になった大名盤。これ重要！
とにもかくにも前作『ＳＴＡＮＤＡＲＤ ＯＦ ＬＡＮＧＵＡＧＥ』で「吹きまくり」のケニー・ギャレットは完結したということだろう。『ビヨンド・ザ・ウォール』では「吹きまくり」をやめてアンサンブルで迫ってくる。「あれっ？ どうした？ 体調でも崩したのか？」…。
一聴した限りでは『ビヨンド・ザ・ウォール』は，今までのケニー・ギャレットを知るファンからすると，全くもって意表を突かれた新プロジェクト的なアルバムに思えて当然だと思う。
しかしよくよく分析してゆくと，ケニー・ギャレットの奥底ですでに流れていた「ザ・ケニー・ギャレット・ミュージック」が，たまたま今回のタイミングで“顔を出しただけ”だと思えてきた。
そう。『ビヨンド・ザ・ウォール』は，従来のケニー・ギャレットの延長線上に位置するアルバムであり“出るべくして出た”アルバムである。アンサンブルの一音一音にケニー・ギャレットの２つの個性が刻まれている。
中国旅行でインスパイアされた『ビヨンド・ザ・ウォール』とあって，悠久なる中国４０００年の音楽の響きがアルバムの至るところに散りばめられている。
エキゾチックでオリエンタルな雰囲気をアメリカンなジャズと見事に融合できたのも，大の日本贔屓あってのこと！ ケニー・ギャレットの日本愛はキャリアと密度が違います。
『ビヨンド・ザ・ウォール』は，お経のヴォイス，声楽のサンプリングや二胡などの「物理的要素」でもモロ中国を感じるのだが，管理人が『ビヨンド・ザ・ウォール』に中国を感じるのは「物理的要素」以上に「精神性」の部分である。
ここでジョン・コルトレーンの代名詞である「精神性」である。『ビヨンド・ザ・ウォール』でのジョン・コルトレーンと来れば「物理的要素」ではファラオ・サンダースの存在がシンボル的で分かりやすい。意思を同じくすると思われるこの２人のフロントが，思いの外「静かに」ジョン・コルトレーン愛を奏でている。
ジョン・コルトレーンの場合の「精神性」とはインド音楽だったが，ケニー・ギャレットの場合は，日本というフィルターを通して聞いた中国民族音楽。ゆったりと太極拳風の動きで音楽が静止する「精神性」。
『至上の愛』よろしく，中国民族音楽の“スピリチュアル”とも言える「静かに聴かせる」部分にすっかり魅了されてしまったのだろう。
ただしケニー・ギャレットの感じた，中国民族音楽の“スピリチュアル”とは一般的な内省表現寄りではなく，明るくポップな“スピリチュアル”！
かつてケニー・ギャレットがジョン・コルトレーンへ捧げた『ＴＲＩＯＬＯＧＹ』『ＰＵＲＳＵＡＮＣＥ』の暗く厳しい雰囲気とは全くもって異なっている。だ〜って『ビヨンド・ザ・ウォール』はインドではなく，日本であり，上り調子の中国大陸なんだもん。
ＬＥＴ’Ｓ楽しい中国旅行。ＬＥＴ’Ｓ楽しいジョン・コルトレーン・チルドレン。万里の長城を超えていくヒューマンなケニー・ギャレットの音楽が大大大好き。
01. CALLING
02. BEYOND THE WALL
03. QING WEN
04. REALIZATION (MARCHING TOWARDS THE LIGHT)
05. TSUNAMI SONG
06. KISS TO THE SKIES
07. NOW
08. GWOKA
09. MAY PEACE BE UPON THEM
KENNY GARRETT : Alto Saxophone
PHARAOH SANDERS : Tenor Saxophone
BOBBY HUTCHERSON : Vibes
MULGREW MILLER : Piano
ROBERT HURST, III : Bass
BRIAN BRADE : Drums
RUGGERIO BOCCATO : Percussion
GUOWEI WANG : Erhu
JONATHAN GANDELSMAN : Violin
NEIL HUMPHREY : Cello
SUSAN JOLLES : Harp
NEDELKA ECHOLS : Vocals
GENEA CAVENESS : Vocals
KEVIN WHEATHLEY : Vocals
ARLENE LEWIS : Vocals
GEOVANTI STEWARD : Vocals
DAWN CAVENESS : Vocals
ソロモンの歌8章 私は城壁
ビル・エヴァンス 『モントゥルー II』
「スーパートリビア」の記事で記したように，ＣＤ購入済の「グラミー・受賞作」（または「グラミー・ノミネート作」）の“お祝いレビュー”（あるいは“残念レビュー”）をＵＰいたします。
それで読者の皆さん，お断り＆再確認しておきますが，レビューするのは既に所有済のＣＤだけですから〜。追加購入はしませんから〜。
なお，現在「アドリブログ」の「ＪＡＺＺ／ＦＵＳＩＯＮ ＣＤ批評」では“１アーティスト１枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“１アーティスト１枚縛り”ノーカウントといたします。
こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する？ まぁ，いずれは所有ＣＤを全枚レビューすることになるので，早いか遅いか，の違いだけ！？ なお，この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
Category 48 - Best Jazz Instrumental Album, Individual or Group ； Beyond the Wall ／ Kenny Garrett
『ＢＥＹＯＮＤ ＴＨＥ ＷＡＬＬ』（以下『ビヨンド・ザ・ウォール』）は，ケニー・ギャレットの２つの個性が融合して「ザ・ケニー・ギャレット・ミュージック」とでも呼べる，ケニー・ギャレットにしては珍しい「静かに聴かせる」大名盤である。その２つの個性とは，１つが今回は中国だったが元々は大の日本贔屓であることと，もう１つがアルトなのにジョン・コルトレーンのシンパであるということ。ケニー・ギャレットの２つの個性にそれぞれ尾ひれがついている。１＋１＝２ではなく１０になった大名盤。これ重要！
とにもかくにも前作『ＳＴＡＮＤＡＲＤ ＯＦ ＬＡＮＧＵＡＧＥ』で「吹きまくり」のケニー・ギャレットは完結したということだろう。『ビヨンド・ザ・ウォール』では「吹きまくり」をやめてアンサンブルで迫ってくる。「あれっ？ どうした？ 体調でも崩したのか？」…。
一聴した限りでは『ビヨンド・ザ・ウォール』は，今までのケニー・ギャレットを知るファンからすると，全くもって意表を突かれた新プロジェクト的なアルバムに思えて当然だと思う。
しかしよくよく分析してゆくと，ケニー・ギャレットの奥底ですでに流れていた「ザ・ケニー・ギャレット・ミュージック」が，たまたま今回のタイミングで“顔を出しただけ”だと思えてきた。
そう。『ビヨンド・ザ・ウォール』は，従来のケニー・ギャレットの延長線上に位置するアルバムであり“出るべくして出た”アルバムである。アンサンブルの一音一音にケニー・ギャレットの２つの個性が刻まれている。
中国旅行でインスパイアされた『ビヨンド・ザ・ウォール』とあって，悠久なる中国４０００年の音楽の響きがアルバムの至るところに散りばめられている。
エキゾチックでオリエンタルな雰囲気をアメリカンなジャズと見事に融合できたのも，大の日本贔屓あってのこと！ ケニー・ギャレットの日本愛はキャリアと密度が違います。
『ビヨンド・ザ・ウォール』は，お経のヴォイス，声楽のサンプリングや二胡などの「物理的要素」でもモロ中国を感じるのだが，管理人が『ビヨンド・ザ・ウォール』に中国を感じるのは「物理的要素」以上に「精神性」の部分である。
ここでジョン・コルトレーンの代名詞である「精神性」である。『ビヨンド・ザ・ウォール』でのジョン・コルトレーンと来れば「物理的要素」ではファラオ・サンダースの存在がシンボル的で分かりやすい。意思を同じくすると思われるこの２人のフロントが，思いの外「静かに」ジョン・コルトレーン愛を奏でている。
ジョン・コルトレーンの場合の「精神性」とはインド音楽だったが，ケニー・ギャレットの場合は，日本というフィルターを通して聞いた中国民族音楽。ゆったりと太極拳風の動きで音楽が静止する「精神性」。『至上の愛』よろしく，中国民族音楽の“スピリチュアル”とも言える「静かに聴かせる」部分にすっかり魅了されてしまったのだろう。
ただしケニー・ギャレットの感じた，中国民族音楽の“スピリチュアル”とは一般的な内省表現寄りではなく，明るくポップな“スピリチュアル”！
かつてケニー・ギャレットがジョン・コルトレーンへ捧げた『ＴＲＩＯＬＯＧＹ』『ＰＵＲＳＵＡＮＣＥ』の暗く厳しい雰囲気とは全くもって異なっている。だ〜って『ビヨンド・ザ・ウォール』はインドではなく，日本であり，上り調子の中国大陸なんだもん。
ＬＥＴ’Ｓ楽しい中国旅行。ＬＥＴ’Ｓ楽しいジョン・コルトレーン・チルドレン。万里の長城を超えていくヒューマンなケニー・ギャレットの音楽が大大大好き。
01. CALLING
02. BEYOND THE WALL
03. QING WEN
04. REALIZATION (MARCHING TOWARDS THE LIGHT)
05. TSUNAMI SONG
06. KISS TO THE SKIES
07. NOW
08. GWOKA
09. MAY PEACE BE UPON THEM
KENNY GARRETT : Alto Saxophone
PHARAOH SANDERS : Tenor Saxophone
BOBBY HUTCHERSON : Vibes
MULGREW MILLER : Piano
ROBERT HURST, III : Bass
BRIAN BRADE : Drums
RUGGERIO BOCCATO : Percussion
GUOWEI WANG : Erhu
JONATHAN GANDELSMAN : Violin
NEIL HUMPHREY : Cello
SUSAN JOLLES : Harp
NEDELKA ECHOLS : Vocals
GENEA CAVENESS : Vocals
KEVIN WHEATHLEY : Vocals
ARLENE LEWIS : Vocals
GEOVANTI STEWARD : Vocals
DAWN CAVENESS : Vocals
（ノンサッチ／NONESUCH 2006年発売／WPCR-12577）
（ライナーノーツ／稲岡邦弥，ケニー・ギャレット，ボビー・ハッチャーソン，ファラオ・サンダース，マルグリュー・ミラー，ロバート・ハースト�掘ぅ屮薀ぅ▲鵝Ε屮譽ぅ鼻�
（ライナーノーツ／稲岡邦弥，ケニー・ギャレット，ボビー・ハッチャーソン，ファラオ・サンダース，マルグリュー・ミラー，ロバート・ハースト�掘ぅ屮薀ぅ▲鵝Ε屮譽ぅ鼻�
アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION
ソロモンの歌8章 私は城壁
ビル・エヴァンス 『モントゥルー II』
