この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 48 - Best Jazz Instrumental Album, Individual or Group ; Sonny, PleaseSonny Rollins

 
SONNY, PLEASE-1 『PARIS CONCERT』を聴いてキース・ジャレットに「推し変」するまでは,管理人のイチ推しはソニー・ロリンズだった。
 その頃の空気感としては「えっ,今更ソニー・ロリンズなんて…」と小馬鹿にされたこともあったのだが,頑なにソニー・ロリンズを推してきた。

 だがそんな管理人をして『SONNY,PLEASE』(以下『ソニー・プリーズ』)がグラミー受賞・ノミネート作に選ばれた時には,やらせか,忖度か,と思ってしまった。グラミー賞もレコード大賞と変わらない,と思ってしまった。
 ビッグネームを入れるにしても,昨年も『ウィザウト・ア・ソング(9.11コンサート)』でグラミー・ノミネートに選ばれたソニー・ロリンズを2年連続で選ぶとは…。

 だがそれは間違いであった。グラミー賞にはやらせもなければ忖度もなかった。ソニー・ロリンズの“らしさ”が十分にして新鮮味まで感じられる『ソニー・プリーズ』は,近年のソニー・ロリンズでは一番の秀作であった。
 そう。『ソニー・プリーズ』は,ソニー・ロリンズが“実力で勝ち取った”グラミー・ノミネート作である。

 1曲目の【SONNY,PLEASE】なんて,新世代のジャズである。音色はソニー・ロリンズなのだが,フレージングが“攻めまくりのアウトしまくり”の連続で,まるで別人のような演奏である。意識的にハードにドライブしてみせたら,予想以上にアグレッシブにふかしすぎた感じのトラックが相当いい。
 絶好調なのだろう。気迫に圧倒されるインプロヴィゼーションのショーケースが完成されている。曲調的には以前と特段変わりないのにソニー・ロリンズのフレージングがマグマのエネルギーに満ち満ちていて新鮮に響く。大興奮のテナーサックスが“爽やかな”印象なのが相当いい。

 そしてピアノレスでギター入りの意図が伝わってくるバンド・サウンドがこれまたいい。スティーヴ・ジョーダンドラミングにリズミックなギターが入ると4ビートなのに独特の色彩感が浮かんできて,ピアノレスで映えるテナーサックスに更なる勢いをつけている。これってカリスマ・ヴォーカリスト率いるグループ・エクスプレッションに通ずるバンド・サウンドだと思う。

SONNY, PLEASE-2 ソニー・ロリンズの場合,天才ゆえの宿命なのか,生涯の相棒と呼べるのはベースボブ・クランショウくらいなもので,自らのレギュラー・バンドを率いたこともないソニー・ロリンズとしては,バンドっぽい『ソニー・プリーズ』のレコーディングは初めての経験だと思う。

 尤も『ソニー・プリーズ』のレコーディング・メンバーとは,最後のジャパン・ツアーを回ったメンバーのようでワールド・ツアー終わりのタイミングでスタジオ入り。ソニー・ロリンズにとっても実に6年振りとなるオリジナル・アルバムのレコーディングである。
 この6年の間に「9.11」を経験したし愛妻の死も経験した。これまでずっと“孤高の天才”でやってきたソニー・ロリンズが,人生で初めて「ホーム」を求めた結果が,乗りに乗りまくった『ソニー・プリーズ』完成のいきさつなのだろう。

 こんなにも「激変した」ソニー・ロリンズを聴いたのはソニー・ロリンズ・マニアの管理人をして初めての経験である。あっ,インパルス時代とかも雑誌でソニー・ロリンズの「激変」と書かれていましたねっ。
 ワンマンでマンネリなのに周りに影響されやすい?ソニー・ロリンズさん。今回はもうしばらくグループ・エクスプレッション路線での“カリスマ・アナーキー・アウト・テナー”の道を探ってみてくださいね。「お願い,ソニー・ロリンズ」さん → 『ソニー・プリーズ』!

 
01. Sonny, Please
02. Someday I'll Find You
03. Nishi
04. Stairway to the Stars
05. Remembering Tommy
06. Serenade
07. Park Palace Parade

 
SONNY ROLLINS : Tenor Saxophone
CLIFTON ANDERSON : Trombone
BOBY BROOM : Guitar
BOB CRANSHAW : Electric Bass, Acoustic Bass
STEVE JORDAN : Drums
KIMATI DINIZULU : Percussion
JOE CORSELLO : Drums

(ドキシー/DOXY 2006発売/VICJ-61396)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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デヴィッド・サンボーン 『ストレイト・トゥ・ザ・ハート