
しかし個性派の宿命であろうが,実際にJ.R.モンテローズの演奏を聴こうとなるとなかなかその機会を見つけるのが難しい。個性際立つジャズメンとは,ハマル演奏にはハマルのだが,サイドメンとしてはリーダーを喰ってしまう場合があるので使い難いように思う。
リーダー・アルバムはどうかと言うと,これまた一般受けするタイプではないゆえに,管理人の2000枚のコレクションの中でもブルーノート盤の『J.R.MONTEROSE』1枚のみである。
ゆえにJ.R.モンテローズを聴こうとなると『J.R.MONTEROSE』を何回も聴くことになるのだが,この状況が個人的には好都合だった。
なぜなら『J.R.MONTEROSE』には,J.R.モンテローズのユニークな個性,例えば,固くて少しいぶされた感じの深い音色,メロディーの歌わせ方,フレーズをブツ切れにする独得なトーン,唯一無二の節回しの間と起伏に富んだ演奏といった魅力は勿論のこと,J.R.モンテローズの最大の個性である「白人なのに黒」が刻み込まれているからだ。
『J.R.MONTEROSE』の共演者は,トランペットのアイラ・サリヴァン,ピアノのホレス・シルヴァー,ベースのウィルバー・ウエア,ドラムのフィリー・ジョー・ジョーンズの面々である。メンバー全員が黒人であるだけでなく,メンバー全員が「黒っぽい演奏」で知られた「黒」集団である。
そんな面々に囲まれたJ.R.モンテローズのテナー・サックスが最高にアーシー! 5人の中でも1番に黒い!
ゆえに管理人は『J.R.MONTEROSE』を繰り返し聴くことで,ジャズにおける「黒」とは何かを学んだ。
そう。ジャズにおける「黒」とは,人種や出身地そのものを指すのではなく,演奏のアーシーなノリを指すことを身を持って体感できた。
この実際に耳から得た情報は活字で知ることの何十倍もの価値がある。「黒」とは何かを正確に判別できる耳を持てたことは,ジャズを生涯楽しむための極めて貴重な財産になったとか心から感謝している。

この点が『J.R.MONTEROSE』の成功のカギだと思うのだが,J.R.モンテローズの「黒々」とはアイラ・サリヴァンとの「相乗効果」によるところが大きいように思う。
アイラ・サリヴァンもまたJ.R.モンテローズと同傾向の個性派トランペッターである。普段はライトな演奏が多く,個人的にはブルーノートというよりもECM的なトランペットを吹いた,時代先取りだから時代に浮いたトランペッターなのだが『J.R.MONTEROSE』では,この2人が揃って「黒」を向いたことで自分1人では絶対に出せなかった,自分の中の「黒」がいつも以上に飛び出しているように思う。ゴリゴリに尖がっていてコクがある「黒」なのだ。
『J.R.MONTEROSE』はJ.R.モンテローズとアイラ・サリヴァンが「自分の中のかつてない黒」に真っ直ぐに向かっているので,中々一筋縄ではいかないところがある。聴き手が予測する展開を拒むかのような蛇行したフレーズを織り交ぜてくる。
それでも管理人のようにジャズにおける「黒」が何たるかを知りたいのであれば,そんなテナー・サックスとトランペットを一心不乱に追いかけてほしい。『J.R.MONTEROSE』の「黒」には,真のジャズ・ファンを魅了する中毒性がある。
01. WEE-JAY
02. THE THIRD
03. BOBBIE PIN
04. MARC V
05. KA-LINK
06. BEAUTEOUS
IRA SULLIVAN : Trumpet
J.R. MONTEROSE : Tenor Sax
HORACE SILVER : Piano
WILBUR WARE : Bass
"PHILLY" JOE JONES : Drums
(ブルーノート/BLUE NOTE 1956年発売/TOCJ-9044)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,小川隆夫)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/レナード・フェザー,小川隆夫)
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