この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。
「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。
なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
『PILGRIMAGE』(以下『聖地への旅』)は,マイケル・ブレッカーの遺作である。
マイケル・ブレッカーの場合は突発的な死ではない。即ち,これが最期かも?という自覚がある中でのレコーディングであった。そんなマイケル・ブレッカーの心境について思い巡らしてみると『聖地への旅』こそが,マイケル・ブレッカーの音楽であって「本当に心の底から演りたかった」音楽なのだと結論する。
ゆえに管理人は,病に倒れた渦中でのレコーディングにあって,テクニカルな面ではベストではないにしても,それを補って余りある,気迫に満ちた演奏姿勢に『聖地への旅』をマイケル・ブレッカーの“最高傑作”と断言しよう。
ズバリ『聖地への旅』にはマイケル・ブレッカーが「命を削って記録した」最高のテナー・サックスが鳴っている。
『聖地への旅』は,全曲マイケル・ブレッカーのオリジナルなのだが,自分の我を丸出しにした難解な曲調が多く,メロディアスよりもマイケル・ブレッカーがインプロヴィゼーションするためのアルバムである。
とりわけハーモニーとビートがかなり複雑なようで,結果,スコアを作り込み過ぎたせいなのかメンバーが「必死に譜面を追いかけているような」部分があって,聴いているこちらまでも「譜面を追いかけているような」妙なゾーンに入ってしまう。『聖地への旅』は,共演メンバーだけでなくリスナーさえも緊張を強いられるアルバムである。
管理人の“アイドル”ギターのパット・メセニーでさえ厳しい本気の演奏を聴かせているのだから,ピアノのハービー・ハンコック,ピアノのブラッド・メルドー,ベースのジョン・パティトゥッチ,ドラムのジャック・デジョネットも,最後だから手加減するのは失礼とばかりの大熱演。
共演メンバーの5人全員が,結果としてマイケル・ブレッカーを「喰ってしまう」ことになろうとも,逆にマイケル・ブレッカーに「喰われる」ことになろうとも,全てを覚悟の上でマイケル・ブレッカーの“超絶技巧”に必死に喰らいついては「命の音」をぶつけている。
マイケル・ブレッカーにしても,パット・メセニーにしても,ラスト・レコーディングのセンチメンタリズムに堕することなく,むしろストイックに最高の演奏を目指している。抑制された余韻でそれこそ神々しい美を醸し出している。
ただしマイケル・ブレッカーのテナー・サックスだけは「毛色」が違う。体調の悪さに耐えながらストイックにテナー・サックスの鳴りを追求していることに違いはないが,悲壮感が漂うことはなく,むしろ生に対する執着心や演奏できることの喜びといったものがヒシヒシと感じられる。
正直,これまでのマイケル・ブレッカーは非常に流暢で音がかすれたりつっかえたり言いよどんだり,そういう部分が一切ない完璧な演奏ばかりであって,エモーショナルで心を動かされというのとは別物だった。すでに脳内で「録音」したものを「再生」してるような印象があった。
しかし病気のせいでそんな「完璧主義」が薄らいでいる。演奏できることの幸福感が先に来ている。その上で自分の音楽を心底楽しめるようになっている。最後のレコーディングで「完全燃焼」できたのは幸せなことだと思う。
テナー・サックスを操るテクニックの問題ではなく,もっと別の音楽的な部分で,じつは非常に不器用かつ自分の流儀を曲げない頑固なミュージシャンであったマイケル・ブレッカー。
『聖地への旅』は,そんなマイケル・ブレッカーに欠けていたミュージシャン・シップのラスト・ピースが補完され,完全無欠でますます前進したことを感じさせてくれる。
『聖地への旅』は,テナー・サックスの新しい時代を切り開いた偉大な天才の,最後を飾るにふさわしい名盤である。
01. The Mean Time
02. Five Months from Midnight
03. Anagram
04. Tumbleweed
05. When Can I Kiss You Again?
06. Cardinal Rule
07. Half Moon Lane
08. Loose Threads
09. Pilgrimage
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
PAT METHENY : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BRAD MEHLDAU : Piano
JOHN PATITUCCI : Bass
JACK DeJOHNETTE : Drums
マルコ6章 12人が奉仕の指示を受ける
菊地成孔 X コンボピアノ 『10ミニッツ・オールダー』
「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。
なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
Category 47 - Best Jazz Instrumental Solo ; Michael Brecker, soloist / Track from : Pilgrimage
Category 48 - Best Jazz Instrumental Album, Individual or Group ; Pilgrimage / Michael Brecker

マイケル・ブレッカーの場合は突発的な死ではない。即ち,これが最期かも?という自覚がある中でのレコーディングであった。そんなマイケル・ブレッカーの心境について思い巡らしてみると『聖地への旅』こそが,マイケル・ブレッカーの音楽であって「本当に心の底から演りたかった」音楽なのだと結論する。
ゆえに管理人は,病に倒れた渦中でのレコーディングにあって,テクニカルな面ではベストではないにしても,それを補って余りある,気迫に満ちた演奏姿勢に『聖地への旅』をマイケル・ブレッカーの“最高傑作”と断言しよう。
ズバリ『聖地への旅』にはマイケル・ブレッカーが「命を削って記録した」最高のテナー・サックスが鳴っている。
『聖地への旅』は,全曲マイケル・ブレッカーのオリジナルなのだが,自分の我を丸出しにした難解な曲調が多く,メロディアスよりもマイケル・ブレッカーがインプロヴィゼーションするためのアルバムである。
とりわけハーモニーとビートがかなり複雑なようで,結果,スコアを作り込み過ぎたせいなのかメンバーが「必死に譜面を追いかけているような」部分があって,聴いているこちらまでも「譜面を追いかけているような」妙なゾーンに入ってしまう。『聖地への旅』は,共演メンバーだけでなくリスナーさえも緊張を強いられるアルバムである。
管理人の“アイドル”ギターのパット・メセニーでさえ厳しい本気の演奏を聴かせているのだから,ピアノのハービー・ハンコック,ピアノのブラッド・メルドー,ベースのジョン・パティトゥッチ,ドラムのジャック・デジョネットも,最後だから手加減するのは失礼とばかりの大熱演。
共演メンバーの5人全員が,結果としてマイケル・ブレッカーを「喰ってしまう」ことになろうとも,逆にマイケル・ブレッカーに「喰われる」ことになろうとも,全てを覚悟の上でマイケル・ブレッカーの“超絶技巧”に必死に喰らいついては「命の音」をぶつけている。
マイケル・ブレッカーにしても,パット・メセニーにしても,ラスト・レコーディングのセンチメンタリズムに堕することなく,むしろストイックに最高の演奏を目指している。抑制された余韻でそれこそ神々しい美を醸し出している。

正直,これまでのマイケル・ブレッカーは非常に流暢で音がかすれたりつっかえたり言いよどんだり,そういう部分が一切ない完璧な演奏ばかりであって,エモーショナルで心を動かされというのとは別物だった。すでに脳内で「録音」したものを「再生」してるような印象があった。
しかし病気のせいでそんな「完璧主義」が薄らいでいる。演奏できることの幸福感が先に来ている。その上で自分の音楽を心底楽しめるようになっている。最後のレコーディングで「完全燃焼」できたのは幸せなことだと思う。
テナー・サックスを操るテクニックの問題ではなく,もっと別の音楽的な部分で,じつは非常に不器用かつ自分の流儀を曲げない頑固なミュージシャンであったマイケル・ブレッカー。
『聖地への旅』は,そんなマイケル・ブレッカーに欠けていたミュージシャン・シップのラスト・ピースが補完され,完全無欠でますます前進したことを感じさせてくれる。
『聖地への旅』は,テナー・サックスの新しい時代を切り開いた偉大な天才の,最後を飾るにふさわしい名盤である。
01. The Mean Time
02. Five Months from Midnight
03. Anagram
04. Tumbleweed
05. When Can I Kiss You Again?
06. Cardinal Rule
07. Half Moon Lane
08. Loose Threads
09. Pilgrimage
MICHAEL BRECKER : Tenor Saxophone
PAT METHENY : Guitar
HERBIE HANCOCK : Piano
BRAD MEHLDAU : Piano
JOHN PATITUCCI : Bass
JACK DeJOHNETTE : Drums
(エマーシー/WA RECORD 2007年発売/UCCM-1116)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)
(ライナーノーツ/中川ヨウ)
マルコ6章 12人が奉仕の指示を受ける
菊地成孔 X コンボピアノ 『10ミニッツ・オールダー』