AL HAIG QUARTET-1 「白人バップ・ピアニスト」の最高峰,それがアル・ヘイグである。この言葉はジャズ・ピアノの通説であり,この言葉に異論などない。

 それなのに実際のアル・ヘイグの評価が余りにも低い。バド・パウエルセロニアス・モンクに次ぐ,バップ・ピアニストの3番手をアーテ・テイタムと争う立場の実力者だというのに,上の2人とはとんでもなく大きな差が開いている。
 大のアル・ヘイグ・ファンとしては,3馬身差などついていないはずなのに上の2人に大差で負けてしまったかのような扱いに納得がいかない。アル・ヘイグを贔屓していたチャーリー・パーカーも同じ思いでいるはずである?

 思うにアル・ヘイグへの低評価は「伝説になれなかった」ことに起因すると思う。アル・ヘイグは60年代に引退した後,70年代に復帰したからなぁ。そして復帰後のスタイルが50年代のアル・ヘイグではなくなって,70年代のアル・ヘイグ・ニュー・スタイルだったからなぁ。
 管理人もアル・ヘイグと接したのは『INVITATION』が最初だったので,まさか50年代のアル・ヘイグが,こんなにもロマンティックしていたなんて想像もしていなかったもんなぁ。

 ズバリ,50年代のアル・ヘイグのロマンティストぶりを知ってしまったら「バド・パウエルなんて目じゃない」と本気で思ってしまうから!
 バド・パウエルセロニアス・モンクからの影響を逃れたビル・エヴァンスの元ネタはアル・ヘイグにあると本気で思ってしまうから!

 そんな50年代の“ロマンティック・アル・ヘイグ”の“最高傑作”が『AL HAIG QUARTET』(以下『アル・ヘイグ・カルテット』)である。
 テンポはジャストでメロディーを崩さず,コロコロ・ピアノでアクセントを付けることのできる“超絶技巧”。1曲の演奏時間が短いのが好印象な数少ないジャズピアノである。

 50年代のアル・ヘイグのアルバムはそのどれもが最高に素晴らしい。50年代のアル・ヘイグ名盤群の多くがビル・エヴァンスの元ネタの所以でもあるピアノ・トリオ作ばかりなのだが,唯一の例外が『アル・ヘイグ・カルテット』である。

AL HAIG QUARTET-2 ピアノベースドラムギターが加わったカルテット編成のアル・ヘイグトリオが,ピアノ・トリオ以上に“ロマンティック・アル・ヘイグ”を引き出してくれている。
 そう。ピアノベースドラムアル・ヘイグトリオの甘味の中に,ギターという“隠し味”が入ることでアル・ヘイグトリオ本来の甘みが何倍にも引き立っている。

 いや〜,『アル・ヘイグ・カルテット』に出会ってしまってからというもの,定番のピアノ・トリオには見向きもせず,管楽器入りのアル・ヘイグを漁っては「ギター入りの二匹目のドジョウ」を狙ってしまう悪循環のループにドツボ。

 3連敗ぐらいで止めときゃ良かったのに,今では10枚以上所有するアル・ヘイグの“変則コレクター”になりました!

 
01. Sweet Lorraine
02. Tea for two
03. You go to my head
04. You stepped out of a dream
05. Undecided
06. The man I love
07. Woodyn' you
08. Stella by starlight
09. Someone to watch over me

 
AL HAIG : Piano
BENNY WEEKS : Guitar
PHIL BROWN : Drum
TEDDY KOTICK : Bass

(ピリオド/PERIOD 1954年発売/TKCZ-79501)
(サンプル盤)
(ライナーノーツ/寺島靖国)

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使徒の活動28章 マルタ島に着く
MALTA 『サファイア