『ＡＬ　ＨＡＩＧ　ＱＵＡＲＴＥＴ』の４曲目は【ＹＯＵ　ＳＴＥＰＰＥＤ　ＯＵＴ　ＯＦ　Ａ　ＤＲＥＡＭ】（以下【夢からさめて】）。

　【夢からさめて】でのアル・ヘイグのジャズ・ピアノは，前後に押したり引いたり，左右にいなしたりの凄テクで聴く者の心を揺さぶりつつ，それでいて美メロをきちんと伝えてくる。

　【夢からさめて】の演奏では，Ａメロのテーマが繰り返し出てくるのだが，アル・ヘイグはその全てでバリエーションを変えてくる。
　９秒からの１回目はややブツ切で止めている。２８秒からの２回目は更に音を減らしてフレーズを弾き切らない。１分２３秒からの３回目はアタックした後はモールス信号的な放置少女。１分４１秒からの４回目は流れに乗った「流しの弾き語り」のようであり，１分５９秒からの５回目は計４回を総括する「正統派の」アドリブ・タッチ。２分１８秒からの６回目はテーマに沿った華やかな和音を付けて，そのまま最後のアウトロへと結び付けていく。

　これぞ有名ヴォーカル・ナンバーを，ミディアム調にリアレンジしてピアノで歌わせる“ジャズ・ピアニスト”アル・ヘイグの真骨頂。
　ヴォーカル・ナンバーの間奏部分をテディ・コティックのベース・ソロに委ねて，計６回の山場を作って聴かせた「起承転結」の構成美が素晴らしい。

 
AL HAIG : Piano
BENNY WEEKS : Guitar
PHIL BROWN : Drum
TEDDY KOTICK : Bass

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伊東たけし　『スケア・ヘッドライン』