
しかし『I’M STILL HERE』を聴いて,北川潔は確かに北川潔ではなく「キヨシ・キタガワ」なのだと思った。
そう。『I’M STILL HERE』には「世界のキヨシ・キタガワ」が君臨している。
北川潔のベースは小曽根真,ケニー・ギャレット,ケニー・バロン等の演奏で何度も聴いてきたのだが,北川潔のソロ名義のアルバムを聴くのは『I’M STILL HERE』が初めてである。
『I’M STILL HERE』を聴いて驚いた。それは北川潔のベースの演奏についてではない。北川潔・オリジナルの音楽観が最高に素晴らしい。
全曲北川潔のオリジナルを収録した『I’M STILL HERE』を聴いて北川潔がクリスチャン・マクブライドやジョン・パティトゥッチと並び称される理由が理解できたし,尊敬の念が芽生えた。
ドラムのブライアン・ブレイドとピアノのダニー・グリセットと組んだキヨシ・キタガワ・トリオは,ピアノ・トリオと呼ぶよりもベース・トリオと呼ぶべきトリオである。
そう。『I’M STILL HERE』で北川潔が聴かせるのは,ドラムとピアノと有機的に絡みつく“ベースの響き”である。
個人的に北川潔のハイライトとは,ベース・ソロよりも3人で音を鳴らしている時に,耳に飛び込んでくるスケールの大きなウォーキング・ベースである。それでいてピアノを下支えするフレーズがドンピシャリでダニー・グリセットの描く音世界に力感を与えている。

ブライアン・ブレイドの鋭く切り込んだドラミングから,ブライアン・ブレイドがベース・トリオ・スタイルを心底楽しんでいる様子が伝わってくる。
ダニー・グリセットを走らせて北川潔に先回りされ追い込まれた感じの時間帯があるのだが,そこは“天才”ブライアン・ブレイド。硬派なメロディーを瞬時の判断で叩き分けるドラミングの躍動感は流石である。
「世界のキヨシ・キタガワ」が君臨する『I’M STILL HERE』は,ベース・トリオ・フォーマットだから“フィーチャリング”することができた,ダニー・グリセットのピアノとブライアン・ブレイドのドラムが楽しめる名盤である。
北川潔は「キヨシ・キタガワ」。かくしてダニー・グリセットとブライアン・ブレイドが「キヨシ・キタガワ・カラー」に染まっている。
01. KG
02. SHORT STORY
03. CIAO, CIAO
04. ANOTHER PRAYER
05. TOMORROW
06. INNOCENT MISTAKE
07. I'M STILL HERE
KIYOSHI KITAGAWA : Bass
DANNY GRISSETT : Piano
BRIAN BLADE : Drums
(澤野工房/ATELIER SAWANO 2007年発売/AS071)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/足立豪樹)
(デジパック仕様)
(ライナーノーツ/足立豪樹)
コリント第二13章 正され,同じ考え方をする
NANIWA EXPRESS 『FIRST FINAL 1986 〜伝説の86年バナナホール解散LIVE!〜』