
あぁ,青春のウェザー・リポート,あぁ,青春のウェイン・ショーター…。
大人買いができるようになってからはウェイン・ショーターのCDを集めている。だからマイルス・デイビスのサイドメンだったり,ジャズ・メッセンジャーズの音楽監督だったりしたウェイン・ショーターは全て後追いである。
本当は後追いであっても大発見が幾つもあるものだが,ことウェイン・ショーターに関してはウェザー・リポートがキャリアの頂点なのだから,ブルーノートにしても「黄金のクインテット」にしてもさほど関心は持ち合わせていなかった。
ウェイン・ショーターの2ndソロ・アルバム『WAYNING MOMENTS』(以下『ウェイニング・モーメンツ』)を購入したのも,ウェイン・ショーターのコンプリートを目指すコレクター気質に紙ジャケットでの再発のニュースが突き刺さったから!
実はこんなパターンは結構あって,なにせ所有CDが1000枚を超えたくらいから,アルバム1枚1枚をじっくりと聴き込む時間が取れなくなる(ただし「アドリブログ」ではこれをやり遂げるのが目標です。強制的にアルバム1枚1枚と向き合うためのモード作りだったりするのです)。
軽い気持ちで聴き始めた『ウェイニング・モーメンツ』だったのだが,聴いているうちにある文章を思い出した。
「ジャズ批評」の99号,p54−61に都並清史氏による「ショーターを必要とした,または必要とされたトランペッターたち」という記事がある。その記事の中で強く主張されているのが,ウェイン・ショーターとフレディ・ハバードの相性の良さ,であった。
「ジャズ批評」を読んだ時は「そういう意見もある」程度にしか思わなかったが,知識としてはインパクトがあったので覚えていた。確かに『V.S.O.P.』は,ウェイン・ショーターとフレディ・ハバードの組み合わせであったし,あのマイルス・デイビスを「一世代前のトランペッター」として断罪し,ウェイン・ショーターのパートナーには似つかわしくない,と断罪していた。マイルス・デイビス好きとしては,複雑な思いがして納得いっていなかったのだろう。
そんな心の“引っ掛かり”が『ウェイニング・モーメンツ』での,ウェイン・ショーターを「喰い尽くす」フレディ・ハバードの超絶トランペットと共に記憶の中から浮き上がってきた!
何の変哲もない,ごくごく普通のハード・バップを演奏しているだけなのに,ウェイン・ショーターのテナー・サックスが伸びやかにドライブしている。こんなウェイン・ショーターを久しぶりに聴いた気分がする。これまでに聴いたことがあるとすれば,ジャズ・メッセンジャーズの『MOSAIC』『3 BLIND MICE』の姉妹盤か,ハービー・ハンコックの『V.S.O.P.』ぐらいなもの?
そう。今となっては都並清史氏の主張に全面的に同意できる。ウェイン・ショーターの最強の相棒はフレディ・ハバードで決まりである。

加えて2拍子に近い単純なリズムや3〜5分の曲を連ねていくアルバム構成は“親分”アート・ブレイキーの眼が光るジャズ・メッセンジャーズでは絶対に試すことができない。
音楽監督として手腕を振るうジャズ・メッセンジャーズでの「うっぷん&消化不良」を解消する,ゴリゴリのハード・バップがいいではないか!
『ウェイニング・モーメンツ』での,無駄を廃したシンプルなテナー・サックスが実に力強い。絶好調のウェイン・ショーターの快進撃。マイルス・バンド加入前の,純真だった頃の(不良の世界に引きずり込まれる前の)ウェイン・ショーターもこれはこれで普通にかっこいいじゃん!
なお再発盤の『ウェイニング・モーメンツ』はオリジナルの全6曲の別テイクが入った16曲入り。構築の美学とも言うべきサウンドをクリエイトするウェイン・ショーターなのだから,別テイクであっても音風景が一変することはない。
ウェイン・ショーターのあの音,ウェイン・ショーターのあの独特のフレージングが余分に聴ける幸福感! 素晴らしいぞ!
最後に『ウェイニング・モーメンツ』のピアニストは“VENUSの看板”エディ・ヒギンズ。ウェイン・ショーターに見出されたエディ・ヒギンズを色眼鏡で見るのは間違いだということです。
01. BLACK ORPHEUS
02. DEVIL'S ISLAND
03. MOON OF MANAKOORA
04. DEAD END
05. WAYNING MOMENTS
06. POWDER KEG
07. ALL OR NOTHING AT ALL
08. CALLAWAY WENT THAT-A-WAY
09. BLACK ORPHEUS (TAKE-3)
10. DEVIL'S ISLAND (TAKE-1)
11. MOON OF MANAKOORA (TAKE-1)
12. DEAD END (TAKE-7)
13. WAYNING MOMENTS (TAKE-3)
14. POWDER KEG (TAKE-1)
15. ALL OR NOTHING AT ALL (TAKE-2)
16. CALLAWAY WENT THAT-A-WAY (TAKE-1)
WAYNE SHORTER : Tenor Saxophone
FREDDIE HUBBARD : Trumpet
EDDIE HIGGINS : Piano
JYMIE MERRITT : Bass
MARSHALL TOMPSON : Drums
(ヴィー・ジェイ/VEE JAY 1962年発売/BSCP-30054)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ドン・ゴールド,瀧口大由記)
(紙ジャケット仕様)
(ライナーノーツ/ドン・ゴールド,瀧口大由記)
テモテ第一1章 偽りを教える人たちに対する警告
フレディ・レッド 『シェイズ・オブ・レッド』