『PLAYS BACH DISC 1』の2曲目は【AIR ON THE G STRING】(以下【G線上のアリア】)。

 「ジャズとクラシックの融合」の“お手本”的なトラックが【G線上のアリア】である。

 【G線上のアリア】の美メロはそのままに,曲の世界観を一新させるのがテンポとハーモニーの処理にある。そしてジャック・ルーシェは,テンポとハーモニーをジャズ化するために,1台のピアノではなく3人が連動するピアノ・トリオで表現している。

 例えば,クラシックの世界からジャズの世界へと急転させる,1分55秒からと2分41秒のサビの部分は,バッハ作曲の【G線上のアリア】では有り得ない,ジャック・ルーシェ・オリジナルな【G線上のアリア】に仕上がっている。

 クラシックの連綿とした流れの中で,メロディーとハーモニーの様式美と対を成す,ジャズ的なスパイスやエッセンスが,音楽本来が有する“遊び”の部分を引き延ばしている。

 ジャック・ルーシェの凄さ際立つ【G線上のアリア】であるが,ジャック・ルーシェの何がそんなに凄いのか? それは“原曲の崩し”にあるわけではなくピアノ・トリオの凄まじい一体感であろう。
 ベースドラムピアノに追いつき,追い越す瞬間の楽しさをジャック・ルーシェは完璧に熟知している。

 
JACQUES LOUSSIER : Piano
VINCENT CHARBONNIER : Bass
ANDRE ARPINO : Drums

PLAYS BACH-1
Plays Bach
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山本英次 『トゥーファツィオリ