ジャズとは「夜の音楽」である。(実際にはそんなことなどないのだが)イメージとしては「夜の音楽」である。全てはマイルス・デイビスが【ラウンド・ミッドナイト】で強引に「夜の音楽」を決定付けた歴史による。
だから個人的には,ジャズとはリスニングするものだから,TVのゴールデンタイムに聴くことが多いのだが,お酒を嗜みながら聞いたりすることもある。そんな時間は雰囲気重視。そうなると手が伸びるのは,馴染みのアルバムが多くなる。スタンリー・タレンタイン・ウィズ・ザ・スリー・サウンズの『BLUE HOUR』(以下『ブルー・アワー』)はそんな1枚である。
『ブルー・アワー』は,1人でゆったりとくつろいでも良し。誰かとジャズ・バーのイメージ通りに,ビール,カクテル,ウイスキー,ブランデーを飲みながら楽しい会話のBGMとして流すのも良し。正しく,ジャズとは「夜の音楽」,を地で行った名盤である。
『ブルー・アワー』が流れ出すや否や,その場は一瞬で「大人の時間」に早変わり。ムードムンムンな「大人の時間」が静かに流れ始める構図…。
『ブルー・アワー』は,スタンリー・タレンタイン&ザ・スリー・サウンズの共演盤。実力者4人の共演盤なのだからごく普通に演奏しただけで,即名盤誕生,となったことだろう。
しかし『ブルー・アワー』を語るとすれば,実力者4人による演奏の質以上に重要なファクターがある。
ただ単純に男性的で音色の深いサックス奏者がリードを取ったわけではない。ソウルフルで野太いテナーのスタンリー・タレンタインが吹いている。ただ単純にジーン・ハリスがピアノを弾いたのではない。ザ・スリー・サウンズとして3人が機能して初めて成立する,あのブルージーでファンキーなピアノ・トリオがリズム・セクションを請け負っている。これこそが最重要なファクターである。
『ブルー・アワー』の「丑三つ時」な「漆黒の青」である。『ブルー・アワー』のジャケット写真の「漆黒の青」である。ジャズとは「夜の音楽」を地で行く「漆黒の青」な音楽である。
『ブルー・アワー』の濃紺の深い色味をイメージさせる音楽。そんな企画者が「イメージを完璧に形に出来る」最適なキャラクターを集めたのが『ブルー・アワー』である。
そう。『ブルー・アワー』のハイライトとは,スタンリー・タレンタイン&ザ・スリー・サウンズの「組み合わせの妙」。ここに尽きる。
『ブルー・アワー』とは,やれスタンリー・タレンタインが素晴らしいとか,やれザ・スリー・サウンズが素晴らしいなどと,単体のジャズの資質で語られるべきジャズではない。
ジャズとは「夜の音楽」というイメージに則った,ブルーノートの商業音楽であり,アルフレッド・ライオンによる企画盤としての性質について語られるべきジャズ・アルバムである。
もしやこれは企画者の想像以上に「漆黒の青」をしたジャズなのかもしれない。スタンリー・タレンタインとザ・スリー・サウンズの相乗効果がすさまじく,青とブルーの「重ね塗り」が,理想通りの「漆黒の青」を生み出している。
スタンリー・タレンタインの渾身のブロウが映える&映える。少しよそ行きな,しっとりと抑制された控え目なジーン・ハリスのピアノが映える&映える。
「爽快・明快・歯切れ良し」なザ・スリー・サウンズのサウンドとは一線を隠した,少々辛口でブルーなムード満載なバッキングが,タレンタイン効果の表われであるだろうし,スタンリー・タレンタインにしても,ダンディズム溢れる豊穣なブルー一色で空間を染め上げる「風格」とか「懐の深さ」を堪能することができると思う。
事実,アルフレッド・ライオンは『ブルー・アワー』セッションで,都合8トラックをレコーディングしている。そしてその半年前にもスタンリー・タレンタイン・ウィズ・ザ・スリー・サウンズで5トラックをレコーディングしている。その合計13トラックの中から選ばれたのが『ブルー・アワー』収録の5トラックなのである。
選考の基準は明白である。『ブルー・アワー』のイメージに合う「夜の音楽」の典型であるかどうか,である。ブルージーでミディアム〜スロー・テンポでじっくりと聴かせてくれる。
残る未発表の6トラックは2000年になって『BLUE HOUR VOLUME 2』と題してリリースされたが,こちらも聴いた限り決して悪い演奏ではなかった。
そう。『ブルー・アワー』とは,ブルーノート・レーベルの誇りとアルフレッド・ライオンの強いこだわりから誕生した「夜の音楽」である。
こんな「漆黒の青」は,スタンリー・タレンタインのどのアルバムにも,そしてザ・スリー・サウンズのどのアルバムにもなく『ブルー・アワー』の中にしか見つけることができない。
季節はいよいよ秋本番。今年の秋冬もワイン・グラスと『ブルー・アワー』の出番が多くなりそうです。
01. I WANT A LITTLE GIRL
02. THE BABY AIN'T I GOOD TO YOU
03. BLUE RIFF
04. SINCE I FELL FOR YOU
05. WILLOW WEEP FOR ME
STANLEY TURRENTINE : Tenor Saxophone
THE THREE SOUNDS
GENE HARRIS : Piano
ANDREW SIMPKINS : Bass
BILL DOWDY : Drums
ヨハネ第二 訪問の意向とあいさつ
デイヴ・ウェックル 『マスター・プラン』
だから個人的には,ジャズとはリスニングするものだから,TVのゴールデンタイムに聴くことが多いのだが,お酒を嗜みながら聞いたりすることもある。そんな時間は雰囲気重視。そうなると手が伸びるのは,馴染みのアルバムが多くなる。スタンリー・タレンタイン・ウィズ・ザ・スリー・サウンズの『BLUE HOUR』(以下『ブルー・アワー』)はそんな1枚である。
『ブルー・アワー』は,1人でゆったりとくつろいでも良し。誰かとジャズ・バーのイメージ通りに,ビール,カクテル,ウイスキー,ブランデーを飲みながら楽しい会話のBGMとして流すのも良し。正しく,ジャズとは「夜の音楽」,を地で行った名盤である。
『ブルー・アワー』が流れ出すや否や,その場は一瞬で「大人の時間」に早変わり。ムードムンムンな「大人の時間」が静かに流れ始める構図…。
『ブルー・アワー』は,スタンリー・タレンタイン&ザ・スリー・サウンズの共演盤。実力者4人の共演盤なのだからごく普通に演奏しただけで,即名盤誕生,となったことだろう。
しかし『ブルー・アワー』を語るとすれば,実力者4人による演奏の質以上に重要なファクターがある。
ただ単純に男性的で音色の深いサックス奏者がリードを取ったわけではない。ソウルフルで野太いテナーのスタンリー・タレンタインが吹いている。ただ単純にジーン・ハリスがピアノを弾いたのではない。ザ・スリー・サウンズとして3人が機能して初めて成立する,あのブルージーでファンキーなピアノ・トリオがリズム・セクションを請け負っている。これこそが最重要なファクターである。
『ブルー・アワー』の「丑三つ時」な「漆黒の青」である。『ブルー・アワー』のジャケット写真の「漆黒の青」である。ジャズとは「夜の音楽」を地で行く「漆黒の青」な音楽である。
『ブルー・アワー』の濃紺の深い色味をイメージさせる音楽。そんな企画者が「イメージを完璧に形に出来る」最適なキャラクターを集めたのが『ブルー・アワー』である。
そう。『ブルー・アワー』のハイライトとは,スタンリー・タレンタイン&ザ・スリー・サウンズの「組み合わせの妙」。ここに尽きる。
『ブルー・アワー』とは,やれスタンリー・タレンタインが素晴らしいとか,やれザ・スリー・サウンズが素晴らしいなどと,単体のジャズの資質で語られるべきジャズではない。
ジャズとは「夜の音楽」というイメージに則った,ブルーノートの商業音楽であり,アルフレッド・ライオンによる企画盤としての性質について語られるべきジャズ・アルバムである。
もしやこれは企画者の想像以上に「漆黒の青」をしたジャズなのかもしれない。スタンリー・タレンタインとザ・スリー・サウンズの相乗効果がすさまじく,青とブルーの「重ね塗り」が,理想通りの「漆黒の青」を生み出している。
スタンリー・タレンタインの渾身のブロウが映える&映える。少しよそ行きな,しっとりと抑制された控え目なジーン・ハリスのピアノが映える&映える。
「爽快・明快・歯切れ良し」なザ・スリー・サウンズのサウンドとは一線を隠した,少々辛口でブルーなムード満載なバッキングが,タレンタイン効果の表われであるだろうし,スタンリー・タレンタインにしても,ダンディズム溢れる豊穣なブルー一色で空間を染め上げる「風格」とか「懐の深さ」を堪能することができると思う。
事実,アルフレッド・ライオンは『ブルー・アワー』セッションで,都合8トラックをレコーディングしている。そしてその半年前にもスタンリー・タレンタイン・ウィズ・ザ・スリー・サウンズで5トラックをレコーディングしている。その合計13トラックの中から選ばれたのが『ブルー・アワー』収録の5トラックなのである。
選考の基準は明白である。『ブルー・アワー』のイメージに合う「夜の音楽」の典型であるかどうか,である。ブルージーでミディアム〜スロー・テンポでじっくりと聴かせてくれる。
残る未発表の6トラックは2000年になって『BLUE HOUR VOLUME 2』と題してリリースされたが,こちらも聴いた限り決して悪い演奏ではなかった。
そう。『ブルー・アワー』とは,ブルーノート・レーベルの誇りとアルフレッド・ライオンの強いこだわりから誕生した「夜の音楽」である。
こんな「漆黒の青」は,スタンリー・タレンタインのどのアルバムにも,そしてザ・スリー・サウンズのどのアルバムにもなく『ブルー・アワー』の中にしか見つけることができない。
季節はいよいよ秋本番。今年の秋冬もワイン・グラスと『ブルー・アワー』の出番が多くなりそうです。
01. I WANT A LITTLE GIRL
02. THE BABY AIN'T I GOOD TO YOU
03. BLUE RIFF
04. SINCE I FELL FOR YOU
05. WILLOW WEEP FOR ME
STANLEY TURRENTINE : Tenor Saxophone
THE THREE SOUNDS
GENE HARRIS : Piano
ANDREW SIMPKINS : Bass
BILL DOWDY : Drums
(ブルーノート/BLUE NOTE 1961年発売/TOCJ-6523)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
ヨハネ第二 訪問の意向とあいさつ
デイヴ・ウェックル 『マスター・プラン』