AUTUMN LEAVES-1 ジャズ・コレクターを悩ますのが「日本企画盤」の扱いであろう。「日本企画盤」とは日本のレコード会社が「こういう内容と曲目でお願いする」といった感じで,海外のジャズ・ミュージシャンにオファーを出して制作されたアルバムのことである。
 趣旨からして当然ながら日本のジャズ・ファンのニーズをくすぐる内容になるので,一般的には人気盤となるのだが,マニアックなジャズ・ファンは「日本企画盤」を嫌う傾向がある。しかし,虚心坦懐に耳を傾ければ魅力的なアルバムばかりなので,管理人は「日本企画盤」もオリジナル・アルバムの1枚として受け入れている。

 そんな「日本企画盤」の代表格が,ハンク・ジョーンズの「ザ・グレイト・ジャズ・トリオ」とデビッド・マシューズの「マンハッタン・ジャズ・クインテット」であろう。 ← この裏付け理由は「スイングジャーナル主催 ジャズ・ディスク大賞受賞履歴をご参照ください。

 1枚目はイロモノで様子見された部分があった「マンハッタン・ジャズ・クインテット」の人気を不動のものとして確立したのが2枚目の『AUTUMN LEAVES』(以下『枯葉』)であろう。『枯葉』は何と20万枚売り上げたというのだから凄すぎる。
 異例の大ヒットの理由は,スイングジャーナル誌の存在に負うことろが大きいのも事実だが,仮にスイングジャーナルのバックアップがなくても売れたと思わせる,圧倒的な演奏力!

 個人的に「マンハッタン・ジャズ・クインテット」とは「投低打高」で,リーダーでアレンジャーで,今となっては「マンハッタン・ジャズ・クインテット」の全てと言い切れるピアノデビッド・マシューズが絶対的なエースだったのだが,当時のネームバリューだけで考えれば,ピアノデビッド・マシューズトランペットルー・ソロフテナーサックスジョージ・ヤングの3人は,ベースチャーネット・モフェットドラムスティーヴ・ガットのワールド・クラスのリズム隊への“人気あやかりバンド”だと穿った見方をしていたことを覚えている。本当に学がなかった管理人でした。ごめんなさい。

 そうはいいつつ,この「投低打高」で入ったからこそ「マンハッタン・ジャズ・クインテット」の評価が個人的に爆上がりしたのだか,結果的にはこれで良かったと思っている。
 ジャズ・ファンの中に,もはやデビッド・マシューズを下に見る人など誰もいない。同じように「マンハッタン・ジャズ・クインテット」加入時点ですでに「ギル・エヴァンス・マンディ・オーケストラ」を仕切っていたルー・ソロフと,デヴィッド・サンボーン・クラスのスタジオ・ミュージシャンだったジョージ・ヤングへの評価も妥当なものとなったのだが,それもこれも『枯葉』の大成功による部分が大きいと思う。

AUTUMN LEAVES-1 『枯葉』によって「マンハッタン・ジャズ・クインテット」職人5人の実力に人気が追いついてきた。「日本企画盤」発だから,もしかしたら聞こえは良くないのかもしれないが,人気・実力を兼ね備えた「マンハッタン・ジャズ・クインテット」は「ザ・グレイト・ジャズ・トリオ」同様に,真に世界的なスーパー・グループの1つで間違いない。
 そう。「マンハッタン・ジャズ・クインテット」とは「最新の4ビート・ジャズを最新のアレンジで最高峰の演奏力で届けるバンド」である。
 フュージョンで鳴らしたデビッド・マシューズコンテンポラリージャズがリアル世代のハートを打ち抜いてくる。まぁ,その部分をメインで担当しているのがチャーネット・モフェットベーススティーヴ・ガットドラムなわけなのだけれども…。

 そんな「スーパー・スター」5人をバンドに招き入れ,自由自在に操ってみせるデビッド・マシューズの手腕の高さを,アルバムを繰り返し聴く度に感じてしまう。
 まずは従来はなかったであろう斬新なイントロでの捻りや中間部のソロ・スペースの存在に自然と耳が止まる。誰が呼んだか「二代目・ギル・エヴァンス」はその通りである。“音の魔術師”の異名は全くもってその通りだと思う。

 しかし「マンハッタン・ジャズ・クインテット」の凄さはここからである。デビッド・マシューズの書いた譜面を読み込んで,自分の言葉で表現できるバンド・メンバーの演奏力!
 即興演奏が譜面を超えた瞬間に,手癖の付いたジャズスタンダードが新曲であるかのように現代の音楽として進行形で生まれ変わっていく。この変化の過程を耳にした瞬間に,管理人は「これが『マンハッタン・ジャズ・クインテット』である」と思ってしまう。

 
01. JORDU
02. RECADO BOSSA NOVA
03. CONFIRMATION
04. AUTUMN LEAVES
05. MOOD PIECE

 
MANHATTAN JAZZ QUINET
LEW SOLOFF : Trumpet
GEORGE YOUNG : Tenor Saxophone
DAVID MATTHEWS : Piano
CHARNETT MOFFETT : Bass
STEVE GADD : Drums

(パドルホイール/PADDLE WHEEL 1985年発売/K32Y 6020)
(ライナーノーツ/マイク・ブルーム)

アドリグをログするブログ “アドリブログ”JAZZ/FUSION



啓示10章 神聖な秘密が完了する
CASIOPEA 『FLOWERS