
「THE POLL WINNERS」とは,アメリカのジャズ「ダウンビート」の楽器別人気投票でポール・ウィナーになったギターのバーニー・ケッセル,ベースのレイ・ブラウン,ドラムのシェリー・マンが組んだ,これぞ,世界初のギター・トリオ編成となる歴史的なアルバムであり,一番人気の3人組なのだから当然,売れるわ内容はいいわで,以後,毎年アルバムの続編が企画されるようになった。
さて,そんな「THE POLL WINNERS」については,別の機会に詳しくレヴューすることにして,今夜はバーニー・ケッセルのソロ名義『TO SWING OR NOT TO SWING』(以下『トゥ・スイング・オア・ノット』)を取り上げる。
管理人が『トゥ・スイング・オア・ノット』の興味を持ったのは,なぜにバーニー・ケッセルがポール・ウィナーに選ばれたの? 読者の皆さんも,その理由を知りたいと思うものでしょ?
結論としては「THE POLL WINNERS」は,ウエスト・コースト・ジャズの雄=コンテンポラリーによる「ゴリ押し企画」ではなかったということ。
というのも同時代のジャズ・ギタリストとしては,バーニー・ケッセルではなくケニー・バレルの時代だったし,タル・ファーロウやハーブ・エリスが一番人気を獲得してもおかしくないと思ったからである。
『トゥ・スイング・オア・ノット』は,バーニー・ケッセルが,まだモダン・ジャズに移行する前の「半分スイング・半分モダン」なアルバムである。
でもそんな音楽性が,バーニー・ケッセルとは誰ぞや? バーニー・ケッセルの生い立ちとは何ぞや? と氏の素性を知るには最適だったのだろう。
管理人は『トゥ・スイング・オア・ノット』を聴いて「THE POLL WINNERS」のギタリストは,結果,バーニー・ケッセルが一番相性が良いように思えたから。これがケニー・バレルだと西海岸相手の“ハッピー”ギター・トリオは難しい。
特に『トゥ・スイング・オア・ノット』は,小気味良いスイング・ナンバーのノリが楽しいばかりか,リズム・ギターがもう1本入っているおかげで,バーニー・ケッセルのギター・ソロが全編キャッチー寄りで「メロディー・メイカー」としての特徴が十二分に伝わってくる。バラードなんか,単純に綺麗で切ない演奏である。

そう。バーニー・ケッセルのギターから,楽しく聴かせるためのハリウッドのエンターテインメントの法則が聴こえてくる。バーニー・ケッセルのジャズ・ギターは,全体のアレンジやアンサンブルを考慮した短めのアドリブで勝負している。
曲全体の緻密な構成や流れをを計算して放たれる,短めのアドリブ,それもキャッチーに寄せたアドリブを弾いているから楽しめる。
カウント・ベイシーの楽曲を多く取り上げているのもエンタメ界からの影響だと思っているが,その中でも【12TH STREET RAG】のアレンジには驚いた。この曲をギターで演奏する発想が素晴らしいし,カウント・ベイシーのオリジナルを超えちゃっているかも?
そう。バーニー・ケッセルこそが,ウエスト・コースト・ジャズ・ギターのポール・ウィナー・ギタリスト! そこんとこよろしく〜!
あれれ,ウエスト・コースト・ジャズ・ギターに限定かよ? だ〜って『トゥ・スイング・オア・ノット』は「半分スイング・半分モダン」なウエスト・コースト・ジャズ・ギターなわけでして…。
管理人はモダン・ジャズに完全移行した「THE POLL WINNERS」のバーニー・ケッセル推し!
01. BEGIN THE BLUES
02. LOUISIANA
03. HAPPY FEELING
04. EMBRACEABLE YOU
05. WAIL STREET
06. INDIANA
07. MOTEN SWING
08. MIDNIGHT SUN
09. CONTEMPORARY BLUES
10. DON'T BLAME ME
11. 12TH STREET RAG
BARNEY KESSEL : Guitar
HARRY EDISON : Trumpet
GEORGE AULD : Tenor Saxophone
BILL PERKINS : Tenor Saxophone
AL HENDRICKSON : Rhythm Guitar
JIMMY ROWLES : Piano
RED MITCHELL : Bass
IRV COTTLER : Drums
SHELLY MANNE : Drums
(コンテンポラリー/CONTEMPORARY 1956年発売/VICJ-23592)
(ライナーノーツ/ラルフ・J・グリーソン,岡崎正通)
(ライナーノーツ/ラルフ・J・グリーソン,岡崎正通)
神はシナイで律法契約を立てられる(出15:22-34:35)
青木カレン 『VOYAGE』