この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかウェイン・シューターとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 45 - Best Contemporary Jazz Album ; Cannon Re-Loaded: All-Star Celebration Of Cannonball AdderleyGregg Field & Tom Scott, producers

 
CANNON RE LOADED ALL-STAR CELEBRATION OF CANNONBALL ADDERLEY-1 トム・スコットのアルバムを買ったのは久しぶりのことである。というか,本音を書けばトム・スコットのアルバムを買ったわけではない。
 管理人が『CANNON RE−LOADED:ALL−STAR CELEBRATION OF CANNONBALL ADDERLEY』(以下『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』)を買ったのは「キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート」だから。トム・スコットによるキャノンボール・アダレイトリビュートは,実質マーカス・ミラーが率いる「ドリーム・バンド」のアルバムだからである。

 マーカス・ミラージャズ・アルバムは随分と長い間リリースされていないはずである。
 『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』のリリース情報を目にして以降,どうしてもあのマーカス・ミラーの4ビートが聴きたくてたまらなくなってしまった。

 だからアルバム1曲目のイントロからしてマーカス・ミラーベース・ラインに首ったけ。マーカス・ミラーが加わると,マーカス・ミラーの他にリーダーがいるいまいに関わらず,確実にマーカス・ミラーのアルバムになってしまうものだが『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』もその1枚になっている。

 トム・スコットはそのことを全部承知で,マーカス・ミラーをいの一番に指名したそうであるが,そんなトム・スコットの狙い通りの,最高に刺激的なキャノンボール・アダレイトリビュートが完成している。
 『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』におけるトム・スコットの役割とは,演奏したい曲の選曲とイメージをマーカス・ミラーに伝えて,マーカス・ミラートム・スコット用に作ったバックサウンドに合わせて“歌う”だけである。

 おおっと言いすぎた。トム・スコットがリキを入れているのがアルトサックスからビシビシと伝わってくる。
 事実,トム・スコットが誰かのトリビュート・アルバムを作るのは初めてのことであって,キャノンボール・アダレイトム・スコットの最初のアイドルなのだそうだ。

 フュージョンサックスで“天下を獲った”トム・スコットのスタイルが意外とオーソドックスなのはキャノンボール・アダレイの影響があるのだろう。
 ビートをジャストで鳴らす能力に長けるトム・スコットアルトサックスにはキャノンボール・アダレイ直系の,悠然と構えながら繰り出す甘口のハッピー・フィーリングと熱狂的で厳しい演奏スタイルが同居している。

 トム・スコットアルトサックスが絶好調! トム・スコットデヴィッド・サンボーンと同じ系列に属するのだからマーカス・ミラーと組んだ時のアルトサックスが最高潮! イェイ!

 マーカス・ミラーが率いる「キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート」なのだから当然のことなのだが,トランペットテレンス・ブランチャードキーボードジョージ・デュークドラムスティーヴ・ガッドオルガンラリー・ゴールディングスベースデイヴ・カーペンターも絶好調! キャノンボール・アダレイの人気曲をクールに,そしてファンキーに聴かせてくれている。

CANNON RE LOADED ALL-STAR CELEBRATION OF CANNONBALL ADDERLEY-2 ジャズ系に傾いたトム・スコットアルトサックスジャズトランペットの「申し子」であるテレンス・ブランチャードのフロントを,軽くグルーヴさせながら最先端の4ビートを鳴らすマーカス・ミラースティーヴ・ガッドの現代最高のリズム隊がコントラストを作っている。
 そこへジョージ・デュークラリー・ゴールディングスですぞ!

 「キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート」の演奏が極上なのは,この凄腕メンバーの誰1人としてトム・スコットよりも前に出ていないこと。前に出ていなくとも楽器の存在感を半端なく感じるということ。
 良い意味で全員がスタジオ・ミュージシャンに戻った感じの演奏で最高に聴かせてくれている。

 本当にいい演奏ばかりなので個人的に2008年度のベスト・アルバムは,マーカス・ミラー率いる「ドリーム・バンド」の『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』で良いと思っている。超絶素晴らしい!

 それにしてもトランペットテレンス・ブランチャードの仕事ぶりにはマイッテしまった。トム・スコットを見事にサポートしている。最高のパートナー仕事であって『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』は,テレンス・ブランチャードを代表する名演の1枚に挙げて良いと思う。

 そうして『キャノン・リローデッド〜キャノンボール・アダレイ・オールスター・トリビュート』1番の“ご褒美”は,ナンシー・ウィルソンヴォーカル・ナンバー2曲。凄いディーバがいたもんだなぁ。とにかく圧巻。とにかく素晴らしい。ナンシー・ウィルソンの2曲ばかりを1か月は聴いて過ごしました。2008年の思い出のヒトコマです。

 
01. Jive Samba
02. Work Song
03. Mercy, Mercy, Mercy
04. Save Your Love For Me
05. Sack O' Woe
06. Country Preacher
07. Inside Straight
08. I Should Care
09. The Masquerade Is Over
10. Stars Fell On Alabama

 
TOM SCOTT : Alto Saxophone
TERENCE BLANCHARD : Trumpet
GEORGE DUKE : Piano, Rhodes, Wurlitzer
MARCUS MILLER : Bass
STEVE GADD : Drums
LARRY GOLDINGS : B3 Organ
DAVE CARPENTER : Bass

Special Guest:
NANCY WILSON : Vocals

(コンコード/CONCORD 2008年発売/UCCO-1028)
(ライナーノーツ/トム・スコット,小川隆夫)

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サウルの不従順(サ一13:1-15:35)
赤松敏弘 『MAJESTIC COLORS