この記事は「スーパートリビア」の「グラミー賞 ジャズ部門」との連動記事です。

 「スーパートリビア」の記事で記したように,CD購入済の「グラミー・受賞作」(または「グラミー・ノミネート作」)の“お祝いレビュー”(あるいは“残念レビュー”)をUPいたします。
 それで読者の皆さん,お断り&再確認しておきますが,レビューするのは既に所有済のCDだけですから〜。追加購入はしませんから〜。

 なお,現在「アドリブログ」の「JAZZ/FUSION CD批評」では“1アーティスト1枚縛り”で絶賛レビュー中ですが「グラミー受賞・ノミネート」は“1アーティスト1枚縛り”ノーカウントといたします。
 こうなるとパット・メセニーとかチック・コリアとかマイケル・ブレッカーとかのレビュー数が突出する? まぁ,いずれは所有CDを全枚レビューすることになるので,早いか遅いか,の違いだけ!? なお,この連動記事は特別企画ゆえにトラック批評もノーカウントといたします。
 


Category 45 - Best Contemporary Jazz Album ; LifecycleYellowjackets Featuring Mike Stern

 
LIFECYCLE-1 ロベン・フォードのバックバンドとして結成されて「ロベン・フォード抜き」でデビューしたのがイエロージャケッツの歴史である。
 イエロージャケッツの正確な歴史とは「ロベン・フォード抜き」ではなくてギターレス。それでもデビューから3作目まではゲストとしてギタリストが参加していたのだが,4作目以降は完全なるギターレス,しかもフュージョンではなくコンテンポラリージャズ・バンドへと華麗なる転身を果たした,押しも押されぬスーパー・バンド。

 そんなイエロージャケッツが,自慢のジャズ・サウンドをギターフュージョンへと揺り戻してまで共演したかったのが,黒いフュージョン・シーンの第一線で活躍してきたマイク・スターンである。
 確かにマイク・スターンならイエロージャケッツのサウンドに合う。思ってもみなかった大共演が2008年最大のビッグ・ニュースであった。

 イエロージャケッツフィーチャリングマイク・スターン名義の『LIFECYCLE』(以下『ライフサイクル』)が真に素晴らしい。
 ボブ・ミンツァーのワンホーン・カルテットをラッセル・フェランテが優しく包み込むイエロージャケッツのバンド・サウンドは揺るがない。黒いギターフュージョンを演奏しようとも『ライフサイクル』はイエロージャケッツコンテンポラリージャズが鳴っている。

 その上でマイク・スターンギターの存在感が絶妙で,ワンホーン・カルテットにギターが加わる意味を感じさせてくれるのは,異様にシャープなアンサンブル。マイク・スターンのキレキレのギターイエロージャケッツの特有のユニゾンの切れ味を加速させている。

LIFECYCLE-2 イエロージャケッツギターレスを貫いてきたのは,ラッセル・フェランテキーボードの響きを引き出すためだったが『ライフサイクル』でのフィット感を聴いていると,イエロージャケッツギターレスを貫いてきたのはマイク・スターンと巡り合う,来るべきその時のためだったような思いもする。
 イエロージャケッツマイク・スターンの共演なんて,これまで想像したことさえなかったが,これほどの相性の良さを聴かせられるとイエロージャケッツギタリストマイク・スターン以外に考えられなくなってしまった。

 キレキレのマイク・スターンについて語るなら,そうは言っても気持ちまろやかにギターを演奏しているように聴こえる。NO.1のジャズ・コンボへゲスト参加する者の礼儀のつもり? いつもはピンと張ったギターにまろみが加わった「イエロージャケッツ仕様のギター・サウンド」は,もう何年も共演してきたかのような最高の仕上がりで,イエロージャケッツの第5のメンバーとしての風格を帯びている。

 管理人は『ライフサイクル』をイエロージャケッツ側に立って聴いているが,これをマイク・スターン側に立って聴いてみると見事にイースト・コースト・ジャズギター・アルバムに聴こえるのだから不思議である。
 LAのイエロージャケッツとNYのマイク・スターンが,それぞれ西と東に立ったまま,黒いギターフュージョンを演奏している。いろんな切り口でいろんな聴き方が楽しめる。演奏の複雑なディテールを楽しめる。『ライフサイクル』とはそんな“ミラクルな”アルバムである。

 
01. OZ
02. TORTOISE & THE HARE
03. LOCAL HERO
04. GALILEO
05. FOREIGN CORRESPONDENT
06. DOWNTOWN
07. HELIX
08. AVANCE
09. ONE VOICE
10. EVENING DANCE

 
YELLOWJACKETS
RUSSELL FERRANTE : Piano, Keyboards, Percussion
JIMMY HASLIP : Bass, Programming, Sequencing
BOB MINTZER : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone, Bass Clarinet, Bb Clarinet, EWI
MARCUS BAYLOR : Drums, Percussion

Apecial Guest
MIKE STERN : Guitar

(ヘッズ・アップ/HEADS UP 2008年発売/UCCT-1198)
(☆直輸入盤仕様 ライナーノーツ/成田正)

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ダビデに対するサウルの追跡(サ一18:1-27:12)
赤松敏弘 『NEXT DOOR - NEW LIFE