INTO SOMETHIN'-1 独自の音楽性を磨き続ける探究心で「ジャズ界で最も影響力のあるミュージシャン」と語られたジョン・コルトレーン。そんなジョン・コルトレーンなのだから,テナーサックスだけではなくアルトサックスだけでもなく,他の楽器を演奏するジャズメンにまで影響を与えている。

 その1人が「オルガンコルトレーン」と称されたラリー・ヤングである。実にジミー・スミス“一強”状態のオルガン界にまで影響を与えたジョン・コルトレーンの偉大さが感じられるというものである。

 『INTO SOMETHIN’』(以下『イントゥ・サムシン』)でのラリー・ヤングオルガンジャズに衝撃を受けた。
 ラリー・ヤングオルガンを「ジョン・コルトレーンのようだ」と思った記憶はないが,従来のオルガンジャズから灰汁を取ったかのような,饒舌で臭みのないオルガン・スタイルは,確かに「オルガンコルトレーン」であり「言い得て妙」。

← こうは書いたが管理人のイメージするジョン・コルトレーンとは則ちフリー・ジャズ。ただしジョン・コルトレーンの愛聴盤は『バラード』なので『バラード』に通じるエモーションを感じる『イントゥ・サムシン』に「オルガンコルトレーン」が宿っているの意味。まぁ,ドラムエルヴィン・ジョーンズが参加しているという理由が大きいだけ?

← だって,ラリー・ヤングは『イントゥ・サムシン』以前には『グルーヴ・ストリート』を聴いていたが『グルーヴ・ストリート』でのラリー・ヤングの印象は「平たいオルガニスト」で『イントゥ・サムシン』のようなパンチはない。まぁ,ラリー・ヤング名演には“ラスボス”に当たるグラント・グリーンが参加しているという理由が大きいだけ2?

 オルガンと来れば“アーシー”が定説の中,モーダルな即興を取り入れたラリー・ヤングオルガンの響きは“クール”である。
 ラリー・ヤングというジャズメンは,ジミー・スミスのように,全部自分1人で作っていくタイプではなく,共演者の音を取り込んで構築していくスタイル。だからラリー・ヤングはサイドメンとしても活躍できたし,自作曲でユニゾンを多用したのも“クールなオルガニスト”と語られる個性に繋がっているように思う。

INTO SOMETHIN'-2 要はラリー・ヤングは「スタイリッシュ系」! 品位を伴うオルガンがメロディーに陰影や起伏を“着せていく”感じであって,グルーヴする曲はよりグルーヴィーに,メロディアスな曲はよりメロディアスに,と主役を引き立てる“コーディネート”が抜群で,特に同色系で“重ね着”するセンスは雄一無二のハイセンス!
 ジミー・スミスのように,原色バリバリのド派手なTシャツ1枚の「春夏コーデ」とは毛色の異なる「秋冬コーデ」が「見て&聴いて楽しい」オルガンジャズ

 ジミー・スミスオルガンジャズに飽きてきたら,ラリー・ヤングオルガンジャズでもどうですか?
 比較的ソフトで耳当たりの良いメロディーで進行していく『イントゥ・サムシン』は「聴きやすい&聴き飽きない」オルガンジャズ名盤で,聴き込めば聴き込むほどにラリー・ヤングの“クールな渋み”が沁み出てきますよっ。

 
01. TYRONE
02. PLAZA DE TOROS
03. PARIS EYES
04. BACK UP
05. RITHA

 
SAM RIVERS : Tenor Saxophone
LARRY YOUNG : Organ
GRANT GREEN : Guitar
ELVIN JONES : Drums

(ブルーノート/BLUE NOTE 1964年発売/TOCJ-6543)
(ライナーノーツ/小川隆夫)

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忠実なヒゼキヤ王(歴二29:1-32:33)
秋吉敏子 『トリオ&カルテット