
ハーヴィー・メイソン抜きにドラム・フュージョンを語れやしない!
そんな“スーパー・ドラマー”ハーヴィー・メイソンであるが,管理人にとってのハーヴィー・メイソンとは「プロデューサー」であり「コンポーザー」であり「アレンジャー」としてのイメージが強い。
要は肩書としてのドラマーよりも,素晴らしい「音楽家」としての認識の方が先に来る。
それは多分にカシオペアの『EYES OF THE MIND』。ハーヴィー・メイソン・プロデュースによる『EYES OF THE MIND』でカシオペアが激変した衝撃…。
『EYES OF THE MIND』の“スカスカな”音に,デビュー当時のキャッチ・フレーズ「スピード,スリル,テクニック」の面影はない。その代わりに「シンプルでパワフルなビート」&「タイトでダンサブルなグルーヴ」を手に入れたカシオペアは「世界」を意識できたし,そんなカシオペアに影響されたのが「ブリティッシュ・ジャズ・ファンク」である。
そんなハーヴィー・メイソンの「懐の深さ」を実感し,ハーヴィー・メイソンはドラマーの前に「音楽家」との思いを強くしたのが,ハーヴィー・メイソンのデビュー・アルバム『MARCHING IN THE STREET』(以下『マーチング・イン・ザ・ストリート』)である。
『マーチング・イン・ザ・ストリート』の中に“スーパー・ドラマー”ハーヴィー・メイソンは見当たらない。『マーチング・イン・ザ・ストリート』を聴いて感じるのは「ヘッドハンターズって,ハーヴィー・メイソンのバンドだったのか,という大いなる勘違い」位である。
それくらいに完璧なジャズ・ファンクが出来上がっていた。トータルな音楽として完成していた。ドラマーとして参加する自分自身の演奏を抑えつつ“肉感的なグルーヴ”をしっかりと押し出している。
そう。「プロデューサー」ハーヴィー・メイソンが,その才能を発揮できたのは“スーパー・ドラマー”ハーヴィー・メイソンの存在にある。
『マーチング・イン・ザ・ストリート』で“スーパー・ドラマー”ハーヴィー・メイソンを起用したのは「味変」みたいなものである。ハーヴィー・メイソンのビート感に特徴的なノリは感じないが,その分,いやらしいハイハットや生々しいタムにチューニングを施している。

そうして,これほど見事な「裏廻し」ができた理由は“スーパー・ドラマー”として楽曲全体の出来映えに目配せしてきた数多くの経験値があるのだろう。
カシオペアの2枚のアルバム『EYES OF THE MIND』『4 X 4』で共演した野呂一生が,2人の“スーパー・ドラマー”ハーヴィー・メイソンと神保彰を評して,次のように語っている。
「神保はやたらと叩くけど,ハーヴィーほど音楽的には叩けない」。管理人の頭には今でもこの言葉が刻み込まれている。
そう。ハーヴィー・メイソンが叩いているのはドラムではなくグルーヴする音楽である。
『マーチング・イン・ザ・ストリート』のサウンド・メイクを耳にする度に,そして最近のフォープレイのサウンドを耳にする度に,野呂一生の言葉の真実さを思い出しては共感するのである。
01. MARCHING IN THE STREET
02. MODAJI
03. HOP SCOTCH
04. WILD RICE
05. BALLAD FOR HEATHER
06. FAIR THEE WELL
07. BUILDING LOVE (Hymn)
HARVEY MASON : Drums
CHUCK RAINEY : Bass
PAUL JACKSON : Bass
HERBIE HANCOCK : Piano
DAVE GRUSIN : Piano
LEE RITENOUR : Guitar
BLUE MITCHELL : Trumpet
OSCAR BRASHER : Trumpet
FRANK ROSOLINO : Trombone
GEORGE BOHANNON : Trombone
BENNY MAUPIN : Saxophone
ERNIE WATTS : Saxophone
HUBERT LAWS : Flute
(アリスタ/ARISTA 1975年発売/B19D-47026)
(ライナーノーツ/中田利樹)
(ライナーノーツ/中田利樹)
民を教え諭す(ネヘ7:1-12:26)
秋吉敏子 『ロング・イエロー・ロード』