
この出だしの言葉を読んだだけでピンときた方は「スイングジャーナル」誌の愛読者であろう。あるいは大坂昌彦&原朋直クインテットの大ファンであろう。
そう。大坂昌彦が「スイングジャーナル誌読者投票ドラム部門」14年連続第1位ならば,川嶋哲郎も「スイングジャーナル誌読者投票テナー・サックス部門」10年連続第1位。そして奇しくも川嶋哲郎のデビューは大坂昌彦&原朋直クインテットなのである。
川嶋哲郎を見出し,育てて,自分の人気拡大の一助とした大坂昌彦の音楽眼が素晴らしい。この流れで先回の大坂昌彦批評を書き終えた今だから思うのだが,大坂昌彦は「日本のアート・ブレイキー」の称号を送りたい。
とは言え,いくら大坂昌彦に影響力があるにしても,ジャズの花形であり,人気競争1番の激戦区であるテナー・サックスで10年続けて「天下を獲る」とは相当なものであり,今後,川嶋哲郎のようなテナー奏者は2度と現われないことだろう。川嶋哲郎はそれくらいに類まれな逸材なのである。
ただし管理人はテナー奏者は片山広明に投票している。片山広明のアナーキーで力技のフリー・テナーを知ってしまうと川嶋哲郎は物足りない。
ジャズ・テナー奏者足るもの,どうしてもジョン・コルトレーンを避けて通ることはできないが,どうせ影響されるのならフリー・ジャズのジョン・コルトレーンを消化してほしい,と感じてしまう。
メイン・ストリーム・ジャズに軸足を置く川嶋哲郎はバランスが整っており総合力が高いとは思うが最高得点は片山広明より高くない。

ケニー・バロンのピアノって年々良くなっているように感じるのだが,そのきっかけとなったのが何を隠そう『エターナル・アフェクション』だったのだ。
1度このような経験をしてしまうと『エターナル・アフェクション』で,ケニー・バロンではなく川嶋哲郎をじっくり聴き分けるのは困難な作業となる。
なんだかなぁ。残念ながらそれ以来,川嶋哲郎については大坂昌彦&原朋直クインテットのメンバーの1人のような立ち位置から変化しないんだよなぁ。人との出会いって本当に大切だよなぁ。
01. SPHINX
02. IT'S EASY TO REMEMBER
03. SONNYMOON FOR TWO
04. BYAKU-YA
05. ETERNAL AFFECTION
06. MUSASHINO
07. AUTUMN LEAVES
08. ISRAEL
09. TETIAROA
10. VIOLETS FOR YOUR FURS
TETSURO KAWASHIMA : Tenor Saxophone, Soprano Saxophone
KENNY BARRON : Piano
RUFUS REID : Bass
AKIRA TANA : Drums
(パドルホイール/PADDLE WHEEL 1999年発売/KICJ-364)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
(ライナーノーツ/小川隆夫)
すべてのものに臨む一つの終局(伝8:1-9:12)
秋吉敏子ジャズオーケストラ・フィーチャリング・ルー・タバキン 『砂漠の女』