
管理人にとって藤原清登は「その1人」である。「低音王」「モダン・ベースの王者」の称号を持つ藤原清登なのだが,そんな御託を幾ら並べられようとも,チョッパーもスラップもやらないベーシストにはずっと関心を持てなかった。興味の対象外であった。
だから藤原清登の称号を見聞きする度に,何が「低音王」だ,何が「モダン・ベースの王者」だ,と思っていたし,藤原清登を絶賛する記事を読む度に,藤原清登ではなく櫻井哲夫を聞け,ナルチョを聞け,田中豊雪を聞け,須藤満を聞け,と思ってしまうのが常であった。
そんな管理人が「低音王」「モダン・ベースの王者」の藤原清登に開眼したのは『CONCIERTO DE ARANJUEZ』(以下『アランフェス協奏曲』)からのことである。
それまでに藤原清登を知らないわけでもなかったし,CDも1枚だけだが『60マイルズ・ハイ』も所有していた。
本当は藤原清登のことを何も知らないに等しいのに,にわかにもカジッた経験が邪魔をして,乏しい経験の中から出来上がった,藤原清登というと「アルコの人」のイメージが,ますます「低音王」「モダン・ベースの王者」のイメージと乖離していた。
そのイメージが一変したのが,ラジオで流れていた「アランフェス協奏曲」特集。ジム・ホールとかMJQとか,ちょっと違うけどチック・コリアの【スペイン】等がオンエアーされる並びの中で藤原清登の【アランフェス協奏曲】が流れていた。
その演奏が衝撃で,やっぱりイントロのアルコの独唱が素晴らしくて,あの日のラジオは藤原清登のための放送だったと思っている。
藤原清登の低音がグイグイ。他のベーシストが演奏したエレクトリック・ベース以上に低音がグイグイ。【アランフェス協奏曲】の良さって低音の動き&ベース・ラインの動きに負うところが大きいと思い知らされた。ベースって奥深い&低音って奥深い!

本当は一発KOではないのだが雰囲気として,藤原清登の緊張感がありながらも繊細な美音に一発でKOされてしまった。← 最上級の賛辞の言葉!
でもその時に気付いてしまった。藤原清登のベースの凄さとは,チョッパーやスラップにはない,本来のベースという楽器が有する気品豊かな低音の魅力である。ベースがギター化することで薄れてしまった,本質的なボーイングやピチカート奏法の魅力もしかり。
藤原清登のベースの音なら,例えばシリアス・チックにも振れるし,反対にメルヘン・チックに振れてもいける。高度な演奏技術で鳴らしているにも関わらず,リラックスして楽しめるし癒しの音楽としても聴くことができる。
その意味で,確かに藤原清登は「低音王」「モダン・ベースの王者」の称号にふさわしい。ここに個人的には「アルコの王様」的な称号も加えてほしい。ベースをここまで優雅に鳴らすことができるジャズ・ベーシストと来れば藤原清登が「筆頭格」で間違いないだろう。
01. I GOT IT BAD
02. THINGS AIN'T WHAT THEY USED TO BE
03. 52nd. STREET THEME
04. VIBES
05. STARDUST
06. THE LITTLE TRAIN
07. PER NOI
08. CONCIERTO DE ARANJUEZ
09. SKY & SEA
KIYOTO FUJIWARA : Bass
PETER MADSEN : Piano
SHUNSUKE FUKE : Drums
(エレクトリック・バード/ELECTRIC BIRD 1997年発売/KICJ-320)
(ライナーノーツ/悠雅彦,森川進)
(ライナーノーツ/悠雅彦,森川進)
エレミヤは再び書を記す(エレ36:1-32)
阿部薫・山崎弘 『JAZZBED』