
そう。『ラテン・タッチ』に関しては,ただただ「上質の音楽」だということ。「感動する音楽」だということ。「ロマンティックな音楽」だということ。とにかく「みんなに聴いてほしい音楽」だということ…。
事実,一時期,管理人はこれからフュージョンを聴いてみたいという人たちが家にいたら,まず『ラテン・タッチ』をかけていた。正確には気分によってジョー・サンプルの『スペルバウンド』と『アッシェズ・トゥ・アッシェズ』をかけたこともあった。
でもその場合でもジョー・サンプルの次の1枚として『ラテン・タッチ』をかけていたと思う。それくらいに『ラテン・タッチ』をお奨めしていた。
それくらいに『ラテン・タッチ』が大好きだったし,1曲目の【INSIGHT】と2曲目の【THE VOYAGER】が共に神レベルの名演で,リスニング開始10分以内に勝負を決めてくれるところが最良の選択だと我ながら思っていた。
『ラテン・タッチ』がきっかけでクリヤ・マコトにものめり込んだ。クリヤ・マコトのアルバムはほぼ全部聴いたのだが『ラテン・タッチ』を越えるアルバムはなかった。今でもクリヤ・マコトの新作を買う時には「第二の『ラテン・タッチ』」を期待している自分に気付く。
『ラテン・タッチ』の何がそんなに素晴らしいのか? 『ラテン・タッチ』はとにかく「お洒落」である。音楽ってこんなにも「お洒落」なんだと初めて思った。
次に『ラテン・タッチ』はとにかく泣ける。じわじわと感動が広がり,聴いている途中で必ず号泣してしまう。決してノスタルジック系ではなくどちらかと言えばノリが良くてポップなアルバムなのになぜだろう。理由もなしに泣けてしまう。ここまで「お洒落」な音楽の存在に感動してしまうのだ。

でもそれは野暮だろう。音楽も含めて,例えば芸術にはきれいに見える「黄金比」があることを知っている。でも「黄金比」を基準としてモナリザを鑑賞するのは違うと思う。ダヴィンチとしても結果「黄金比」になっただけで,そのことを計算して描いたわけではないだろう。
『ラテン・タッチ』についても同じである。クリヤ・マコトは『ラテン・タッチ』の制作に当たり,後から聞いたら興ざめする手法は用いていない。自分の感情の発露として,素直に音に乗せたのが結果『ラテン・タッチ』として完成したのだろう。
クリヤ・マコトは作家である。映像より先に音楽が出てくるタイプの作家である。映像作家に『ラテン・タッチ』を聞かせたら,真にクリエイティブな映画が誕生しそうである。管理人の脳裏には「ラテン・ヨーロッパ」を舞台にした情熱的なラウンジ系の超大作&ダイナミックでロマンティックな映像シーンが浮かんでくる。
読者の皆さんにも『ラテン・タッチ』を瞳を閉じて聴いてほしいし,本気でスピルバーグにも聴いてほしい。
01. Insight
02. The Voyager
03. Je Te Veux
04. Send One Your Love
05. You Must Believe In Spring
06. Don Segundo
07. 世界で一番君が好き?
08. The Girl From Ipanema
09. 奇跡のスタースクレイパー
10. Ultimate Zone
11. Welcome Home
MAKOTO KURIYA : Piano, Rhodes, Programming
KOICHI OSAMU : Acoustic Bass, Electric Bass
KIICHIRO KOMOBUCHI : Electric Bass
MASAAKI OTOMO : Electric Bass
KAZUHIKO OBATA : Acoustic Guitar
GEN ITTETSU : Violin
CRUSHER KIMURA : Violin
NAOTO TAKAHASHI : Violin
ALTERED MANABE : Violin
DAISENSEI MUROYA : Viola
TOMOKO SHIMAOKA : Viola
NORIPPE : Cello
MASAYO INOUE : Cello
KAREN : Vocal
(日本コロムビア/J-ROOM 2003年発売/COOB-53049)
(ライナーノーツ/クリヤ・マコト,中田利樹)
(ライナーノーツ/クリヤ・マコト,中田利樹)
怖ろしい像の夢(ダニ2:1-49)
阿部薫 『LIVE AT PASSE-TAMPS 18』