
この4年間に管理人の趣向も大きく変わり,現在ではアキコ・グレースとSayaの露出が減ったこともあり,個人的には山中千尋を日本人ジャズ・ピアニストの一番手と公言する。
4年前は単純にタイプの女性の1人として見守っていたのだが,もはや山中千尋を容姿で語るのは恥ずかしい。純粋に“ジャズ・ピアニスト”として一歩も二歩も抜きんでたと思う。
山中千尋の評価がまだまだ低いのは,例えば上原ひろみのように超ビッグ・ネームとの共演を続けるわけでもなく,山中千尋自身が共演していて心地良いリズム隊との演奏を選んでいるだけのことである。
VERVE所属の山中千尋なのだから,その気になればチック・コリアが使っていたクリスチャン・マクブライド&ブライアン・ブレイドとピアノ・トリオを組むことができると思うのだが…。
そう。この4年間で山中千尋は世間から評価される音楽かどうかではなく,自分が信じ自分が目指す音楽の「求道者」へと変化した。そのことを『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』が見事に描き出している。
『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』の中には『LEANING FORWARD』の時のような,音遊びを楽しみながら嬉々とした表情を浮かべていた頃の山中千尋を探そうにも,もはや映ってはいない。
おおっと,勿論,演奏中の山中千尋のキュートな笑顔もたくさん見られますよっ。でもちょっと上手くいったぐらいでは表情に変化はなく,かなり満足いく演奏ができた時だけ,100万ドルの笑顔,を振りまいてくれております。
アドリブとハーモニーの出来映えから「ザ・山中千尋」の音楽に自信たっぷりな圧巻のステージングが最高のDVD作品なのです。
人間,内面の変化は服装に現れると申します。『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』での山中千尋は「アゲハ嬢」のようなお召し物とアップの髪型で,もう気安く“ちーたん”なんて呼べやしない。
1stセットは黒のドレス。2ndセットは赤のドレス。これが両方共に好みなのでどっちがいいかは選べない。アンコールではまた黒のドレスに着替えてきたのは意味があるのかぁ。
とにもかくにもアメリカ在住の山中千尋嬢は「来日公演」をするようなビッグ・アーティストへと成長したのでした。3枚目のDVD撮影は大物にふさわしくサントリー・ホールかオーチャード・ホールのような大ホールで準備される?
『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』での山中千尋・トリオは「女性だけの」ピアノ・トリオ。
ベースのジェニファー・レイサム,ドラムのアリソン・ミラーの名前は過去にリリースされた山中千尋のアルバムにはクレジットされていないので初共演だと思うのだが,短期間のツアーでここまでコンビネーションを仕上げていることに驚きを感じた。「女性だけの」ピアノ・トリオだとスムーズに進む特別な何かがあるのだろうか?

読者の皆さん,本当にジェニファー・レイサム&アリソン・ミラーとのピアノ・トリオは,いつもの山中千尋とは違う「変則」トリオ仕様なのですよ〜。例えば,かって共演したラリー・グレナディア&ジェフ・バラード組の有名どころにも負けていないピアノ・トリオ仕様なのですよ〜。
最後に『LEANING FORWARD』では感じなかった『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』での管理人の山中千尋の新発見!
山中千尋の力強いタッチについては『LEANING FORWARD』で知り得た情報であったが『LIVE IN TOKYO TOUR 2007 SUMMER』では「山中千尋の中の,でんと座っている,キース・ジャレットへの意識」を思い重ねてしまった。
山中千尋のジャズ・ピアノの音色がかつてなく澄んで聴こえる。アグレッシブな演奏の中にもエレガントなメロディーが織り交ぜられているし,柔らかで繊細な感情の動きがダイレクトに伝わってくる。
そして演奏が盛り上がるにつれ,体全体が揺れるわ,中腰になったり立ち上がったりするわ,フレーズを指と口で同期させるわ〜。そんな山中千尋の中のキース・ジャレットっぽさが,管理人がチック・コリアっぽい上原ひろみ以上に山中千尋を評価する理由なのかもしれない。
[ 1st set ]
01. I'M GONNA GO FISHIN'
02. FOREST STAR
03. SAND SHIP
04. TAKE FIVE
05. RTG
06. ANTONIO'S JOKE
07. IMPULSIVE
[ 2nd set ]
08. OUTSIDE BY THE SWING
09. IN A MELLOW TONE
10. WHAT A DIFFERENCE A DAY MADE
11. LIVING WITHOUT FRIDAY
[ Bonus track ]
12. YAGIBUSHI
CHIHIRO YAMANAKA : Piano
JENNIFER LEITHAM : Bass
ALLISON MILLER : Drums
(ヴァーヴ/VERVE 2007年発売/UCBJ-1004)
パウロは分派的な傾向を指摘して,一致を説く(コ一1:1-4:21)
和泉宏隆 『A SQUARE SONG BOOK』