
『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の大ヒットが,その後のバンド活動へと繋がり,リターン・トゥ・フォーエヴァーでの活動を通してチック・コリアの様々な編成でのジャズ/フュージョンにもスポットライトが当たったことと思う。
もっと言えば『リターン・トゥ・フォーエヴァー』の大ヒットが,チック・コリアだけではなくECMにも注目を集めヨーロピアン・ジャズがヒットする要因にもなったと思う。
そう。『リターン・トゥ・フォーエヴァー』なくして,その後のチック・コリアの名演も,ECMの名演も,ヨーロピアン・ジャズの名演も誕生しなかったかもしれない。深読みしすぎ,とお思いかもしれないが,あながち間違いではないと思う。
な・の・で・管理人の中のチック・コリア=エレクトリック・バンドなのだが,リターン・トゥ・フォーエヴァーが王道である。事実,エレクトリック・バンドとはリターン・トゥ・フォーエヴァーの発展形バンドという位置付けでもある。
だ・か・ら・リターン・トゥ・フォーエヴァーのオリジナル・メンバーでの再結成のニュースは「2004年最高の話題作」となったエレクトリック・バンドのオリジナル・メンバーでの再結成のニュースと同様「2008年最高の話題作」になるはずであった。内容が良ければのお話し。
そう。「2008年最高の話題作」に成り損ねた『RETURNS』は内容がイマイチ。所謂「思いつき」のチック・コリアが顔を出した内容である。敢えて今,リターン・トゥ・フォーエヴァーを再結成した真意が伝わらなかった。
『LIVE AT MONTREUX 2008』(以下『復活! チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・アット・モントルー 2008』)は,そんな『RETURNS』のフォロー・ツアーのDVDである。
ズバリ『復活! チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・アット・モントルー 2008』は「昔の名前で出ています」よろしく「復活!」してはみたけれど的なバンド・サウンドなのだが,そんな不満を吹き飛ばす個の力! 恐ろしくパワフルな名演の連続に圧倒されるDVDである。
新曲のみで構成されていたエレクトリック・バンドとは異なり,新曲なしで往年の人気曲を再演することに決めたリターン・トゥ・フォーエヴァーの度胸の良さは,チック・コリアがリーダーとして仕切るエレクトリック・バンドと,チック・コリアがリーダーでスタンリー・クラークがパートナーの双頭バンドとしてスタートしたが,メンバー全員がリターン・トゥ・フォーエヴァーでの活動を通してマイスターとなった4人対等のリターン・トゥ・フォーエヴァーとの違いであろう。

そんなチック・コリアの遠慮と言うか,他のメンバーに気を遣っている感じのアドリブが,冒頭で書いた,リターン・トゥ・フォーエヴァーを再結成した意味不明の真意である。
褒め殺しすると,このオリジナル・メンバーで昔の黄金期の気分をまた味わってみたかったとか,アル・ディ・メオラの真横で超絶ソロを聴いてみたいとか,スタンリー・クラークの超絶ソロとユニゾンしてみたいとか,レニー・ホワイトに煽られてロックしてみたいとか…。あっ,これって全部チック・コリアの気持ちですよね…。
『復活! チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・アット・モントルー 2008』は,とにかく全曲が見所ばかり。
個人的に『復活! チック・コリア&リターン・トゥ・フォーエヴァー〜ライヴ・アット・モントルー 2008』のハイライトはメンバー4人のソロがカット割りされている「BONUS TRACKS(US TOUR FOOTAGE)」のロング・ソロ!
もはや内容の薄さなど忘れさせてくれる濃密な演奏力! リターン・トゥ・フォーエヴァーは,そんじょそこらのレジェンド・フュージョン・バンドとは格が違いすぎる!
2008
01. Introduction
02. Hymn of the Seventh Galaxy
03. Vulcan Worlds
04. Sorceress
05. Song to the Pharaoh Kings
06. Al's Solo
07. No Mystery
08. Chick's Solo
09. The Romantic Warrior
10. El Bayo De Negro (Stanley's Solo)
11. Lineage (Lenny's Solo)
12. The Romantic Warrior (Continued)
Bonus Tracks (US Tour Footage)
01. Lineage (Lenny's Solo)
02. Al's Solo
03. Friendship (Chick's Solo)
04. El Bayo De Negro (Stanley's Solo)
05. Duel of the Jester & the Tyrant
RETURN TO FOREVER
CHICK COREA : Yamaha Grand Piano Model C3MP, Yamaha Motif XS 8, Rhodes Midi Piano Mark V, Moog Voyager, Prophet 5
STANLEY CLARKE : Acoustic Bass, Electric Bass
AL DI MEOLA : Acoustic Guitar, Electric Guitar
LENNY WHITE : Drums
(ヤマハミュージックエンタテインメント/EAGLE VISION 2009年発売/YMBA-10007)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
(ライナーノーツ/杉田宏樹)
頭の地位; 主の晩さん(コ一11:1-34)
和泉宏隆 『FOREVER PURPLE』