
「スイングジャーナル・リーダース・プロジェクト」の第2弾は『OLD MONTMARTRE』(以下『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』)。
演奏者である「ドリーム・セッション」に今回はプロジュクト名が付与されて「ドリーム・セッション ’97: ユーロ・アメリカン・オールスターズ」名義での制作。
そう。『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』のテーマはヨーロピアン・ジャズである。具体的にスイングジャーナル誌の説明を書くと,ヨーロッパに関係の深いアメリカのミュージシャンたちによるヨーロッパ賛歌,である。
しかし今回も読者公募形式を取ってはいるが,どこかあやしい。「ドリーム・セッション ’97: ユーロ・アメリカン・オールスターズ」のメンバーは,トランペットのアート・ファーマー,テナー・サックスのジョニー・グリフィン,アルト・サックスのチャーリー・マリアーノ,ピアノのホレス・パーラン,ベースのマッズ・ビンディング,ドラムのエド・シグペン。
特に読者人気投票ではランク入りすることのなかったマッズ・ビンディングが入っている辺りが,例のスイングジャーナルの“ねじ込み”っぽくて疑いたくなる。
こんな大物軍団の半年後のスケジュールを簡単に押さえるなんてできっこない? メンバーに合わせてアレンジするにも時間が足りない? すでに第2弾は今回のプロデューサー=SATORU SUZUKI氏は関係者なのか? もし実在する読者企画なのでしたらSATORU SUZUKI氏,本当にごめんなさい。要は段取りが出来すぎなのですって!
そんな広告主を喜ばせる企画臭が「スイングジャーナル・リーダース・プロジェクト」シリーズ第3弾までには至らなかった要因であろう。読者の眼は欺けませぬ。
そんなこんなで『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』は,ヨーロッパに関係の深いアメリカ人が演奏するヨーロピアン・ジャズ。つまりはアメリカン・ジャズ・ベースのヨーロピアン・フレイバー。

ただし細部が中途半端と言うべきか,詰めが甘いと言うべきか,SATORU SUZUKI氏のイメージが制作陣には伝わらなかったのだろう。残念ながらヨーロピアン・ジャズ特有の「澄んだ空気感」までには到達してはいない。
管理人が特にそう感じたのは上述した,ヨーロッパゆかりの楽曲ではない【黒いオルフェ】と【スターダスト】の2曲に,他の7曲以上にヨーロピアン・フレイバーを感じてしまったから!
【黒いオルフェ】と【スターダスト】の2曲で『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』の楽しみ方が変化した。
【黒いオルフェ】と【スターダスト】におけるアート・ファーマー,ジョニー・グリフィン,チャーリー・マリアーノ,ホレス・パーランの演奏は,思いっきりヨーロッパに被れている。
『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』を購入する前は,純粋に“変わり種の”ヨーロピアン・ジャズを聴きたかったのだが,結果『オールド・モンマルトル〜モンマルトルの想い出』を聴く楽しみとは,アメリカン・ジャズ・スタンダードにヨーロピアン・ジャズの「澄んだ空気感」を取り入れた演奏に方に大いに魅力を感じている。
ジャズにおいても「餅は餅屋」。本場のヨーロピアン・ジャズの再現はヨーロピアン・ジャズ・トリオに任せておきましょう。
← こんな表現が出てくること自体,管理人もスイングジャーナルに影響されまくりです。
01. ASCENSEUR POUR LECHAFAUD
02. DEAR OLD STOCKHOLM
03. BLUES DE MEMPHIS
04. HASH-A-BY
05. WANNA BE
06. THE SUMMER KNOWS
07. MANHA DE CARNAVAL
08. STAR DUST
09. OLD MONTMARTE
DREAM SESSION '97 EURO AMERICAN ALL STARS
ART FARMER : Trumpet
JOHNNY GRIFFIN : Tenor Saxophone
CHARLIE MARIANO : Alto Saxophone
HORACE PARLAN : Piano
MADS VINDING : Bass
ED THIGPEN : Drums
(メルダック/MELDAC 1996年発売/MECJ-30021)
(ライナーノーツ/吉村浩二)
(ライナーノーツ/吉村浩二)
「新しい人格」を着ける(エフ4:1-5:20)
板橋文夫 『濤』